新しい友達
「邪魔しないでください」
「しかし、ノル様手づかみなど、はしたないですよ」
「うるさいなー」
ノルと呼ばれているのは、先程の白いひらひらの服の美女だった。
そのノルが餃子を食べるのをごちゃごちゃ言われて怒っている。
「こうだ!」
ノルが八の字髭とメイドの口に餃子をいれる。
「うまい」
二人も手づかみでパクパク食べ出した。
ノルもやれやれと、自分も食べ出した。
ノルは、グラスのサイダーを飲んで仰天した。
そして、お付きの二人に勧めた。
「こ、これを飲んでみろ」
「また、おおげさな」
いいながらメイドが一口飲んで、目を丸くしている。
メイドが八の字髭に
「こ、これを飲んでみて」
「大げさすぎでしょうに」
八の字髭は動きを止め、
「うまい!」
「しーー、あんた達うるさすぎ」
「ばれちゃうでしょ」
「お腹一杯になるまでばれないようにしないと」
「女王様、この酒も美味いですぞ!」
八の字髭が叫ぶ。
「しーー、静かにって、いっているでしょ!」
ノル女王が叫ぶ、その声が一番の大声だった。
あいももう気が付いていたが、大好きな料理をおいしいといって食べている人の、邪魔をしたくないので、放置していた。
「あい様」
あいのそばにアオとアカが近寄り、話しかける。
「留守番を交代したいと思います」
「お別れするのはつらいですが、行ってきます」
程なくして、全体が緑色の魔人と真っ白な妖精のような美少女の魔人が来た。
緑の魔人が、あいに自己紹介する。
「初めましてあい様、ムラサキともうします」
「え、なんて」
なにか、みどり色っぽい、なまえを予想していたため、耳に入ってこなかった。
「ムラサキです」
「あー、はい」
今度は聞こえた。
白い妖精美少女魔人が自己紹介する。
「私はクロです」
見た目が余りにも美しくて、可愛いので見とれて聞き逃してしまった。
「え、なんて」
「あ、クロです」
「私はシロ様と双子の魔人で、分身と移動の魔法が得意です」
「そうですか、では移動をしてくれていたのはあなたですか」
「はい」
「私は移動魔法が苦手で、できません、とても助かります」
「あい様によろこんで頂いて光栄です」
「みど、じゃない、ムラサキさん、クロさん一緒に食事をしましょう」
あいは、餃子を先に一つ食べた。そうしないと魔人達は食べ出さないのを、知っているからだ。
あいは一つ食べると、止まらなくなり、ムラサキとクロと一緒になってパクパク食べ出してしまった。
もうあれのことは、すっかり忘れてしまっている。
「だーあーー忘れてたー」
大声がこだまする。あいの叫びだ。
「皆さんお腹に隙間はありますか」
「もー無理です、おなかいっぱいです」
レイがいうと、皆ふんふんうなずく。
「じゃあ、わたしだけ無理して食べますか」
そういうと、ソフトクリームを出した。
皆の目線がそこに集まる。
「食べてみますか?」
レイの前にソフトクリームを差し出す。
ペロリと一なめすると、あいからソフトクリームを奪い取った。
結局全員、お替わりをした。
ノルが我慢出来ず
「私、もう一つお替わり良いかしら」
「では、わたしも」
メイドと、八の字髭も調子にのってお替わりを要求した。
おいしそうにソフトクリームを食べる三人に、皆の目が集まる。
「あんた達、誰?」
やっと皆を代表して、酔っ払いの美少女メイが聞いた。
「もうし遅れました、わたしヤパの国王、ノルともうします」
ソフトクリームを食べながら自己紹介した。
「この二人は私の護衛です」
「わたしのほうが強いですけど」
後ろの八の字髭とメイドを紹介して、余計な一言も付け加えた。
ヤパの国王ノルと聞いて、あいはシロを見た。
今日までヤパ国を滅ぼそうとしていた、魔王軍の最高司令官だったからだ。
シロは、自然体で特になにかを感じている様子はなかった。
「あなた方のおかげで魔王軍は撤退しました」
「あと、ほんの数日でヤパ王都は陥落するところでした」
「ありがとうございます、本当にありがとうございます」
そういいながらペロペロソフトクリームをなめている。
「あのーあい様、この食べ物の名前は何でしょう」
「ソフトクリームです、それより様はおやめください」
「なぜですか、人は自分より優れた人物を尊敬し、様を付けるものでしょう」
「わたしは、貧民です、とても国王様より優れてはいません」
「あい様は、知らないのですね、ヤパ国は貧民がいない国ですよ」
「国に住む人は皆、魔王軍と戦う戦士です。階級に差はありますがそれは、純粋に国に対しての貢献度によるものです。頑張ればだれでも報われる国なのですよ」
ノルはここでまたソフトクリームを食べ、話を続ける。
「そこにいるムラサキ様はヤパ王都を攻めていた魔王軍を指揮しておられました、私たちにとっては恐怖の対象です」
「そのような方を配下にされたあい様をどう呼べと言われるのですか」
あいは黙ってしまった。ここで、さらに自分を卑下することは、配下の魔人達をも貶めることになるのではないかと思ったのだ。
「そうですね、お友達になりませんか、それなら、ノルちゃん、あいちゃんの間柄になれます」
ノルの方から提案してくれた。
「はい」
あいの顔がぱっと明るくなった。
「では、あいちゃん、お願いがあります」
「はい、ノルちゃんなんでしょうか」
「そのー、」
「とても、たのみにくいのですが」
「なんですか」
うれしそうにあいが聞く。
「ソフトクリームを私と部下の分三つください」
「はい、喜んで」
あいは、落とさないよう、一つずつ丁寧に出すと、ノルに一つずつ丁寧に手渡した。
後ろで全員が
「私たちもー」
手を出していた。