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北の魔女  作者: 覧都
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過小評価増大の魔法

「もう気が付いていると思うのだが、近々戦争がある」


「分っています」

「伍イ団に、傭兵になれと言うことですか」


メイがササに問いかける。


「伍イ団に、そんな簡単な仕事を頼みはしないよ」

「護衛だ、ササ領の三千の兵士を護衛し、できるだけ多く無事にササ領に帰してほしいのだ」


二人が話している横で、ガイとロイとレイが

ごちゃごちゃ、やっている。


「ねえ、戦争だって気が付いていた?」


「だから、街があんなに喧騒としていたんだ」


レイとロイがひそひそ声で話している。

二人は気付いて無かったようだ。


「俺は、分っていたぞ、南トランが攻めてくるんだ」


ガイが言う。




「金額は、金貨6万枚、兵士が一人死ねば二十枚ずつ減らさしてもらう」


「つまり、全滅なら支払わないと」


「そうだ」


「やります」


不意に後ろから領主とメイのやりとりに、あいが割り込んで答える。


「ただでやります」


「レイちゃーん、その子黙らせて」


ササに手懐けられているあいは使い物にならない。ぽんこつである。


「話は分りました」

「少し伍イ団で話しあってもよろしいですか」


「構わないとも、私はここにいても良いのかね」


「はい」


メイがササに答えると、メイはあいの方を向いた。いつもより厳しい顔をしている。

厳しい顔をしているメイの顔は、一段と美しい。


「あいちゃん、今回の依頼は戦争なの、私はこの依頼、断ろうと思うの」


「うむ、俺もそう思う」


ガイも賛同する。


「なぜですか」


レイが不思議そうに、二人に問いかける。


「人が殺し合うんだ、こんな悲惨なもの、子供が見ない方がいいに決まっている」


ガイが答える。

この中でメイとガイだけ戦争経験者だ。


「私はどうせ経験することなら、結局同じ事なので今回経験しておきたいです」


あいがまともに答える。


「あいちゃん、もう一つあるの、貴方のことでね」

「戦争では拾えない命があるの、貴方はなんでも、かんでも、命を救おうとするから、救えなかった時、まともでいられますか」

「戦場で今日みたいに取り乱し、魔法が暴走したら、とめられる人はいないのですよ」

「敵だけでなく、味方の命まで危険になります」


「貧民にとって人の生き死には、兵隊より身近な所にあるもんだ」

「救えない命ぐらいであいちゃんが取り乱すとは思えない」


ロイが口を挟む。


「貧民にとって死は身近だ。いつも栄養失調の貧民は、突然死んでいく」

「隣の家の一家が全員死んでいたり、道端に死体があったり、遊んでいた子が突然発作を起こし目の前で死んだり、親が死に、なにも出来ない子供が死んでいったり、歩いていたら誰かに蹴り飛ばされ死んだり、そんなことが当たり前のように起こっている」

「こんなことは、普通のことだ。死に対して貧民は、鈍感になっている」

「あいちゃんが取り乱すのは、貧民を大切に思う気持ちに対してだ、戦場で敵兵士が、貧民に愛情を注ぎ寄り添ってくれば、あいちゃんはきっと泣き出すだろうが、死ぬ事ぐらいで取り乱さないさ」


「わかったわ、ロイ君はこの仕事に賛成なのね」

「レイちゃんは?」


「私も賛成です、あいちゃんがやりたいことは、やらせてあげたい。私自身は恐いけど、きっとあいちゃんが守ってくれるはずだし」


「あいちゃんも賛成なのよね」


「はい、皆を全力で守ります。兵隊さんの死ぬのを見ても取り乱しません」


「ガイ君、なにか他に言いたいことは」


「俺は、あいちゃんに約束してほしいことがある。敵兵の命は救わないでもらいたい、戦争が終わらなくなってしまう」

「そうしてくれるなら、賛成する」


「じゃあ、私からもお願い、あいちゃんの治癒と回復の魔法は伍イ団だけに使ってほしい、防御魔法に専念してほしい、私の指示に従ってほしいの三つ」

「できるかな?」


「わかりました、守ります」




「見ての通りです」


メイがササの方を向く、


「うむ」

「明日は皆に紹介したい、朝から来て貰えるかな」


「はい」


「お金は必要なら前渡し金も用意するが」


「必要ありません、最悪ただ働きですし」


「はあーはっはっ、済まないね」

「兵士の命も、お金も大切なのでな」

「今日は泊まっていくかね」

「部屋は用意してあるぞ」


泊まり組と、帰宅組と別れ一日がおわった。




翌朝


邸の前に三千の兵士と傭兵千人が集められていた。

今回の戦争に参加する者達だ。傭兵についてはすべてが登録者である。

伍イ団の姿もあった。

今日の伍イ団は新調した武器と防具を装備している。

もちろん、あいの新魔法、強化魔法付加済みである。


領主ササが一段高いところから、兵士に声をかける。


「紹介する、今回の護衛を頼んだ伍イ団だ」


兵士の一人が声を上げる


「護衛は良いのですが、実力を示してもらいたいのですが」


既に兵士達は、あの魔獣の討伐をしたのがこの伍イ団と知っている。

だが、倒したのは貧民の少女一人で、他の仲間の実力はたいしたことが無いとも聞いていた。


「うむもっともだ」

「どうかね、誰かお相手願えないだろうか」


領主ササが伍イ団の方を見る。

ササ自身もあい以外の伍イ団の実力が知りたかった。


ガイとロイがびくついている。小声で


「俺たちはたいしたことないからなー」

「だよなー」


メイとレイはこの男どもは、過小評価増大の魔法でも、かかっているのではないかと思っていた。

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