第百七十二話 激突
先にゴルド軍が前進を始めました。
それに応じる形でオリ軍も進軍を開始します。
はじめは少しずつゆっくり。
誰が号令をかけているわけでも無いのに、両軍の足並みがそろい。
ドスン、ドスン
足音が、大地を揺らします。
わたしのいる街の外壁までびりびり小刻みに揺れます。
両軍の間隔が狭くなると歩くスピードが速くなりました。
「うわああーー」
喚声が上がります。
ゴルド軍もオリ軍も全力で走り出しました。
わたしから見て左側のゴルド軍は、動きを止めて盾を出し、オリ軍を迎え撃とうと構えました。
ガツーーン!!
右側のゴルド軍とオリ軍は猛烈な勢いでぶつかりました。
左側では盾を構えたゴルド軍の兵士が、オリ軍の攻撃を受け止め、隙間から槍を突き出し戦っています。
右側はオリ軍優勢に見えます。
左側はゴルド軍が大きく前に突き出しました。
左側は白い髭の将が指揮をとり、右は黒い髭の将が指揮をとっています。
そして、左側のオリ兵はどんどん倒されて行きます。
「シュウ殿、わしに出撃させてくだされ」
ギホウイさんが、オリ国総大将シュウ将軍に声をかけました。
「では、第四勢力義勇軍出撃をお願いします」
第四勢力義勇軍とは、後イ団とミッド商会、わたしの護衛の皆さんを呼ぶ名称です。
最初は、まな義勇軍って言うものだから、わたしが大反対してやめてもらったのです。
第四勢力というのは、第一勢力を北の魔女の勢力、第二を人間の勢力、第三を魔王の勢力としたとき、どれにも入らない軍を第四勢力と呼ぶことにしたらしいのです。
第四勢力義勇軍は、二手に分かれ前戦に進み出ます。
左側の押し込まれて、ピンチの方にギホウイさんを隊長とした後イ団の部隊。
右側はハイさんを隊長にミッド商会を主力とした部隊。
こちらにわたしの護衛のロボダーさん、オデさんも加わっています。
この部隊が前線に加わると戦況は一変しました。
ギホウイさんの振る錐棍はゴルド軍の盾兵を吹き飛ばし、槍隊を打ち倒します。
ギホウイさんの棍は重さが通常なら百キロぐらいあるはずですが、わたしの魔法で、鳥の羽毛程の重さしかありません。
そんな棍は剣や槍より武器としては優秀です。
兵士がつけている鎧は、剣や槍に対してダメージを受けないように作られています。
ですがギホウイさんの棍は鎧の上から突いても叩いても、鎧が陥没してダメージを与えます。
頭に当てようものなら首がへし折れます。
つまり防御不能の武器となっています。
時々、体の大きな部隊長が戦いを挑みますが、ことごとく一撃で打ち倒されます。
ギホウイさんの隊には他にも、ガイさん、サイさんという、わたしの作った武器を持つ人がいます。
たった数百人の第四勢力義勇軍の参戦で左側の戦局が変わりました。
そして右側の戦局も、女神の様に美しいハイさんの暴れっぷりは凄まじく、ゴルド軍はバタバタと倒されて行きます。
ハイさんの隊にはロボダーさんもオデさんもいて、この二人も暴れています。
ミッド商会のコウさんや、モリさん、チュウさんもここにいて奮戦しています。
一気にオリ国軍が優勢となりました。