表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北の魔女  作者: 覧都
54/180

第五十四話 コオリの街

シロの城のまわりは少し木が刈り込んである。

刈り込んである先は深い森である。


ミドムラサキは実は、あまりあいを理解していない。

戦ったこともなければ、一緒にいた時間も少ない。

そんなあいと森の中へ入った。


最初はゆっくり歩いていたが、足場の悪い森の中を器用についてくる。


このまま少しスピードを上げたらついてこられないのではと、意地の悪いことを考えていた。

少しずつ速度を上げた、余裕でついてくるあいに対してどんどん速度が上がり、今では限界の速度になっていた。


そのミドムラサキの限界の速度に余裕でついてきて、仕舞いには話しかけてきた。


「あとどの位ですか」


あいが聞いてくる。


「もう疲れたのですか」


「はい、疲れました」


その言葉を聞くとミドムラサキは、速度を緩め、休憩できる場所を探した。

丁度いい倒木を見つけそこに座った。


疲れたと言ったあいはまるで疲れた様子が無い。


むしろ自分の方が肩で息をして、汗を大量にかいていた。


まさか、この人私のために休憩をしてくれたのでは、

そう考えていると、あいは笑顔で牛乳を渡してきた。


あいはごくごく飲んでいるが、ミドムラサキはあまり飲みたい気持ちでは無く、取りあえず一口だけ飲んだ。


「あとどの位かしら」


「休み無く移動して五日程でしょうか」


「へー」


「あのー、休みながらだと十日位かかります」


「ミドムラサキさん、すこしはやく移動したいので」

「方向だけ教えてもらって進むってできますか」

「進んだ先へクロさんに移動してもらうなんてどうかしら」

「迷子になったりしますか」


「迷子になるなんてことはありません」


「じゃあそれで行きましょう」

「方向を教えて下さい」


「こっちの方です」


ミドムラサキが指をさすと、あいの姿が消えた。


わたしの速度は、あい様にとって遅すぎたのね。

森の魔人より速く移動できるなんて信じられません。


「ミドムラサキ様、移動お願いします」


クロが妖精姿で、ミドムラサキの肩に現れる。


「はーなんであんたにミドムラサキって呼ばれないといけないのよ」

「あんたは、ムラサキでいいのよ」


「ムラサキ様移動します」


移動先は、ミドムラサキの予想の遙か先だった。


あいは、そこでさいだーを飲んでいた。


「そそそ、それは、さ、さいだーでは」


「飲みますか」


「は、はい飲みます、飲みます」


「あーわたしも欲しいです」


見ると真っ白な少女クロの本体も出現した。


こうして少しずつ、ミドムラサキもあいに手なずけられていった。






ガイとロイとサイは移動符を使いコオリの広場に飛び、グエン商会を目指し歩いていた。

女性を先に行かせるわけにはいかないので、男性陣で先行して来ている。


もうじき昼になろうかという時間に、人が歩いていない。


街のつくりは、オリ国王都オオリとよく似ている。

だが、暗い、太陽が出ていて、明るいはずなのに何だか、暗く感じる。


「何だろうねこの感じ」


ロイが、ガイとサイに話しかける。

小声でガイが言う。


「何か嫌なものが付いてきているねー」


「サイさんあんまり見ないようにね、気づかない振りで」


後ろを見ようとしたサイに注意する。




グエン商会に付くと、店内を見回した。

店内は何処のグエン商会も同じで代わり映えはしなかった。


受付嬢はいつものリイでは無く、黒いメイドの様な服を着た死に神のような、痩せた暗い雰囲気の受付嬢だった。

街の雰囲気にぴったりだった。


「なにか用ですか」


「あのー後イ団のガイですが」


「あー、承っていますよ」

「この街で安心出来るのは」

「こことアド商会だけです」

「三階を開けてあります」

「いつでも使えますよ」


「分かりました」

「一度のぞかせてもらって、もう一度街を歩いてみます」


「はい、ご自由にどうぞ」

「ここには誰も来ませんので」




三階に着くと、二部屋用意してくれてあった。


「クロさんこれで、ここへの移動は、大丈夫ですか」


「はい、大丈夫です」


白い妖精のようなクロが答える。


「メイ様、レイ様、ハイ様の用意が出来たら」

「ここに移動するようにします」


マイだけは領主なので馬車で領主邸へ行く事にしている。


「ああ、よろしく」

「じゃあ、俺たちは街をぶらぶらしてくるよ」




グエン商会を出ると直ぐに柄の悪い男達に囲まれてしまった。


「おいおいまじか、グエン商会の真ん前だぜ」


ロイが驚いた。


「ここじゃあ、グエン商会も店の中以外じゃあ、なにもしてくれないぜ」


囲んでいた男達のあごの長いリーダーがニヤニヤしながら話す。


「あんた達は何なんだ」


ガイが問いかけるが、囲んでいる男達は、薄気味悪く笑うだけで答える素振りはない。


「あんたら、腕にかなり自信があるようだが、ここじゃあ怪我するだけだぜ」


リーダーが高圧的に話す。


「さしずめあんたら正義の味方気取りの登録者だろ」

「ここじゃあよー、そんな馬鹿はその日のうちに全員死んじまったぜ」


リーダーが手を振ると男達が、三人に襲いかかった。


だが、十人いた手下が次々倒され最期はリーダーだけになった。


「おいおい、あんたら強いねー」


リーダーは何故か余裕である。


「鎮まれー、鎮まれー」


憲兵隊が、何処で見ていたのか絶妙のタイミングで出て来た。


「あんたら、丁度良かった」

「こいつらが、突然襲ってきたんだ」


ガイが憲兵隊に近づきながら話しかける。


憲兵隊の隊長が叫ぶ。


「不審者だ捕らえろ!」


ガイは倒れている、柄の悪い連中を見た。


憲兵隊の隊員の槍が、後イ団の三人に突きつけられる。


あごの長いリーダーが笑っている。


「まさか、俺たちを捕まえるのか」


ガイが驚きの声を上げる。


「ぎゃあーはっはっー」

「面白すぎるぜ、こんな手に引っかかるとは」

「お前ら現行犯だ、当分出られんぜ」


後イ団の三人は捕らえられてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ