第百六十八話 恥じらい
「アオさん椅子の上に立って下さい」
まなが突然アオを椅子の上に立たせると、まなも椅子の上に立った。
まなは、アオのスカートの裾を持ち、ズパーーッと上に持ち上げた。
余りにも激しかったので脱げそうになったのだが、かろうじて額のあたりで止まった。
アオの美しい下着姿がさらされ、辺りの男達からどよめきが起った。
だが、アオは全く動じず平気で表情すら変わらなかった。
「あーー全然駄目!!」
まなが呆れたような顔になった。
アオの後ろからチッカが小声で、
「いやーん……です」
アオはハッとなった。
「もう遅いです、アオさんは恥じらいがわかっていません、いったい何をしに行ってきたのですか」
「まな様、ちゃんと出来ていました。アオ様のおかげでヨミも倒せました」
チッカがアオをかばった。
だがアオはこれでもかというくらい落ち込んだ。
「チッカもうよい、あたしはまな様の言いつけを守れなかった」
アオはもう力なく座り込み泣きそうになっている。
「チッカさん、しばらくアオさんを預かって貰えませんか」
「えっ」
「こんなに美しい人が、恥じらいが無くてはいけません」
「あの、私でよろしいのですか」
「はい、アオさんへの思いやりをすごく感じました。是非お願いします」
「は、はい、全力で頑張ります」
チッカが嬉しそうに引き受けてくれた。
「さて、皆さん食べて下さいね」
そう言うとまなはこの席に座ってしまった。
「あのー、まな様、俺たち初めてで」
レッガがまなに恥ずかしそうに質問する。
「そうですね、ではわたしがお出ししますね。なにか食べたい物がありますか」
「えっ」
「ああ、ここの今日の料理はわたしが作ったのですよ」
「エーーーッ」
五人全員が驚いていた。
「全く、帰りが遅いから探してしまいました」
ほとんど白だが薄い赤の地に、濃い赤の飾り模様が入った、美しいドレスを着た美女が笑顔で近づいてきた。
「初めまして皆様、ヤパの王ノルと申します」
「エーーッ」
五人は今日何回目の驚きなのだろうか。
「まなちゃん、急に何が食べたいと言われても、わからないですよ。まずは、うな丼です」
「全くノルちゃんは、うな丼ばかりですねー」
ノルのドレスを黄色にした感じの、ドレスを着た優しげな美女が、ノルの横に座った。
「私は、アドバーガーがいいと思います。ああ、すみません私はオリ国の王、マリアです」
「エーーッ」
「そうですね、アドバーガーの照り焼きは絶品です。私はイナ国の王、サキです。ヨミを倒して頂いてありがとうございました」
サキはノルのドレスを、青色にした感じのドレスを着ている。
「では、両方出しますね」
まなは机の上に飲み物を出して、うな丼とアドバーガーの照り焼き味を出した。
最初に手を出したのは、三人の国王だった。
五人は、まなの凄さを思い知った一日だった。
このあと、サキの許可を得て、チッカはアオの専属補佐官に昇進した。
アオはこのあとずっとうつむいて、悲しそうにしていた。
アオのものすごさを知っている五人は、あわれすぎてかける言葉を失った。
そして、しっかり「いやーーん、見ないで!」をアオが使えるようにしなければと、心に誓うのだった。