第百七十七話 引き分け
最初はハイもメイも自分が勝つと思っていた。
メイの攻撃のスピードはハイに劣っていた為に、ハイは攻撃を全て避けられた。
だがメイは防御力が高くハイの攻撃が当たっても、ダメージを受けなかった。
そして、クーカイのスピードはハイを上回っていた。
そのため攻撃を何度も当てていたのだが、攻撃力が弱くハイの体にダメージを与える事が出来なかった。
サエの攻撃もハイにダメージを与えなかったが、ハイの攻撃でサエはダメージを受けていなかった。
三対一の戦いはお互い時間だけ過ぎていく不毛な戦いとなっていた。
「もう満足でしょう」
この四人の戦いを唯一止められる者が移動魔法で現れた。
四人は手を止めて声の方を見た。
四人の視線の先には笑顔のまながいた。
「メイさん、捕虜交換をしたいのですが、ゴルドさんに取り次ぎをお願いしてよろしいですか」
「誰と誰を交換するのですか」
「ゴランさんとシバ親子です」
「まなちゃんはずっとその事で、心を痛めていたのですね」
メイはまなの優しさに感動していた。
「わたしが協力を求めなければ、このような事にならなかったので、責任を感じていました」
「分かりました」
メイは答えると、サエとクーカイと共にヒガク要塞に帰っていった。
「ハイさん、私達も帰りましょう」
まなは女神の様に美しいハイに声をかけた。
激しい戦闘で乱れた髪の後れ毛が、風に舞いキラキラ光り、とても美しく、まなは少しだけ見とれていた。
ゴルド国の宮殿では、国王ゴルドとケーシーが二人で食事をしていた。
そこにノックの音が響いた。
「はいれ!」
扉から現れたのは、白い服を着た美少女姿のメイだった。
「む、貴様はヒガクの防衛をしているはずではないのか。勝手に帰ってくるとは……」
ゴルドが少し怒り気味でメイをにらみ話しかけた。
「なにがありましたか」
ゴルドの言葉に割り込んでケーシーがメイに話しかけた。
「はい、捕虜交換を提案されて、どうすればよいのか伺いに来ました」
「で、誰と誰を交換するのだ」
再びゴルドが不機嫌に質問する。
「はい、ゴラン様とシバ商会の親子です」
ゴランはゴルドの息子で有り、この言葉を聞くとさすがのゴルドは少し心が動いたようだ。
だが、ケーシーは一瞬暗く恐ろしい顔になったが、直ぐに笑顔になった。
「もう、この位で頃合いでしょうか」
ケーシーは何かを決断したようだった。
「大王様、どうなさいますか」
「うむ、よかろう。捕虜交換の件は任せる」
「わかりました。ケーシー様、ヒガクはあとどの位防衛すればよろしいですか」
「ふふふ、一週間!!」
「ふふふ、一週間ですね。分かりました」
ケーシーとメイは笑っていたが目は少しも笑っていなかった。
シバ親子はメイ達をゴルド国に縛る人質だった。
この人質交換は、メイ達を開放することになる。
ケーシーはヒガクを1週間守り時間稼ぎをしたら、メイ達を開放する決心をしたのである。
「大王、1週間で魔王の森へ遷都していただきます。準備を進めてください」
メイが出て行くと、ケーシーはこの地を捨て、魔王の森のゴルド国に移動する事を伝えた。