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北の魔女  作者: 覧都
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領主と初対面

いつものように狩りに行くため、広場で待ち合わせをしていると、街が少し喧騒としている。

伍イ団の五人は気にせず森に狩りに出かけた。


森では五人バラバラで狩りをしていた、ガイもロイも今では、熊ぐらいの魔獣なら一撃で倒すことが出来る。

レイも魔法が順調で、短剣も使うようになった。

メイの魔法は強力になり、倒せる魔獣はガイやロイよりかなり大きい。

あいは今、魔獣の治癒をするので忙しい。

伍イ団がそれだけ魔獣を倒しまくっているということだった。


「魔封石も満タンになったし、今日はこれで終わろうか」

「しかし、魔封石を満タンにするのに時間が掛かるようになったなー」

「三日もかかるなんてな」


ガイが白く光る魔封石を見ながらつぶやく。


「仕方がないさ、容量が増えてんだからさ」


ロイがいいながら魔封石をのぞきこむ。


「じゃあいこう」



グエン商会


「えっ、もう満タンですか、早いですね、魔封石の階級が上がります。白金貨二枚の魔封石になります。個人用が金貨四十枚の魔封石です」

「売り上げは、白金貨二枚です」


「私はお金いらないです」

「魔獣の治癒しかしていませんので」


「何言っているのよ、あいちゃん」

「私は五等分でなければ受け取りません」

「あいちゃんが言ったんだからね」


レイが少し怒っていう。

さすがに、頑固なあいでも、相手の方が正しすぎれば素直にしたがう。


「はい、すみません、ありがとうございます」


受付嬢は、伍イ団は良い団だなーと、ほっこりしてしまい、危うく仕事を忘れるところだった。

帰ろうとする伍イ団に、あせって声をかける。


「皆さん、ササ領主様から仕事の依頼が指名で来ていまして」

「内容は直接話したいとのことです」

「明日の夕方に領主邸へ行って頂きたいのですが大丈夫でしょうか」


ガイが仲間を見る、全員、ふん、ふん、頷いている。


「大丈夫です」


「ではいつものです」


受付嬢は移動符を渡してきた。



ササ領主邸


「伍イ団ですが」


「はい、承っております」


「貧民のあいですが」


あいがガイのまねをする。


「はい、承っております」


スンナリ通して貰えた。


広間のドアを開けると前回と違い、入ってすぐに大きな、椅子が置いてあった。椅子の背もたれは大きくて、衝立の様に中の様子が、見えないようになっている。


その衝立椅子ついたていすの向こうから、ぺちゃぺちゃ、くちゃくちゃ、はしたなく何かを食べる音がする。

こちらからは全く様子が分らないため、なにがあるのか予想もつかなかった。


あいが一番に衝立の向こう側に出て横を向く。

そのとたん、操り人形が紐を全部切られたように、ぺたんと座り込んでしまった。

伍イ団の四人はあいが死んでしまったのかと思った。

しばらくの沈黙のあと、あいは、迷子になった幼児のようにワンワン泣き出した。


「わあーーん、わああーーん」

「うわあーん、うああわあーん」


しばらく絶叫のように泣いた。


「うぐをうぇへほうぇふくふぇええん」


何か言っているようだが全くわからない。


四人はあいを介抱するため、あいの横にきて驚いた。

椅子には四角い顔の中年のおっさんが、両手に料理を持ち、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてあいを見ているからだ。


一番驚いているのはこのおっさんだった。

なんで、こうなったのか、何があったのか分らなかった。

前回までのお詫びの積もりで、貧民のあいを歓迎している気持ちを、伝えようとしただけなのだ。

ただ、手づかみでぺちゃくちゃ音を立て料理を食べ、貧民服を着ただけなのだ。


「おーーい、おーーい」

「おーい、おーい」


あいはおっさんの膝にすがりつき泣いている。

大分落ち着いてきている。


伍イ団の四人は、あいちゃん、貧民に寄り添われるのに一番弱いからなー。ここまでされたら持つわけ無いよなー。

あいちゃん大丈夫かなと思った。


あいは、感動と、うれしさと、懺悔と、色々な感情に襲われていた。

領主という立場の人間が、平民でも嫌がる貧民服を着ていた。

その上、貧民と同じ食事方法で料理を食べている。

どれほど貧民に寄り添ってくれるのかと。

感動しすぎて一瞬、気を失った、全身に力が入らなくなった。

あとはもう勝手に声が出て、勝手に涙がでた。


「すまぬ、わたしのしたことで、そなたをこれほど悲しませるとわ」


四角いおっさんは椅子からおり、あいに向かって手をついて、頭を下げた。

あいはぶんぶん頭を振った。


「うひーーっぐ、ふぃいーーっぐ」


あいは何か言おうとしたが、泣きすぎてしゃっくりがでて、しゃべることが出来なかった。


伍イ団の四人はあいを席に座らせようとして、さらに驚いた。

テーブルの上には、陶器に入った温かい牛乳の置いてある席、肉が一杯置いてある席、エビ料理の一杯置いてある席、麺料理の置いてある席、辛い料理が置いてある席と、伍イ団のメンバーの好みの料理が置いてある席が用意されていた。


あいを牛乳の席に座らせると、それぞれ好みの料理の席に座った。


この人どこまでやるのかと、四人は思った。


四角いおっさんこと領主ササは、皆が席に着くと食事をするように促した。

全員が手づかみで食べ出すと、自分も手づかみで食べ、ぺちゃぺちゃ音を出した。


ササは、何か異変を感じた、変な音を立てているのが自分だけなのを。


「あー、音は出さないのかね」


ようやく落ち着いたあいが答える。


「行儀が悪いです」



ひとしきり料理を楽しんだ後、メイがササに声をかけた。


「さあ、大人の話し合いでも始めるかね」


「あんたが言うんかい!」


声には出さないがメイ以外の者は皆おもっていた。

メイの見た目はこの中で一番幼い美少女なのだ。

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