第百五十九話 赤い戦闘服
あいの配下の魔人は、あいの眷属になる事によりその強さは数段上がっている。
シロの城はシロとアカで守り、ハイの城はミドムラサキが守っている。
アオの手が空いているのだ。
もともと、あいに心酔しているアオは、人間の世界へ行ってみたいのを、我慢している。
ヤパの国とオリ国では、暗殺者集団の壊滅作戦は順調に進んでいたが、イナ国の王サキは困っていた。
国王の手駒に、暗殺者を圧倒出来る程の剛の者がいないのである。
軍には、黒髭、隊長の二名ほど剛の者がいるが、軍の要で外すことが出来ない。
調査に出した優秀な配下が次々行方不明になっているのだ。
そんなサキの思いと、アオの思いがまなの元に届いた。
「まな様、イナ国の国王サキ様が相談したいことがあるので、伝えて欲しいと言われました」
「そうですか、じゃあイナ国のパレイ商会で、お目にかかるとお伝え下さい」
「はい、それとシロ様配下のアオ様が、こちらで働きたいと言っています」
「わかりました、一緒に会いましょう」
まなは、メイとサエには一番信頼の置ける、クーカイに付いて貰ったので、ひとまず安心していた。
やらなくてはいけないことは山積みだが、サキの件を優先した。
パレイ商会四階
サキとアオ、まなとパイそしてキキの五人で、一つの机を囲んでいる。
レイとハイはゴルド国のパレイ商会を守っている為不在、先生は授業中ということで不在の為五人の面談になっている。
「まなちゃん、相談というのは、暗殺者集団の事です」
「はい」
「助けて下さい、手に負えません。彼奴らは強すぎです」
「そうですか、どうしましょうか」
「あたしがやります」
アオがいきなりやりたいと言ってきた。
まなはその言葉を聞くと席を立ちアオに近づいた。
「ちょっと立ってみて下さい」
言葉通りアオが席を立つと、アオの服の裾を持ち上げた。
アオは全身薄い赤色の魔人で、着ている服はボロボロの毛皮で出来たワンピースだった。
スカートの中にはボロボロの毛皮の短パンを履いていた。
スカートをまくられてもなんの反応もなかった。
「アオちゃん、それじゃあ、だめだめだよ」
「えっ」
アオがきょとんとすると、まなはどんどん、のりのりになりハメを外す。
「ほらこうだよ、裾を押さえて、イヤーン見ないでーってやるの。ほらやってみて」
「い、いやーん、み、見ないでー」
まなはにこりと笑うと、アオにお風呂に入ることを指示して赤い服と、かわいい真っ白のパンツとブラジャーを渡した。
風呂上がりのアオは髪がさらさらで赤い服と合わさると、同色の相乗効果で美しさが増していた。
その場にいた全員が美しいと思った。
するとまなが、赤い服の裾を持ち上げた。
中から真っ白のパンツが顔を出すと、真っ赤に白のコントラストで余計に白く感じた。
「い、いやーーん、見ないでーー」
アオは少し目が吊り目で勝ち気な顔だが美人である。そのアオが先程おしえてもらった事を実践した。
「よし!!」
まなはそう言うと鼻から太い息をふーっと吐き出した。
「ななな、なにをやっているのですかーー」
パイがあきれてとうとう口をだした。
「うふふ、人の中に入るのなら、この位は憶えておいていただかないと、出せません、はじらいです」
まなは、このままサキにアオを引き渡すつもりなのだ。
「アオちゃん、人間の世界に入ったら、我慢と恥じらいが必要です」
まなは真剣な表情でアオに話す。
「は、はい」
「敵には容赦無くのぞみ、味方には優しさと我慢、そしてはじらいです。出来そうですか」
「敵はぶち殺し、味方には優しく我慢して恥じらい」
アオは、素敵な笑顔で微笑んだ。
「出来るみたいです、サキちゃん」
まなも、最高の笑顔でサキを見た。
少し不安を感じたサキがパイを見た。
パイは、サッと下を向き視線を合わせなかった。
「……」
サキは不安だったが、まながすすめるのだから強さは保証されているのだろうと、働いてもらうことに決めた。
「あ、アオさんよろしくお願いします」
「はい」
アオはサキとともに王城に着くと、諜報部門に案内された。
「これから、丁度敵の拠点に向かう、この五人と行動を共にしてくれたまえ」
髭を生やした部隊長に言われた。
「ちっ、遊びに行くんじゃねえぞ、なんて格好をしてやがるんだ」
アオは歓迎されていないようだ。
アオは心でまなの言葉を思い出していた。
優しく、我慢、恥じらい。
「いやーーん、見ないでーー」
つい口から出てしまった。
「てめーは舐めているのかーー!!」
リーダーと思われる体の大きな男が殴りかかってきた。
他の仲間がとっさに体を掴んで止めた。
髭の部隊長は、我慢しきれず後ろを向いて口を押さえ肩を震わせている。
やっと笑いが収まったのか、かたで息をしながら、こちらを向いた。
まだ怒りが収まらないリーダーの顔を見ると、我慢しきれず。
「ぶーーっ」
また、吹き出してしまった。
下を向いて笑っている。
余りにもおかしかったのか、仕舞いにはヒーヒー言っている。
「よ、よし、皆、任務に、ブッ、取りかかれ、いけっ、ひーーひーー」
閉まらない命令がかかった。
全員動きやすい服を着ていたが、アオだけは、まなから貰った赤い服のまま出撃した。