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北の魔女  作者: 覧都
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第五十五話 投獄された三人

ガチャ


ガイの牢が閉じられる。


「最悪だね、宣戦布告してそのまま牢屋じゃ」

「女性陣だけで戦うことになっちまう」


ロイがガイとサイに聞こえるように少し大きめの声で話しかける。


ガイとサイが隣同士、その向かいの牢にロイが入れられた。

結界魔法のためクロは牢に入れない。


「しかし、牢というのはこんな不衛生な所なのか」


ガイがぬるぬるする足の裏を眺めている。


ガイとロイは牢が初めてである。

だがロイは貧民なので牢はそこまで苦にならない。

むしろ牢が二回目のサイがダメージを受けている。


「貴重な体験だが牢というのは気持ちが悪い」


ガイとサイは床がヌルヌルで座ることすらできず、鉄格子にもたれ立ったままである。

ロイはすでにゴロンと横になり、はいずっている虫を眺めている。


流石に食う気にはならないな。

あいちゃんはまだこれが食えるんだよな。


「ガイさん、サイさん、貧民の家の床はみんなこんなもんだぜ」


「うむ、悲惨な暮らしだね」


ガイはさみしそうに答えた。


「今のわしが王なら、もう少し違う対応が出来たのかもしれんのう」


サイは、あいに対する自分の対応を含め、反省している。


「しかたないさ、王様には王様の暮らしがあるんだ」

「そうなんでも知っていられるわけも無いさ」


ロイがサイをかばって答える。


「しかし、女性陣は大丈夫だろうか」


三人が心配顔になる。






「なーーあ」

「なんだって、クロさん」


叫んでいるのはグエン商会三階に、移動してきたメイである。


クロの移動魔法で、メイとレイとハイが移動してきたのだ。

すでに男性陣は憲兵隊に捕まり、投獄されてしまっている。

クロが侵入不可の為、状況は不明である。


「まだ何にもしていないじゃないか」

「後よろしくっていう状態じゃないだろ」

「だから嫌だったんだ」

「取りあえず状況を確認しないと」


三人は一階に降りて受付嬢の所へ行く。


「おー、りいさんじゃ無いのは新鮮だー」


メイがそんな場合じゃないはずなのにはしゃぐ。


「あー初めての女性のお客さんだー」


陰気な感じの受付嬢だが、何か嬉しそうだ。


「すこし聞きたいのですけどよろしいですか」


三人を代表して美少女メイが受付嬢に話しかける。


「はいどうぞ」


「うちの男どもどうしたのか知っていますか」


「お店の前で暴れていましたから、知っていますよ」


「お店の前って」

「お店は大丈夫ですか」


「はい」


「誰と暴れていたのか分かりますか」


「はい、ここを縄張りにしているミッド一家ともめていました」

「あごの長い小頭のアギの策に嵌まっていましたよ」


「ミッド一家についてなにか知っていますか」


「あまり詳しくは、分かりませんが、頭のケンというのが恐ろしい男で、狂犬と呼ばれています」

「新興勢力で一番質が悪い一家です」


「なーー、なんでそんなところに一番に宣戦布告してるんだーー」


メイは頭を抱える。


「クロ、ミッド一家の場所は?」


ハイがクロに問いかける。

姿を消していたクロが、白い妖精の姿でハイの肩の上に現れる。


「小頭アギの居場所は分かります」


「人数は?」


「はい、人数は三十名います」


「飛べるか?」


飛べるかというのは、移動できるのかという意味で、ハイがクロに問いかけた。


「いつでもいけます」


「すごいなー君達は」


メイが感心する。


「ところであいちゃんはどうしていますか」


「はい、いま魔王の森を突っ走っていて、こちらには来られないかと思います」


「ま、魔王のもりー」


メイとレイが驚く。


「あいちゃんを当てに出来ないのか」


「すぐに、乗り込みますか」


ハイが嬉しそうに聞く。


「いやいや、話の流れで、すぐに行けない流だよここ」


メイが呆れてハイを見る。

ハイは、いつになくキラキラ、生き生きしている。


メイはパチパチまばたきをしてハイを見たが、見間違いでは無いようだ。


「ハイさん、なんか楽しそうに見えるのですが」


「そ、そ、そんなこと、あ、ありません」


あせって、もじもじしている。

あー違ってないやつだ、メイは頭を抱えた。


「レイちゃん、夜を待って行くしか無いと思うけど」

「一緒に来てくれますか」


「少し恐いですが、皆が行くのでしたら一緒に行きます」


「た、たのみます」


メイは、ハイが暴走しそうでレイが来てくれると聞いて少し安心した。




「小頭、牢番には金を渡してきました」


「で、奴らの素性はわかったのか」


「いえ」

「あまり、有名ではないようです」


話しているのはアギとその手下である。

後イ団はまだオリ国ではあまり知られていないようである。


「ふん、跳ねっ返りの登録者か」

「他の登録者の見せしめのためだ、牢から出たら」

「手足の一本はもらっておけ」

「殺しても構わん」




「なんてことをいってます」


クロから、アギの会話を聞いて、メイと、レイが青くなっている。


「頭のケンの居場所はわかったのか」


全く空気を読まないハイがクロに質問する。


「まだですが、一人本拠地へ向かっている者を追跡中なので」

「もうじきわかると思います」


「まって、まって」

「あなた達、本拠地なんか調べてどうする気ですか」

「人殺しもなんとも思わない連中ですよ」


メイが焦っている。


「メイ様、ではどうなさいますか」

「このまま何もせず引き上げますか」

「いま、相手はこちらの情報を全く持っていません」

「私たちは、相手の会話まで分かるのですよ」


「……」

「女も度胸か」


さっきまで焦っていたメイだが、腹が決まったのか、目が据わっている。


レイはまだ目がキョロキョロしているが、口は堅く結ばれている。


「ふふ、やるしか無いか」

「では後イ団出陣」


三人の姿が消えた。

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