第百六十七話 死神との戦い
アオはゆるりとヨミの方へ近づく。
「まさかあなた一人で、死神と恐れられる私達に向かってくると言うのですか?」
アオは何も答えず、なおも近づく。
「なめるなーー!!」
先程までの余裕の表情が怒りに変わり、十人が一斉に襲いかかった。
アオは攻撃をせず、死神の攻撃を避け続ける。
さすがに死神十人はきついのか、アオの赤い服に鋭い切れ目が、何本も入って行った。
「す、すごい」
この戦いを見ている兵士から驚きの声があがった。
アオは数分の間ひらひらと踊りを踊るように攻撃をかわし続けている。
レッガもチッカも口を閉じるのも忘れ凝視している。
「はー、何をやっているのでしょうか。遊びすぎです」
チッカの耳元にクロの声が聞こえた。
「アオ様、いい加減本気を出して下さい」
クロがアオに声を掛けた。
その声を聞くと、アオは眉をつり上げ、笑い出した。
「ぎゃーーはっはっー」
その声は、部屋中に響きわたり、この場にいる者全員の肝を冷やした。
「きさまー何を笑いやがる!!」
ヨミの攻撃のギヤが上がった。
「ゲフッ」
アオの攻撃が始まった。
ギャ、ゴフ、グエ……。
アオの攻撃を避けることが出来る者など一人もいなかった。
瞬く間に十人が床に這いつくばった。
「はーーっ」
この戦いを見ていた兵士達から最初にため息が出た。
「すげーー、めちゃめちゃすげーー」
続いて歓声があがった。
アオは何かブツブツ言いながらレッガの前まで歩いてきた。
そして極上の笑顔になり、服が切り裂かれ丸出しになっているパンツに手を当てると。
「いやーーん、見ないで」
嬉しそうにレッガとチッカの顔を交互に見ている。
「いや、あっています」
チッカとレッガは目から光を失い、声を合わせて答えた。
「はーーーっ」
兵士達から気の抜けたようなため息が上がり、その後大爆笑が起った。
床に倒れているヨミの一族は、拘束されてまだ抵抗している者達にさらされた。
その姿を見るとヨミの配下は皆、降参した。
こうして、イナ国のヨミの支部はアオの力によって壊滅した。
イナ国王都、宮殿三階
イナ国の王都の宮殿もまなによって完成し、まな会が行われることになった。
この席にレッガ達五人が、ヨミ支部壊滅の褒美として招かれていた。
総石造りの建物は何もかもピカピカつるつるで五人は感動していた。
そして、あのアオすらも震え上がるほどの、まなに合うということで超緊張していた。
五人はメイドに案内されるとまわりを見渡した。
誰も見たことが無い人ばかりで緊張が更にましていた。
そんなときやっとアオの姿を見つけた。
「アオ様!!」
レッガが声を掛けた。
アオは呼ばれたことには気が付いたが、誰かはわからないようだった。
全員あーアオ様だーと心で安心していた。
「あのチッカです」
チッカが声を掛けた。
アオがハッとした顔になった。
「赤いメダカ、味方には優しく」
アオにとってチッカはメダカの群れの中にいる、赤いメダカで唯一見分けのつく個体なのである。
アオはチッカに近づくと頭を撫でた。
だが、その手が急にガタガタ震えだした。
「わあ、アオさんに友達が出来たんだー、お友達の皆さん宜しくお願いします」
ツインテの変な服を着た、決して美人とは言えない、少女が近づいてきたのだ。
「ま、まな様」
アオが震える声でその名を口にした。
レッガもチッカも何故か全身が震えだし、その後しばらく震えが止まらなかった。