第百六十五話 新たな戦い
アオは片手で切れたところを持ち上げている。
「このやろーー」
先程レッガ達を一瞬でバラバラにした剣技でアオに襲いかかった。
アオは服を気にして速く動くことが出来ないでいた。
だが、アオの顔に焦りの表情は無く、むしろ嬉しげに笑っている様にも見えた。
「くそがーー」
全ての攻撃をのらりくらりと全て避けられて、ヨミの男がいらだっていた。
そして、アオがチッカの前に重なったとき、鋭い突きを出す。
アオはその攻撃を、体をずらしてかわした。
ヨミの男はそのまま剣を手放した。
男の大きな口が歪み、気色の悪い笑顔になった。
剣はチッカに向かって真っ直ぐ飛んでいく。
アオは後ろにいるチッカの事などまるで気にしていなかったのだ。
「きゃーー」
剣はチッカの鼻先で止まっていた。
「アオ様、人間と戦うときは、ちゃんと味方を守るように、戦って下さい」
クロが剣の柄を持ちチッカに刺さる前に止めたのだ。
「くそー何なんだお前は」
「遊びは終わりだ」
アオが険しい表情で男に近づく。
怒ったアオは服から手を離し本気の攻撃を仕掛けた。
男は声も出せずに倒れた。
その場にいた者の目には何が起ったかわからなかった。
「アオ様、楽しみたいのはわかりますが、遊びすぎです。あとパンツ丸出しです」
クロが少し強い口調でアオに言う。
「なークロ、まな様にはちゃんとうまくやったと言って欲しい」
「わかっています」
「あのーー、まな様っていったい誰なのですか」
チッカが正気を取り戻し目の前にいるクロに質問した。
「まな様というのは、私達のご主人様でとても恐い方です」
白い美少女のクロが不気味な笑顔を見せると、チッカ達隊員五人が震え上がった。
後のことを隊員達に任すと、アオ達はイナ国のパレイ商会に戻った。
数日の後
アオの元にヨミの討伐作戦参加要請があった。
捕まったヨミの部下はオリ国に送られて、オリ国の魔人ゲダの洗脳を受け、イナ国内の支部の場所を白状したのだ。
アオの元にはチッカが補佐として付いていた。
ヨミの支部はイネス郊外の人里離れた森の中にある。
イナ国軍は500人で、アジトを包囲しその一員として参加している。
「アオ様、このアジトにはヨミの一族が数人いると聞きました」
「ふむ」
「アオ様の力が必要となります。宜しくお願いします」
チッカがアオに頭を下げた。
それを見ていた兵士が薄笑いを浮かべ近づいてきた。
「綺麗なねーちゃんだなー」
今回もアオは赤いドレスを着ていた。
こんな戦場では目立ちまくっている。
まわりの兵士から目を付けられてしまったのだ。
「クロ様、なぜアオ様はこのような服をきているのですか」
チッカは近くにクロが居るものとして聞いて見た。
「しかたがありません、まな様に渡されましたから」
「そうですか」
チッカは、まな様という恐ろしいご主人には逆らえないから、しょうが無いと思っていた。
「おいねーちゃん、無視してんじゃねーぜ」
なおもしつこく絡んでくる。
「おい、止めねーか、この人を怒らせるな!」
仲裁に入ったのはレッガだった。