伍イ団の未来
朝の集会が終わると、伍イ団はササ領の森に入って行った。
この森は手つかずでかなり大きな魔獣が沢山いる。
「宝の山だね」
次々に狩っていく。あいは治癒で、てんてこ舞いである。
「魔獣ダビ! いたよ」
「すげーこんなのがまだいるんだ」
イネスにいた魔獣ダビの四分の一程のダビである。
メイとレイとロイの魔法が炸裂する。
「よっし今ので満タンだ」
「今日は領主様からは呼ばれていないから、グエン商会へ行ってベイで夕食だ」
「おおー」
五人はこんな毎日がずっと続くといいなーと思った。
グエン商会
受付嬢に応接に呼ばれ五人は2階の応接室に通された。
あいは温かい牛乳を出されてご機嫌だ。
「こちらが白金貨五枚の魔封石と、個人用の白金貨一枚の魔封石です」
「今日こちらに来て頂いたのは、今後の伍イ団についてです」
「入団希望者が大勢いて、問い合わせが殺到しています」
「このままでいいと、思っていますがだめですか」
レイが珍しく最初に答えた。
「登録者は皆、生活が安定しているわけではありません」
「弱い登録者は、力ある登録者と一緒に狩りをして、技術を磨いたり、安全に狩りをしたり、出来ることの幅が増えます」
「新人さんも手助けを必要としています」
「もうじき戦争が始まりますが、傭兵は不利になれば見殺しです」
「心当たりはありませんか」
「大ありだ、ササ領のあの領主も兵士三千の安全は守ってほしいと言ったが、一緒に行く千人の傭兵のことは何も言ってなかった」
ロイは、今気が付いた。
「皆は気が付いていたのか」
メイとレイは当然という顔をしている。
ガイとあいはぶんぶん首をふっている。
五人は黙り込んだ。
「助けを必要としている登録者がいるのかー」
「そうやって話をもって来られると弱いなー」
ガイがつぶやく。
「今は依頼の途中だから、この件はしばらく保留してもらいたいな」
メイが受付嬢に話しグエン商会を後にした。
食堂ベイ
いつもの個室。
今日の食事の空気は重い。
あいの手が止まっている。
あいだけではない、他の四人も食事がすすんでいない。困っている人は助けたい。
伍イ団の基本的考え方だ。
「でも俺たちは大きな団の力は借りてないぜ、むしろ何処の力も借りてねー」
ロイが口を開いた。
「メイさんはどうなんだ」
「伍イ団はメイさんが作ったんだ」
「メイさんに決めてほしい」
全員がメイの方を向き鼻息をふんすかやりだした。
「みんなはずるいなー、わたしに言わせようってか」
「じゃあ言わせてもらう」
「私はみんなの意見と全く違う、私は私の仲間と、いつまでも仲良くやっていきたい。伍イ団は、団の名前通り五人が一番いいと思う」
「なにも困っている登録者を団にいれて助けなくても、個人的に助ければ良いだけではないのかな」
全員うんうん頷いている。
「団については、皆それでいいのかな」
「とりあえず、ササ領の登録者は助けてあげたいな」
「明日からは狩りは休んで、少しササ領で登録者や兵士の様子を見たいな」
「そうだな、お金は十分あるし明日からは、戦争に向けて準備を手伝おう」
ガイが最後は団長らしくまとめた。
翌日
伍イ団は戦支度をしながら兵士の様子や傭兵の様子を見ていた。
あいだけは何故か貧民服を着て、木剣でふにゃふにゃ踊りをしている。
兵士が時々じっと見つめてくるからそれが嬉しかったのだ。この国の人は、領主様が優しいから、兵士も貧民にやさしいのね。
そう思っていた。
領主のササが歩いていたのでロイが傭兵について聞いた。
「ササ様、護衛は兵士だけですが、傭兵についてはどうお考えですか」
「ああ、傭兵は君たちの仲間だろ、君たちが勝手に助けるのではないのかね」
「むしろ私の兵は、お金を払わなくては、君たちは助けてくれないのではないのかね」
ロイは、なるほどと思った。
少しこのことでササに、不信感があったのだが、言われてみればそんな気がする。
ガイは何故か女性兵士にちやほやされて、鼻の下を伸ばしている。
あまりにも顔が馬鹿そうなので、レイが一発蹴りをいれた。
メイは傭兵団の登録者を観察していた。
装備にお金がかかっている者、ボロボロの服を着ている者。差が大きかった。
実力差があるのね。
そういえば、あいちゃんが来る前は私たちの暮らしも苦しかったわね。今では凄く昔のような気がするわ。
「メイさんこの戦争負けるって、兵士が噂しているんですけど」
横にいつの間にかレイが来てはなしかけてくる。
「そうね過去三回戦っているけど三敗しているから、今回も負けるでしょうね。南トラン兵は強い、そしてイナ兵は弱い、これが変ってない以上結果は、変りようがないもの」
「負ける戦争に自国の兵を出す、護衛がほしくなるわけね」
「レイちゃん私たちだってそんな余裕のある状態ではないのよ。敵兵は死に物狂いでおそってくるから」
「私たち自身が殺される事だってあるのよ」
「私たち生きて帰ってこられるのかしら」
戦争に負けると聞いて、不安になるレイであった。
目線を前に移すと、兵士達の様子がおかしい。歩いている兵士達がちらちら何かを見ている。何を見ているのかと兵士達の見ている方を見ると、あいがふにゃふにゃ踊りをしている。あいのふにゃふにゃ踊りは、少しましになっていて、ふりふり踊りぐらいになっている。
そのため服の下からかわいい白いリボンのあれが丸出しである。
「ぎゃあーー、しまった、長い服にするように言うのわすれたーー」