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北の魔女  作者: 覧都
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鉄壁のまな

二人の姿は広大な荒野の中にあった。

ここは、魔女の森中央、まなが焼き尽くした森のなれの果てである。

余りにも火力が強かったので土の中まで焼け、まだ何も生えてこない死の大地である。

シャムに教えて貰った、誰にも邪魔されない修行場所である。


「師匠お願いします」


「あい殿、どの位武術を知っていますか」


「はい、全くなにも知りません」


「はーーはっはっ」

「これは教えがいがありますな」

「では構えからいきますかな」


あいとイホウギの修行はここからしばらくつづくことになる。




まなは、あいと出会った花壇に、腰掛けて昼食中である。


魔女は、食事の必要はない、必要ないが味は分るのでおいしいものは食べる。

まなの場合は、他の生徒と同じ行動を取るため、アドから言われて食べている。


キキはあいが集めた人肉パンを二個たべる。


人肉パンが臭いので、外での食事である。

昼食はルシャというシャムの眷属で、アド商会のかわいい金髪少女の店員が、持ってきてくれる。

人肉パンが臭うため毎日お昼に持ってきて貰うのだ。


「ルシャちゃん、ありがとう」

「ごちそうさまでした」


「どういたしましてニャ」

「もう用事がないニャら、ルシャは帰るニャ」


「気を付けて帰ってね」


まなはあいと分かれてから教室で授業を受けている。

但し魔法が使えないまなは落ちこぼれである。

明日は進級試験、合格しないと留年である。

気が重い。


「あーやだやだ、わたしがなんでこんなに、出来ない子扱いなんだー」


キキが心配そうにのぞき込む。

のぞきこむキキが頬をふくらまし、動きを止める。


あ、あれがくるわ、まなは鼻を摘まむ。


「ぐえーー」


キキのゲップである。これが臭いのである。

まともに嗅ぐと噴水が起きるほどである。

食後一回必ず出るようである。


午後の授業が終わると城に帰る。


城に着くとキキちゃんはキキさんに変る。

変るところを見ても信じられない。

あの自由なキキちゃんがこのキキさんになるなんて。


「キキさんアドちゃんを呼んできて」


「分りました、まな様」




「なんの用ニャ」


「明日の試験、休んじゃだめかな」


「アドは忙しいニャ、もう行っていいかニャ」


「なでなで、したいなー」


「し、仕方ないニャ」


「あ、忙しいからだめかー」


「うーー」


涙目になるアド。かわいい。


「別に、まな様ならそのままで試験は合格ニャ、落ちこぼれも卒業できるニャ」


「本当?」


「本当ニャ」


まなはアドを手招きすると、めちゃめちゃなでなでした。




翌日、魔法学園

魔法練習場。石畳の広場である。


ピンク髪に小さめの胸の担任が生徒に話しかける。


「ではこれより進級試験を行います」

「まずは、攻撃魔法からです、得意な魔法を最大に出してください」


順番に魔法を出していく。


たき火ほどの火を出した生徒が拍手を受けている。


「次はまなさん、最大に出すよう想像力を働かして、頑張ってください」

「あなたなら出来ると先生は信じています」


まなが皆の前に進み出る。


こっちは魔法を出ないように想像しないといけないのだから、余計なこといわないでよね。

うーーん、魔法よ出るなー


「えい」


「なにも出ませんね」

「はい、次はキキちゃん」


キキちゃんは、わたしのまねをして


「えい」


当然何も出ません。


「はーい、次は防御魔法でーす」


生徒が防御魔法を使い、先生が風魔法をかける。


防御が出来れば、風の強さが少しずつ上げられる。


三段階耐えた生徒が拍手を受けていた。


「はーい次はまなさん」

「頑張ってください、先生は出来ると信じています」


こ、この先生、何も信じてないよね。

わたしは、防御魔法なんて知らないし、踏ん張っているふりでもしておきますか。


「うーーん」


先生が風をぶつける。

ふっと風が消える。


「では、一段強くします」


これも消える。

二段階、三段階、増やしてもすべて消えてしまった。


「先生はこれ以上の風は出せません、他の先生も呼んできますね」


他の先生が来てどんどん上げたが、全部消えてしまった。


先生が他の生徒をどけ

回復符を使用すると、総掛かりで魔法をかけることになった。

石畳の上にわたし一人と、先生十人で対峙する。


「風」


竜巻の様な風が起き、生徒達が


「おおーお」


喚声を上げる。

その竜巻がまなの近くに来るとスッと消えてしまった。


「なっ」


先生が驚きの声を上げる。


「学園はじまって以来の防御魔法です」


生徒から拍手と歓声があがった。


北の魔女はすべての魔法が使える。

使える魔法ではダメージを受けない。

火の魔法を使う者は自分の火でやけどしないのと同じように、北の魔女もすべての魔法でダメージを受けないのである。


「これ以上は確認できませんので、満点とします」


「次はキキさんです」


キキちゃんもわたしと同じ結果だった。

まあ、キキちゃんはアドちゃんの、魔法防御の魔法だから反則ですけどね。


こうしてわたしは、キキちゃんと共に、アドちゃんの言うとおり進級をし、落ちこぼれも脱出した。


でもわたしは防御のまな、鉄壁のまなと呼ばれるようになった。



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