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北の魔女  作者: 覧都
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修行完了

「お家に帰りたい」


イホウギはでかい体のおっさんである。

その大のおっさんがこんな情けないことを思うほど、あいの修行は苛烈であった。


初日、ぐううーー腹が鳴った、あいが魔法をかける。


「回復」


これで腹が空いたのも、疲れも吹き飛んだ。

最初は凄い魔法だと思った。


夜になり暗くて周りがよく見えなくなった。

大きな岩がドスンと落ちてきて、弟子がその岩に手を当てる。

赤く輝きだした。

「岩に魔力を入れると魔封石の様に赤く光るんですよ」

その光は、暗さに慣れた目には眩しいくらいだった。

「これなら修行できますね」

修行が続行される。


ふぁああ、あくびが出る、眠くなったのだ。

あいが魔法をかける。


「回復」


これで眠気も疲れも吹き飛んだ。


あっ痛たたー、足を挫いた。あいが魔法をかける。


「治癒」


これで、足も、その他の傷も治ってしまう。

何度も日が沈み、日が昇った。

既に二十四時間一秒も休まず不眠不休で三ヶ月以上はたっているはずだ。


実戦形式の打ち込みをしていると、弟子と自分の差が無くなり互角が近づく、すると急に弟子との力の差が開く。弟子が弱くなるのだ。

そんなことがもう十回以上はあった。

最初は、弟子の調子が悪くなったと思ったが、次第に弟子が強化魔法でわしを強くしていることがわかった。


「師匠、わたしの、卒業試験をお願いしたいのですが」


ここまで会話などした記憶がないのだが、弟子が話しかけてきた。


「師匠は武器を使ってください」


棍を握り数回振ってみた。

ピュンピュン小枝の様な音がする。

あの重い棍が重さを感じない。


「こんなものが当たったら痛いぞ」


「大丈夫です、死にはしません」


「うむ」


わしが負ければこの修行も終わりか。

少しさみしいきもするな。

まあ勝てば良いだけか。


「ではわしから行くぞ」


棍を右後方に構え、左に振り抜くよう近づく。

今のわしは、棍を全力で振っても何処でもピタリと止めることが出来る。

もし、弟子が棍を飛んで避ければ真下で止め下から上に即座に打ち込める。

低い姿勢で下に避けようとしても止めた棍で叩き潰せる。

弟子は少し低い姿勢で近づく、それに合わせ、やや低い位置で棍を左へ振る。

弟子は振っている棍の方へ飛んだ。

流石に棍を瞬時には反対方向には動かせなかった。

その隙に弟子はわしの体の脇に入り手のひらを脇腹につけた。

その速さはもはや人のものでは無かった。

強力な回転の力が加えられた。

わしの体が回転し地面に頭が当たり、激痛が走ったと同時にごりっと、嫌な感じがした、首の骨が砕け背骨も砕けた。


「治癒」


動けるようになったわしは、弟子の姿を探した。やや右後方にその姿があった。

わしはあんなところから飛ばされたのか。苦笑した。


弟子は地面に頭を擦り付け土下座をしている。肩が少し震えている。


「名残惜しいが卒業だな」


「はい、御恩は一生忘れません」


「一つだけ質問してもよいかな」


「はい、なんでもこたえます」


「あい殿は北の魔女様では、ないですかな?」


「いいえ、北の魔女様はわたしなんかが及びもしないほど、すばらしい方です」


あいは、北の魔女と聞いてまなにすごく会いたくなった。


「それでは戻りましょう」




南トランの陣の場所に戻った二人は何もない草原にたっていた。


「出現」


あいが言うと凍り付いた陣が元通り現れた、それだけではなく、ガイやロイの倒したケガをした兵士、あの魔導士隊の姿もあった。


「あのー、師匠イナ国を攻めないでほしいのですが」


「ふ、ふっ、わしがそのようなことをするとでも、まあ、いろいろ言う奴がおれば、偉大な魔法使いに全員殺されるとでもいってやるわ」

「あの、魔導士隊も証人になってくれるだろうしのう」


「ありがとうございます」

「治癒」


凍結が解け、ケガをした兵士のケガも治っていく。


「師匠お別れです」


「うむ、達者でのう」

「また、再開できるといいのう」


「はい、きっと」


あいはぶんぶん手を振るとササの陣の方へ歩いていった。




あいは岩の机と椅子を回収しようと思ってそこに向かっていた。


その机の脇で手を振っている人がいた。

最初見間違いと思ったが、よく見るとメイとレイだった。


「よかった、あいちゃん」


駆け寄ってきたレイが、あいの体を抱きしめた。


「修業はどうだった」


「はい、ばっちりです」

「ずっと待っていてくれたのですか」


「わたしとメイさんは魔女だからね」

「時々、ガイさんもロイ君も来ていたのよ」


あいは感動していた、伍イ団に入ってよかった。

心からそう思った。


「消去」


「あら、その机と椅子もって帰るんだ」


「はい、丁度いい大きさですしまた使えます」


「そうね、じゃあ帰りますか」


「はい」


イネスに戻ると夜ベイで夕食の約束をして、一旦メイとレイと別れた。


別れたあいは、シャムに明日のお昼学園にいき、まなのところへ遊びに行くと伝えた。


そして家に帰り、家族に再開した。

いま、あいの家族はアド商会の裏で、倉庫を改造して住んでいる。

もともと貧民の家族はそこで質素に暮らしている。




食堂ベイ


ばらばらに集合した伍イ団は、最後に来たのがあいだった。

他の団員はあいに会うのが楽しみでかなり早く来ていた。


ガイの姿をみるとあいは


「ガイさーん」


ぎゅっと抱き着いた。ガイは真っ赤な顔をして照れている。


あいは抱き付きながらロイの方を見る、目が合った


「ロイさーん」


ロイにもぎゅっと抱き着いた。ロイも真っ赤になり、鼻の下が伸びそうになったが、あの人を思い出し、伸びる鼻の下を元に戻した。


レイがセーラー服の袖をつんつん引っ張る。

あいはベイでは、お店に迷惑が掛からないようにセーラー服を着ている。


レイは女の子が男の人に抱き付いたら、はしたないわよと、言う意味だったのだが、あいは催促と勘違いし、レイにも抱き付き、ついでにメイにも抱き付いた。

相変わらずメイは、超美少女だった。


「こほん」


なぜか当たり前のように受付嬢が来ており、咳ばらいをする。

あいは、これも催促と勘違いをして


「受付嬢さーん」


受付嬢にも抱き付いた。なにかスイッチが入ったのか、受付嬢は自分からも抱き付きうれしげだった。


いつものように手づかみで食事をする。

あいは久しぶりの食事で何もかもが美味しく感じた。

特に牛乳が美味しかった。続けざまに二杯飲んで三杯目をちびちび飲んでいる。


ひとしきり食事を楽しんだ後、受付嬢がきりだした。


「皆さん、国王陛下から、招待状が届いています」

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