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北の魔女  作者: 覧都
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第五十三話 魔王の森へ

イホウギは、副将ルカムとゼンに後を頼み、王都へ状況報告に向かった。


後イ団は、あいとハイとマイを除いて、領主邸の一室に集まっていた。




あいとハイとマイは、神殿のトラン像の横で新たに南トラン軍に加わった者達に拝まれていた。


彼らは南トランに降ったというより、ハイとあいの二人に降ったのである。


ヒエナ将軍とロッド将軍は、戦神とお母上様の一段下に立ち、訪れる兵達に二人の奇跡を説明する。


特に、死者でさえよみがえったと繰り返し説明している。


その都度あいはそれを否定する。


「わ、私は死者のよみがえりはできませんよ」

「生ある者を治療できるだけです」


もうこの台詞を何度繰り返したか。


「あのーヒエナ様いつまで続くのでしょうか」


「様は、おやめ下さい、あと二十回くらいですね」


「えーーえー」


げんなりするあいの横でハイとマイは満足げである。

全く疲れを感じていないようだ。






「では、俺たちはこれで」


ヅイと、ドイと、イイがクロの移動魔法でそれぞれの、支部へと向かった。

残っているのは、メイとレイとガイ、ロイ、サイの五人である。


隅っこにルカムとゼンもいる。

とりあえず暇なので一緒にいる。


「メイさん、少し話したいことがある」


ガイが切り出す。


「あ、すみません我々は、ここにいても良いのですか」


ゼンが割り込んだ。


「構いません、ゼンさんには聞きたいこともあるので」


「ということは、オリ国のことですね」


ガイは大きく頷く。


「コオリのことです」


「なるほど」


「メイさんはコオリのことはご存じですか」


「知っている、あの街は最悪だ」

「ま、まさかガイ君」


男達三人がにやりと笑う。


「本気なのか」

「君たちは知らないのだ、関わらない方がいいと思うが」


メイが嫌そうな顔をする。


「では、メイさんはこのままでよいと」


ロイが前のめりでメイに聞く。


「あれか、困っている人は助ける」

「伍イ団の……」


メイは考え込む。


「ゼンさんはどう思う」


「無理だと、言いたいところだが、後イ団ならばとも思う」


「魔獣や戦争は、ある意味単純だ」

「君たちがやろうとしているのは、人間を相手にする戦いだ」

「正直巻き込まれたくない」


メイはそれでも納得出来ないようだ。


「あのー私は、何のことか良く分からないのだけど」


レイが不思議そうな顔をして聞いてきた。


ここでオリ国第二の都市コオリについてメイが説明を始めた。

犯罪者が集まる都市であるということを説明した。


そしてそれが、メイがこの国を離れる百年以上前からであることを伝えた。


「つまり、百年以上も続いている誰も手が出せない、そんな都市なんだ」


「あいちゃんならすぐに行こうっていいそうね」


「あいちゃんならか」


結局コオリに拠点を移すことにした。

このとき、あいに相談しておけばよかったのだが、後イ団の五人はそれをしなかった。


そのため、後イ団女性陣は、アイ抜きで人間相手の戦いをすることになる。






ようやくお母上様と呼ばれることから、解放されたあいはクロに、一度シロ様にあって欲しいとお願いされる。


「そうね、あれから一度も会ってないものね」

「一日くらいならお休みもらって行きましょうか」

「ハイさん、マイさん、そういうことなので、皆にお伝え下さい」


「えーー、今から行くのですか、夜ですよ」


マイが行って欲しくなさそうに言う。


「うふふ、皆は、眠る時間でしょうけど、あっちの皆は寝る必要の無い人達なので大丈夫です」


「じゃあ、クロさんお願い」


あいは、あっという間に行ってしまった。


「あーー」


ハイが叫ぶ。


「私も行けば良かった」

「そうか、今から、クロ」


「まって、勝手にいったら、お母様に怒られるわよ」


マイが邪魔をする。

行かせてたまるもんですか。

わたしだって行きたいの我慢するんですから。

それに私のいないところでお母様と一緒にしたら何をするやら、この人。


「えーー」


ハイは悲しげな表情をする。


「ねえクロさん、勝手に行動したらだめよね」


「そうですね、あい様の留守を守らないといけません」

「出来るのはハイ様しかいません」


「そうそう、ちゃんとできれば、褒められるわ」


「本当ですか」


ハイはすでに、自分が褒められる姿を想像して、もじもじしだした。


マイはそれを見てこの女は、本当に綺麗以外駄目な女だと、冷たい目で見ている。






ハイとマイは後イ団の待つ部屋へクロに案内される。


「あれ、あいちゃんは?」


ロイが入ってきた二人に聞く。


「あい様は、シロ様の所へ向かわれました」

「一日休みを取ると言っていました」


相変わらず丁寧にハイが答える。


「そうですか」


ロイは答えると、今入ってきた二人に今日の事を話した。


マイは青い顔になり聞く。


「本気ですか」


「誰かがやらないといけないことなら」

「俺たちがやらないと」


「わかりました」

「どこまで力になれるか分かりませんが、私も協力します」


こうして翌日から、後イ団はコオリの街に移動することにした。






あいは、シロの城に移動し再会を喜んでいた。

そして思わぬ会話から、魔王の森に住む人間の話を聞くことになる。


「本当ですか」


「ええ」


「詳しく教えて下さい」

「みど、ムラサキさん」


全身緑の魔人ムラサキを呼ぶときあいは、必ずといっていいほど、みどと言ってしまう。


「はい」

「私が知っているのは、ここから南の奥地に行った所に定住している人間です」

「そこだけでは無く、いろいろな所に人間は住んでいますよ」


「定住しているってことは、いつ行っても、そこにいるということですか」


「はい」


「みど、あ、む、ムラサキさん」


「とても言いにくそうですね、私の名前は、今日からミドムラサキにいたします」


「そんな、簡単に名前を変えてしまっては」


「全然大丈夫です」

「で、なんですか」


「はい、私をそこに連れて行ってほしいのですが」

「だめでしょうか」


「だめではありませんが」

「遠いですよ」

「歩きになりますし」


「大丈夫です」


あいは、ムラサキ改め、ミドムラサキと深い森を探検することになった。


「えーーえ」

「もう、行っちゃうんですか」


アオが泣きそうになる。

実は、アオこそがあいをもっとも敬愛している魔人なのだ。


それを察してか、あいはアオをギュッと抱きしめた。

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