赤い魔人と青い魔人
あいは魔人の容姿がはっきり分る所まで近づいていた。
魔人は赤い髪に赤い肌、服も赤色、全部赤で統一されていた。
目はきつく吊り上がり顔立ちは美しい女性のようだが、全体的に雰囲気が恐い、あいでなければびびってしまっただろう。
あいは魔人を見て、なんて恐そうな人だろうと思っていた。
やっぱり、戦わずに帰ろうかなと思った瞬間。
魔人は攻撃してきた。
あいは、その攻撃を反射的にかわすと、腹にパンチをいれた。
パアーーアーン
音で周りの草がザワザワ揺れた。
魔人はごっぷ、口から腹の中の物を吐き出していた。
だがおかしい、吐き出したのにまだぶらぶらしている。
魔人は余りの衝撃で内蔵が飛び出していたのだ。
あいの必殺、はらわたがえしである。
「治癒」
あいは魔人に治癒をかけた。
「きさま、不意打ちとは卑怯だぞ」
元気になった魔人はあいに言い放った。
「攻撃とは正々堂々やるものだぞ」
「で、ではどうすれば」
「まず攻撃しますといってから攻撃するのだ」
「わかりました」
「攻撃します」
パアーーアーーン
ごっぷ、げーー、魔人はまたはらわたを吐き出していた。
「治癒」
「て、てめーは、ばかなのか」
「こっちがいいぞといったらに決まっているだろうが」
「わかるだろうあーー」
「す、すみません」
「では、改めまして、攻撃します」
「よしいいぞ」
パアーーアアーンン
ごおええー、げええーー
また、はらわたをぶちまけた。
「治癒」
「おまえ、はやいな、攻撃が見えんわ」
「よしわかった」
「魔法だ」
「魔法で勝負だ」
「あのーわたし攻撃魔法は訳あって使えないのですが」
「はあーはっは、なっ、人には得意不得意があるんだ」
「業火」
魔人は強力な火魔法を使った。
この炎は草原を丸焼きにし、人間の陣まで燃やし尽くす程の炎だった。
だがあいは既に自分の後ろに巨大な防御壁を張っており、この炎が何かを殺すことはなかった。
まな自身は火魔法は使える魔法なので当然なんともない。
パアーーアーン
ごええーーげぶうーーごおおおーー、ぶううーー
はらわたをぶちまける魔人
「治癒」
「あのーすみません、だんだん強くなってませんか」
「あーわかりましたか」
「だんだん腹が立ってきてまして」
「いまの炎、魔獣も人間も焼き殺そうとしましたよね」
あいが顔から表情を消し、魔人を見た。
「ひいいーー」
魔人は心から恐れた。
「わ、わかった、あたし一人では勝てない」
「隣の戦場から魔人を呼んでくる二人と正々堂々戦ってほしい」
「わかりました」
「待っていますので連れてきてください」
魔人が森に消えると、
「あいちゃーん、回復お願い」
よろよろとしながらレイが来た。
「回復」
「たすかったー」
「あいつら酷いんだよ」
「無理っていっているのに次から次へと魔獣を狩っていくんだ」
あいが後ろを見ると魔獣がほとんどいなくなっていた。
「あいちゃん、わたしもお願い」
今度はメイがやってきて回復をおねだりしてきた。
「回復」
「ふーー助かった」
「魔人は森に行ったけどどうしたの?」
「仲間を呼びに行きました」
「大丈夫なの?」
「うふふ、今のところは」
「もう少し近くで観戦したいのだけど」
「どうぞ、防御壁を張りますので近くにいてください」
「ついでに机と椅子を出しておきます、くつろいでいてください。
「ありがとう、応援しているよ」
伍イ団は机の所に集まりくつろぎだした。サイの姿もあった。
その回りにまじない組も集まっていた。
魔獣を倒しきって。連合軍の陣も落ち着きを取り戻していた。
「おい、おまえがアオちゃんをかわいがってくれた人間か」
青い髪、青い肌、青い服、つり目の女性魔人がやってきた。
「あなたがアオちゃんじゃないのですか」
「ふざけるな、わたしはアカだ」
言い終わるか終わらないうちに攻撃してきた。
完全に不意打ちだ。
あいはそれを反射的にかわすと腹に一発いれた。
パアアーーン
ごっぷ、ごえええー
はらわたがえしの炸裂である。
「治癒」
「き、きさまー、不意打ちとは卑怯だぞ」
「攻撃するときは、攻撃すると言ってからに決まっているだろう」
「攻撃します」
「……」
あいは、いいよという返事をまった。
「なにをしているさっさと攻撃してこい」
「いいんですね」
「いいぞ」
パアアーアーン
ごええーーーぐええ
「治癒」
「お、おまえ速いな、全然攻撃が見えん」
「ならば魔法で勝負だ」
「わたしは訳あって攻撃魔法は使えません」
「はーはっは、な、人には得意不得意があるのだー」
「凍結」
辺り一面が凍り出した。
今はあいの防御壁は、伍イ団の回りと、連合軍の陣の回りだけなので、草原の多くが凍った。
あいは凍結魔法が得意なので、ダメージはない。
ズドパッアーアーン
ごええーーげぶうーーごおおおーー、ぶううーー
はらわたをぶちまける魔人
「治癒」
「あー、なにか攻撃が強くなっている気がするのですが」
「当たり前です、他のひとまで巻き込むような魔法を使ったでしょ」
「許しませんよ」
あいが表情を消しアカを見る。
「ひいいーー、恐い」
「アオなにをしている一緒に戦うぞ」
魔人二人が左右にわかれ、攻撃態勢に入る。
「もういいですか、攻撃しても」
「いいぞ」
魔人二人が言う。
パアーーン、パアーーン
ぐええーーごおーー
二人とも膝を折り、はらわたを吐き出していた。
「治癒」
「なあ、あんた」
魔人があいに話しかける。
「……」
あいは、なにごとかとつづく言葉をまった。
「名前だよ、名前を聞くながれだろここは」
「全く、わかれよ」
アカが言う。
「あ、すみません。あいです」
「あのーあい様、私もアカちゃんとおなじ感じだったのでしょうか」
アオはもう、あいが凄すぎることを分っており、すでに心酔していた。
そして、アカの無様なやられっぷりを見て、自分も同じようにやられたのか、気になっていた。
「アオちゃんはもっと酷かったです」
アオは顔を真っ赤にしたが、もともと赤いのでよくわからなかった。
「あい様、私たちの上のものがいるのですが、連れてきてもよろしいでしょうか」
「いいですが、私からもお願いしたいことがあるのですが」
「なんでしょうか」
「一度、戦場全体の兵を引いていただきたいのですが、出来ますか」
「それならできます」
「では、お願いします」
「やい、あい首を洗って待っていろ」
「こらアカちゃんだめだから」
「相手を認めたら、ちゃんとしないと、それじゃあ人間と一緒だよ」
「わ、わかったよ」
二人は森に入って行った。