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北の魔女  作者: 覧都
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第五十七話 レイの涙

「いっちゃったわねー」


メイがハイに聞こえるようにつぶやく。


「レイちゃんを助けた時があんな感じだったのよ」

「檻の中でお姉さんと二人で……」

「お姉さんは死んでいたわ」


二人がレイの後を追うと廊下や階段にアギの手下が倒れていた。


「クロ、こいつらを私の城に送って」


「はい、ハイ様わかりました」




中庭に出ると、ハイが嬉しそうにレイに加勢した。

倒れている男達はクロによって、ハイの城に移動させられた。

ハイがレイの姿を探すと、レイはアギの顔を殴って、肩で息をしている。


「おまえら、俺たちにこんなことをしてただで済むとおもうな」

「ぜってー、後悔させてやる」




レイの目からは涙がポトリ、ポトリと地面に落ちた。






アギを残し三人はグエン商会に移動した。

グエン商会につくと、受付嬢がやる気なさそうに話しかけてきた。


「助けた人達は、捜索願が出ている人達でした」

「お手柄ですね」

「ですが、ここから先はもう引き返せません」

「大丈夫ですか」


「あんまり大丈夫じゃないけど、やる気の人ばかりだから」

「付き合うしかないわね」


メイがやれやれという表情で二人をみる。

いつもは冷静なレイが怒りの表情である。

ハイは相変わらずである。


「メイ様、私は少し城に戻ります」

「朝には戻ります」


「わかりました、ハイさん気を付けて行ってください」


ハイはクロの移動で自分の城に帰った。


ハイは魔王の森に城があり、今まではここに住んでいた。

魔王軍では最も人間界に近い城で、ここには配下の人間を食べる魔人が多く住んでいる。


アギの配下の者はこの城の一室の鉄格子の中に集められている。

真っ暗な広い部屋である。


ハイはこの広い部屋に一個だけロウソクの火をいれた。


人影が浮かび上がる。

その人影が女だとわかるとアギの配下は元気が出た。


「きさまー、こんなことををして、ただで済むと思うなよ」


ハイはこれには答えず、自分の部下に命令する。


「殺すことは禁止する、楽しんでよし」


壁の穴からゾロゾロ変な形の生き物がはい出す。

はい出した異形のものはアギの配下に襲いかかった。


「ぎゃああー、やめろー」

「うわあああー、やめろー」


悲鳴があがる。

だが、しばらくすると静かになった。

喉を切られ声帯が抜かれたからだ。

悲鳴の代わりにひゅーう、ひゅうーと空気の音が聞こえるようになった。


「やめー」


ハイが号令をかけると異形のものはゾロゾロ壁の穴に帰って行った。


「治癒」


アギ配下のケガが治る。


「きさまー、許さねー、許さねーぞ、きさまー」


アギの配下は、治癒が終わると、また、怒りをぶつけた。


「おまえたち、殺さなければ楽しんでよし」


「ぎゃーーー、がーー」

「ぎゃああー、ぐわーあー」


悲鳴が上がる。


ハイの配下はアギの配下を殺さない程度に食べていた。

その苦痛は、筆舌に尽くし難い。

それを何度も耐えている。


ハイはたいしたものだと感じていた。


五度目の治癒で変化が現れた。


「くそー、きさまー、きさまは、絶対殺す」


その声に埋もれているが


「止めてくれー、もう嫌だー」


そんな声が出だした。


「ふふふ、さあ、お前達楽しんでよし」


「ぎゃあああー、いやだー、もう嫌だー」

「勘弁してくれー、ぎゃああーー」


七度目の治癒をかけた。


「……」


治癒が終わったのだが誰からも声が上がらなかった。


すでに朝になっていた。






ミドムラサキはやっと目を覚ました。

あまりに心地よすぎてずっと眠りこけていた。

気が付くと自分の頭が、あいの右太ももの上にあった。

さらに肩から腕にかけて優しくさすってくれている。

心地よさの極みである。

うっとりこの時間を満喫していた。


あいは、ミドムラサキを起こしたくなくて、この時間を使い魔法を一つ修得しようと考えていた。

無から有の魔法、北の魔女が禁止魔法として呪いをかけた魔法だ。


まなちゃんが出来たのだから私にもできるはず。


あいは岩を出し、その上にワイングラスを出現した。

これは、消去したものを出現したもので、無から有ではない。


「まずは、あのワイングラスを良く見て、同じものを想像して、後は魔力、極極少で」

「……」

「だめね」

「じゃあ、極少」

「……」

「じゃあ少で」


すると、今あるワイングラスの横に巨木の葉を突き抜ける巨大なワイングラスが出て、自重で砕けた。


「防御壁」

「危ないわ」

「ミドムラサキさんにケガをさせるところだわ」


「でも、出せることは、わかった」

「もっと魔力を少なくすればできる」


「魔力、少より少なくこの位でどうだ」


岩の上に同じくらいのワイングラスが出来た。


「ここまで来れば、ワイングラス、そしてさいだー」


人差し指と中指の間にさいだーのはいったワイングラスがでる。


「ふふ、味見、味見」


「やったー、完成だ」




ミドムラサキはさいだーと聞いて、とても飲みたかったが飲みたいと起きてしまうと、いまのこの時間が終わってしまうと思い我慢した。


あいは、日本刀を作ろうと思っていた。

まなが作ったアド正を参考に、独自の日本刀を作ろうと思っていた。


まずは、全体の形、切れ味、色、アド正を思い出しながら、想像する。


「出でよ日本刀」


岩の上に赤い色の日本刀がでた。


それを見たミドムラサキはもう寝ていられなかった。


「あ、あい様、あの日本刀私に下さい」


「えっ」

「いいですけど、起きていたのですか」


ミドムラサキは真っ赤になりながら、あいに質問する。


「少し試し切りしてもいいですか」


「どうぞ」


ミドムラサキは日本刀を持つと、すらりと抜き、目の前の巨木を切りつけた。


シュン

なんの抵抗もなく振り抜けた。

ギイイ

巨木が十本倒れた。


「ぎゃああ、切れすぎー」


あいは驚いて叫んだ。


「いえ、あい様が魔法で作ったものならこの位当たり前です」


ミドムラサキはさも当然と答えた。


「ミドムラサキさん手を出して」


ミドムラサキは左手をだした。

左手の薬指に、刀とおそろいの赤い指輪が出た。


「その指輪は、刀の切れ味を十分の一に制限します」

「もしもの時は外せば効果がなくなります」

「付けておいてください」


「はっ」


ミドムラサキは、正座をして頭を下げた。


「あい様この刀の名は?」


「そうですねー、血のように染まっているから、血染です」


「ケッセンですか、良い名です」


「さあ出発しましょう」


あいとミドムラサキの主従は森の奥へ進んでいった。

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