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北の魔女  作者: 覧都
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最期の日

いつものようにまなが昼食をしていると、赤毛つり目でキキと同じくらいの年の少女がキキと、まなの間に割り込んできた。

ルシャは何事かと身構えた。


「こんにちは、わたしはミミといいます」

「お友達になりたくて来ました」


「あーー結構です、間に合っています」


ぎっとミミがまなを睨む。


となりでキキが頬をふくらまし動きを止める。


あーいつものやつだ、まなは鼻を摘まむ。


「ぐええーー」


キキのゲップである。

そのとたん、ミミの胃袋がウメボシになった。

お口から噴水がでる。


ミミは耳まで真っ赤になりうつむいた。


あの時の私みたい。


「大丈夫よ、わたしも最初そうだったから」


ミミは大粒の涙をぽとり、ぽとりと地面に落とした。


しばらく気まずい沈黙が続いた。


ぐううーー


ミミのお腹がなった。


お昼ご飯を食べたばかりで、全部出せば元通りお腹が空いた状態になる。


「丁度よかったわ、私はまだ食事していなかったから一緒に食べましょう」


ミミは真っ赤になったまま首をぶんぶん振った。


「ルシャちゃん」


そう言ってまなは両手を出すと、ルシャがお弁当のバスケットを渡した。


「わたしが作り方を教えたサンドイッチなのよ」


中には、卵サンドが入っていた。

薄焼き卵を折りたたんだ物を挟んである。

薄焼き卵は昆布の出汁をいれ、深い味になっている。

この国には和風の食事がないのでこの作り方は誰も知らなかった。


「どうぞ」


ぶんぶん首を振る


「作りすぎて余ってしまうから、食べて貰えないとゴミになっちゃうかな」


まなが強引にバスケットをミミの膝の上に置く。


うつむいていたので、目線がバスケットの中に注がれる。

おいしそうな見たことのない食べ物を見て我慢が出来なくなったのか、震える手でサンドイッチを一つとる。


震えながら一口たべる。

全身が震えた。


まなはこの子がかわいくってしょうがなくなった。


「おいしーー」


目をきらきらしながらまなを見上げる。

世の中にはアドちゃん以上はないかと思ったが、この子は同じくらいかわいい。


「どんどん食べて」


一口食べては、キラキラしてまなを見上げ、また一口たべる。

結局ミミがお弁当を全部食べてしまった。


「ごめんなさい、美味しすぎて全部食べてしまいました」


「いいのよ、子供は遠慮しなくて」

「明日はミミちゃんの分も持ってくるからね」


「あのー」

「いいえなんでもありません」


何か言いそうになって途中でやめたミミに対して、少しなんだろうと思ったが

その事には触れなかった。


ミミが戻ると、まなはルシャにミミのことを調べてほしいと依頼した。

試験で満点を取ったすぐ後に近づいて来たこと、かわいすぎることなど、いろいろ疑いたくなることが多すぎる。どこかの貴族や有力者の回し者を疑っていた。




翌日のお昼


昼食はシャムが持ってきた。

ルシャはまなの依頼を継続中で行方不明らしい。

ミミの分のお弁当を持って待っていたが、今日は来なかった。


さらにその翌日のお昼

昼食はやはりシャムが持ってきた。

ミミの分のお弁当を持って待っていたが、今日も来なかった。

何かあったのかと心配になってくる。


次の日、ルシャがお昼を食べているときにやってきた。


「まな様、報告してもよろしいですかニャ」


「はい、お願いします」


「まず、ミミさんは平民ですニャ、それもすごく貧乏な平民ですニャ」

「まな様が、心配しているような事はありませんニャ」


「ミミさんとお話した内容をお話ししてもよろしいですかニャ」

「ここまで聞くのに苦労しましたニャ」


「長くなりそうだから、ニャは無しでお願い」


「それは、無理ニャ、ニャと猫耳は猫の誇りニャ」


まなが顔から表情を消し


「お、 ね、 が、 い」


ルシャは体をピクンとさせ、


「わ、分りました二、分りました」




「ミミちゃんの家は普通の平民でした」

「魔法学園の入学試験を受かるとは思わず受験したのですが」

「まさか合格してしまったのです」

「両親は喜んでくれたそうです、心から喜んでくれたそうです」

「でも、合格してから生活がすごく変ってしまいました」

「この魔法学園は超一流の学校で、とにかくお金がかかります」

「ミミちゃんの両親はミミちゃんを学校に通わせるため、私財を売り、父親は兵士になりました」

「でも、その年に父親は、南トランとの戦争で戦死してしまいました」

「お母さんが女手一つで苦労していたらしいです」

「学校ではクラスメイトはお金持ちばかりで浮いた存在だったそうです」

「お昼ご飯は、半分のパンだけ、恥ずかしくて教室で食べられなくて、外に出るとき歩きながらさっさと食べていたそうです」

「そんなとき、外をぶらぶらしていたら、貧民の女の子を見つけたそうです」

「なんで、ここに貧民なんかがいるの」

「そう思ったそうです」

「でも、同時に、妙な親近感憶えたそうです」

「その女の子は、腐ってドロドロに崩れたパンを嬉しそうに食べていたのだそうです」




まなは、あいからこのことを、会った日に聞いていた。その事を思い出す。

「貧民は、お金を稼げないの、わたしは、シャム様にすべてのお金を出して貰っているの」


あいちゃんはきっと必要以上のお金は全部断っていたんだろうなー。

わたしはこの時思っていたのよねー。


「でも、家族がせめてお昼ご飯だけはと、自分たちの食べるものがなくっても、わたしには、二個パンをもたせてくれるの」

「お昼ご飯のパンを見ると、そんな家族の顔が浮かんでとても嬉しい気持ちで毎日食べられたわ」

「家族はわたしが教室で同級生と一緒に食べている姿を思い浮かべていたみたいだけどね」


あいちゃんはさみしそうだったわ。




ルシャは話を続ける。


「貧民の女の子は臭くて近づくと吐きそうになるから、臭いがしないところで、様子を見ながら、昼食をとるようになったそうです」

「ある日、変な服を着た女の人と」

「王子様のような白い服を着た子が来たそうです」



挿絵(By みてみん)



「その二人は、臭い貧民に近づき仲良くしだし、王子様は抱きついて、腐ったパンまで美味しそうに食べていました」

「変な服の女の人は王子様の横ではしたなく口から噴水を出した」

「ミミちゃんは、自分は絶対そんな、はしたないことはしないと、心に誓ったそうです」

「王子様は最後には臭い貧民の膝の上で眠ってしまいました」

「なんて素敵な人、友達になりたいと強く思いました」

「その日以来貧民の女の子は来なくなり、代わりに変な服の女の人と、王子様が二人で食事をするようになり、毎日話しかけようと思っていたそうですが、勇気がでなかったそうです」

「でも、最期の日、どうしても話したくて、声をかけたそうです」


「最期の日ってなに」


まなは、黙って聞いていたがこの言葉に食いついた。

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