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北の魔女  作者: 覧都
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第五十九話 ケンとの闘い

「あそこの倒木がいいわ」

「今日のベッドはここね」

「ミドムラサキさんここでいいかしら」


「はい、丁度良さそうです」


深い森の中は光があまり入らない。

少しだけ森に入る光が赤くなって、森の外が夕日になっているのがわかる。

少し速いと思うのだが今日はあれをやるため早めに走るのを止めた。


あれとは錬金魔法、魔法で残り少ない濃厚ソフトを自らの手で作り補充するつもりなのだ。


「まずは、味を確かめないと」

「出現」


大きな口を開けて一口食べようとしたら、ミドムラサキの視線に気が付いた。


「よ、よろしいのですか」


「いいわよ、食べて、食べて」


ふと見るとその横にクロの本体がちょこんと座っている。


「はい、クロちゃん」


「あ、ありがとうございます」


「二人ともこのあと私が作った濃厚ソフトも、食べてもらいますから」


「うーーん、おいしい」


「よし、この味と見た目をよく憶えて」

「出でよ濃厚ソフト」


あいの両手が濃厚ソフトで占領された。


「左手がまなちゃん製、そしてこっちが私の作った濃厚ソフト」

「お味は……」


あいは目を閉じて口のなかで転がす様に味わう。


「よーーし、完璧、私は天才だーー」


クロとミドムラサキに自分で作った濃厚ソフトを渡した。


「さあ、食べてみて」


「……」


一口食べた二人の目が光る。


「おいしーーい」


あいは忘れるといけないので次々つくって消去した。


時々、ミドムラサキとクロの手が伸びるので二人に際限なくあげた。


あたりは、すっかり真っ暗である。


「この位でいいかな」


「ミドムラサキさんもクロちゃんもお替わりはもういいかな」


「はい、大満足です」


「そうよかった」

「じゃあ寝ましょうか」


クロが分体になり、ミドムラサキが横になり、あいがいつものようにミドムラサキに抱きついた。


「あーーあーあ」


突然あいが大声をだした。


「どうされたんですか」


ミドムラサキが驚いてあいを見る。


「わたしー、二個しか食べてないー」






グエン商会で三人は夕食を食べている。


「おい、いい加減にしろ」

「いつまで食ってんだ」


チュウが怒って三人に催促している。


「あー、私たちは、移動魔法で移動できるから、先に行ってくれていいのよ」


メイが、めんどくさそうに答える。


「そういうわけにいくかってんだよ」


「はーめんどくさいわねー」


「クロちゃんお願い」




四人の姿がゼマ邸の前に出た。


「さあ案内して」


「うお、すげーなー、移動符も使わねえで移動したぜ」


ゼマ邸には一千人以上人がいた。

大勢が攻めてきても対応できるように、配下を集めていたのである。


「すごい人数ね、何かあるの」


メイがチュウに質問する。


「う、うるせーんだよ」

「だまって付いてこい」


まさか、お前達三人を警戒して集まっているとは言えなかった。


「まさか、私たち三人の為に集まっているの」


メイはわかっていたがわざと聞いてみる。


「だまって、歩けつってるだろ、このやろー」


メイは少し余裕が出ていた、ミッド一家の頭が配下に手出ししないよう、命令している事がわかったからだ。

これなら、少なくとも頭に会うまでは、大勢と戦わなくて済む。

頭と戦ったあとなら、勝っても負けてもクロの移動で逃げ切れると考えられるからだ。


三人は玉座の間に案内された。


入って来た入り口はすぐに閉じられ、配下の者が逃げられないように扉の前に立つ。


「ケン、連れてきやした」


チュウが三人の前に立ち報告した。


「こんな奴らにやられたのか、アギのやろう」


メイはお前も大して変わりないでしょうが、と思っていた。

メイが異様な雰囲気をレイの方から感じ、レイを見ると異常に興奮している。

怒りに我を忘れているようだった。


ケンが玉座から降りると、すかさずレイが飛びかかった。


パーーン


ケンのパンチがレイの顔面を捕らえていた。


「来ると思っていたぜ」


レイの口から大量の血が垂れていた。

だが、これでレイは我にかえった。

頭に血が上った攻撃では勝てないことに気が付いた。


「うわーーあ」


レイが叫び声を上げ再びケンに向かって行く。


ドスッ

今度は、ケンとレイの相打ちである。

二人の拳が相手の腹にめり込んでいる。


「くっ」


ケンは驚いていた、いままで自分の拳がまともにはいって立っていた奴はいなかった。

この一撃もいままでで一番きつかった。

しかもこんな女が。


かろうじて、倒れるのを我慢したケンだったが、その顔面にレイの拳がめり込む。


「これで、おあいこね」


ケンは失神した。


メイがレイを、ケンをハイが治癒した。


「くそーーお」


ケンが意識を取り戻すと吠えた。


「次は私が行きます」


メイが前に出た。


「かかってきてください」


「くそーー」


ケンが攻撃をすると、メイはひらひらとかわした。


何度か攻撃をかわすと


「雷撃」


ケンは感電し、またもや失神してしまった。


今度もハイがケンを治癒し回復した。


「ぐおおーー」

「なんなんだお前達は」


「ごめんなさい、まだ私が終わっていません」

「かかってきてください」


ハイがケンを手招きする。


「このやろーーお」


パーーン


「ごっ」


ハイは悲しそうな顔をして倒れていくケンを見つめた。


「弱いわね」


コウとチュウ、モリはあぜんとしていた。

あれほど恐怖の象徴だったものが倒された。

しかも、最後は一撃だ。


「あんた達はいったい誰なんだ」


「言っても分からないでしょうけど」

「私たちは後イ団です」


「な、なんだって」


チュウが驚く。

後ろから


「い、戦女神様」


数人がひざまづいた。


「な、なんだって」


チュウがまたもや驚く。


この街で一家を構える者は情報が速い。

すでに後イ団の事はほとんど知っているようだった。


しかも、一家の仲間は世界中の町に散らばっており、タムの町にも当然仲間が配置されていた。

この場にもタムの町から呼ばれて来た者もいたのだ。

ハイはタムの町では戦女神として知らぬものはいない存在である。


「チュウさん、どうしますか」

「まだやりますか」


戦意を失っているチュウに意地悪く、メイが聞く。


「少し時間をくだせえ」


「じゃあ、私たちはグエン商会に戻ります」

「ケンは連れて行きます」

「しっかり、話し合ってください」

「では、」


四人の姿は消えた。




「あああーあ」


メイが叫んだ。


レイとハイが驚いてメイを見た。


「ど、どうしたんですか」


レイがメイに少し笑いながら聞いた。

レイはあいちゃんそっくりと思って笑ってしまったのだ。


「あの三人解放してもらうように言うの忘れたー」


「本当だ」


「二日や三日、大丈夫でしょ」


ハイが当たり前の様に答えた。


「それもそうね」


メイもあっさり同意した。

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