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北の魔女  作者: 覧都
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第五十一話 家族奪還作戦

「ハイさん、ハイさーん」


ハイは余りの恐怖に失神し、心臓麻痺で心肺停止状態である。

あいは、ハイの体を抱きしめ前後にゆする。

体に全く力の入っていないハイの頭がガックン、ガックンゆれる。


「だめー、死なないでー」


すでに焦り過ぎているあいには、治癒の二文字が忘れ去られている。

見かねて、まだ少し震える小さな手でクロがあいの腕を掴む。


「あい様、治癒を、はやく治癒してあげて下さい」


「ち、治癒」

「ハイさん戻って来て」


「うっ」


ハイは気が付いた、

気が付いたハイは記憶が飛んでいた。

憶えているのは、あいが女神様と人間から呼ばれているところまでである。


だが、気が付いてみると、敬愛してやまないあいに、強く抱きしめられている。

どんな状況と思ったが、もうどうでもいい、自分からもあいにしがみついた。


その姿を見ていたマイの硬直が解けた。

あいにしがみつくハイが鼻息をフンスカやって、間抜けな顔をしている。

マイは少し不機嫌になり、ハイからあいを引き剥がそうと二人の間に割り込み手を広げた。


「お母様」


マイはあいに目線で平伏する将軍達を見るよう促す。

あいは、それに気が付いたが、どうすれば良いのか分からず、動きを止める。

ハイは引き剥がされて、両手を伸ばし手のひらをパタパタしている。


「お兄様、こんな時ぐらい役に立ってください」


ゼンが立ち上がりあいの横に立ち、あいの手を握った。

ゼンはマイの実の兄であった。

そして、オリ国の王の子、王子である。

家臣に平伏されるのは慣れている。


むしろ、自ら畏怖し平伏したのは今日が初めてだった。

マイを見るとなんとハイの頭をペシペシはたいている。

少しぎょっとした。


おいおい、妹よ、お前、いま誰の頭をはたいているのか分かっているのか。

そんなことを考えながら。

将軍達に声をかける。


「皆の者、面を上げよ」


「楽にしてくれ」


あいに替わり声をかけた。


顔を上げた、男達はハイの方を見る。

それに気付いたゼンがハイに声をかける。


「ハイさんこちらへ」

「お母上様の横へ」


ゼンはマイがあいをお母様と言ったことに便乗し、あいをお母上様と呼んだ。

魔女の年齢は数百歳と相場が決まっている。どうせあいも見た目通りの年ではないと思ったのだ。


ハイがあいの横に立つと、そこにいた者の目はハイに集中し、ため息をもらした。

明るい所で見ると、ハイの美しさはまさに女神であった。


「女神様」


さすがにここまで来ると、ハイも自分が女神と呼ばれていることに気づいた。


「わ、私は女神じゃ無いですよ」

「お母上様のほうが女神様ですよ」


ハイまでお母上様と呼ぶことに便乗した。


イホウギが頭を下げあいに向かって話しかける。


「お母上様、頼みたいことがある」

「ヒエナ将軍とロッド将軍とその配下の家族を救出することに協力して頂きたいのだが」


イホウギもお母上様と呼ぶことに便乗している。


国が滅んでの降伏は、家族に累が及ぶことは少ない。

が、今回のようなケースでは、北トランに住む家族に累が及ぶ。

最悪の場合一族郎党すべて、死罪である。

命が助けられても裏切り者の家族ということで、酷い扱いを受けることになる。

見せしめという罰である。


イホウギは、それを心配し降伏兵の、家族の救出を考えているのだ。

ここにいる者達の間で軍議が開かれ、家族奪還作戦について話合いが始まった。






オリ国に残っている後イ団はレイとメイを除いて、グエン商会で話し合っている。

メイとレイは探究の魔女の森学園に行っている。


オリ国の王都オオリには、あまり良い仕事がない。

治安も安定し賞金稼ぎの仕事も、森から遠いため魔獣討伐の仕事なども皆無である。


掲示板にオオリの仕事は、ろくな仕事が無い。

だが、オリ国第二の都市コオリでは、犯罪が多発し、治安維持の仕事募集がこのオオリの掲示板にまできている。


「ここの掲示板にまで募集があるってことは、どれだけやり手がねえんだ」

「コオリの治安乱れすぎだろー」

「領主は何をしているのかってはなしだ」


ロイがあきれていう。


「あら、領主様は後イ団のマイちゃんですよ」


受付嬢リイが近づきながら答えた。


「えーーえ」


後イ団一同が驚く。


「コオリは別名犯罪都市よ、代々の領主もこの町を嫌っていて近づかなかったわ」

「今では、犯罪者の巣窟」

「誰もそんなところで治安維持活動なんてしないわ」

「命が幾つあってもたりないもの」

「住民は皆、苦労しているのよ」


ここまで聞いて、ガイとロイの目がキラキラし出した。

意外にもサイの目までキラキラし出した。

だがヅイの目だけは光が消えた。


「コオリで治安活動が出来るような人は、後イ団位しかいないでしょうね」


ガイとロイがふんふん頷く。


「俺はいやですぜ」


ヅイはコオリ行きに反対した。


「何もそんなところへ行かずとも、北の町タクに行けば魔獣退治ができますぜ」


「ではヅイさんはタクへ、俺たちはコオリでいいんじゃねえか、ガイさん」


「うむ」


「ヅイさん悪いが、タクに拠点を移し活動をしてくれ」

「俺たちは一度コオリに行ってみる」

「その後また様子見にタクへもいく」


ガイが話していると、机の上に、白い妖精があらわれた。


「皆さん、仕事の依頼ですが、お話ししてもよろしいですか」


クロが現れ、南トランと北トランの現状と、この後の家族奪還作戦について話した。


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