第百五十七話 メイの決断
「私は行けない」
メイの口は笑っていたが目は泣いているような、複雑な表情で首を振っている。
「そうですか」
まなはメイの決断を、何も言わず受け入れた。
「待ってください」
サエが涙ぐみながら二人の間に割って入った。
「何故ですか、一緒に帰りましょう」
サエがメイを見つめて必死で訴えかけた。
「サエおねーちゃん、見て」
メイはサエにうな重を食べている兵士を見るように促した。
兵士達は、楽しそうに食事をしている。
中には、重箱を三つ重ねて、四つ目を食べている者までいる。
サエは、瞬時にメイが何を言いたいのか理解した。
同じなのである。
サエの住むイナ国の兵士と。
きっとメイさんは、この国の国民も、イナ国やオリ国の国民も同じだと思っているんだ。
そしてまなちゃんも。
私は、この国の人は敵だと思って憎んでいました。
サエの目には涙が浮かんでいた。
なんてすごい人達なのでしょう。
そうです、世界を一つと考えれば、この国の人も同じ人間でした。
独裁者に苦しめられている人間です。
メイさんもまなちゃんも、この国の人々を助けたいと考えているのです。
そして悪いのはゴルドとケーシーです。
サエは力のこもった目でメイを見る。
メイは、サエの表情が変わったのを見て、心からの笑顔を見せた。
「サエおねーちゃんは、まなちゃんと一緒に帰って下さい」
サエは固く口を閉じうつむいた。
そして、なにか吹っ切れたような美しい笑顔になった。
その笑顔を見て、メイは驚いた顔になった。
「だめだサエ!! それは出来ない、だめだ!!」
「うふふ、もう決めました、私も残ります」
サエの顔を驚いて見ていたメイだが、清々しいよどみの無い表情を見て、何を言っても無駄と悟り暗い表情になった。
「ふーー」
メイは深いため息をついた。
「まなちゃんの美味しいご飯が、食べられないのは残念だが、二人でここに残るよ」
その言葉を聞くとまなはこくりとうなずいた。
「何か必要な物はありますか」
「この黒い服を数着ほしい、洗い替えが無くて困っていたんだ」
「そうですか、では、忍者服を出しますね」
まなは忍者服を十着ずつメイの分と、サエの分と、そしてもう十着出した。
「これは?」
メイが不思議な顔をして質問した。
「クーちゃんの分です」
「はーーっ、嫌ですよ。私はまな様と離れる気はありません」
「ですね」
まなは、悲しそうな顔をしたが直ぐに引き下がった。
クーカイは腕を組んで拒否をしてみたものの、余りにもあっさりまなが引き下がったので、少し気になってまなの顔を見てしまった。
まなは本当に困った顔をしている。
「まな様、残らなくても大丈夫なのですか」
クーカイは恐る恐る心配そうにまなに聞いてみた。
「悩んでいます。クーちゃんが残ったところでメイさんと、サエちゃんの安全が確保出来るのかどうか。二人の命を守り抜ける人に頼みたいのです」
「……」
クーカイは何も答えなかった。
「やっぱりハイさんに頼みましょう」
「はーーーっ、まな様は私が二人を守れないとお考えですか」
「ちょっと無理かなーと考えています」
「その位できます。それに私ならまな様のご飯を提供出来ますよ」
「じゃあ、クーちゃんが適任ですね」
「当たり前です」
こうして、三人の忍者がゴルドの城に残ることとなった。