第百五十四話 ゴルドにご挨拶
「あっ……、……あっ」
おか様が声をあげた。
おか様はあっと二度言った後はまたいつもの無表情に戻った。
この声を聞き、セイ女様はぱっと明るい顔になり、シオンとシエンは暗い顔になった。
ビビは三人の顔の変化で、おか様が何を言ったのか予想が出来た。
「おか様は、出てもいいと言ったのか」
「すごいですね、ビビ様もおか様が何を言ったのか、わかるのですか」
シオンが驚いた顔をしてビビを見た。
「いや、私はお前達の顔を見て推測しただけだ。むしろシエンまでがおか様の言葉を、理解していることに驚いている」
「うふふ」
シエンが嬉しそうに笑っている。
「おか様がよいというのならいいのだな」
ビビは、反対勢力のシオンとシエンに聞いてみる。
「はい、心配ですけどしかたがありません」
こうして、セイ女様とガンエイ将軍の対戦が実現することになった。
ビビが、国王シアンに話しを持って行くと。
「折角だからお祭りにしましょう」
シアンが嬉しそうに話す。
「セイ女様とおか様のおかげで国庫が潤っていますので、国庫を開いて国民と楽しみましょう。開始はそうですねー、一週間後でどうかしら」
シアンの提案で一週間後にお祭りが開催されることになった。
セイ女様と、ガンエイ将軍の対戦は、催し物の一つに決まった。
「ビビ、他にも催し物を考えてください。どうせなら私も全てを忘れて一日楽しみたいわ」
「はい、わかりました」
こうして、ファン国では国王主催のお祭りが開催されることになった。
同じ頃、まなはゴルド国のシバ商会に着いた。
シバ商会の中には主人を失った使用人が暗い顔をして集まっていた。
「さあ、皆さん、今日からここはパレイ商会に名前を変更します」
本当は一番落ち込んでいるはずなのだが、まなが元気に振る舞っている。
「主人は、レイさんが務めます」
まなが紹介すると、レイが一瞬驚いた顔をしたがぺこりと頭を下げた。
レイは、「えー店主はまなちゃんじゃないのー」と言いたかったが、まあ、まなちゃんだからしょうが無いかと諦めた。
「お店は、レイさんとパイさんにお任せします。お店の護衛はハイさんお願いします」
レイはまなに感心していた。
ここが新たに襲撃されることを見越して、人の配置をしていることに感心していたのである。
「私は、お城に行ってきます」
まなは涼しい顔で言った。
「待ってください、お供はどうされるのですか?」
パイがあせって、引き留めた。
「私にはキキちゃんとクーカイちゃんが付いています。そしてクロちゃんにも最初から本体で来てもらいます。それに挨拶だけです安心してください」
「ふふふ、まなちゃんが言うのだから信じましょう」
ハイと、パイは心配そうな顔をしているがレイに説得された。
「では、行ってきます」
「はーーっ、いまから行かれるのですか」
さすがにレイも驚いた。
「はい、メイさんとサエちゃんが心配です」
まなは、三人の幼女姿のキキとクロとクーカイを連れてゴルド国王城に向かった。
「うふふ、初めてのお城ってわくわくしますね。クロちゃんも、クーちゃんも緊張しすぎですよ」
まなが上機嫌すぎてクロもクーカイも気味が悪かった。
城門をズカズカ自分の家に帰ってきたみたいに入ろうとする。
ご機嫌の変な服を着た少女を驚きながら衛兵が引き留めた。
「待て、待て、お前達何を勝手に入ろうとする」
「はーーっ、なにがーーっ!!」
まなが怒っている。そしてその剣幕に、衛兵が気圧された。
「い、いやいや、こ、ここはゴルド国の王城の門だ。馬鹿なことをすると直ぐに殺されるぞ」
「やってみなさい、クーカイ道を作りなさい!!」
この言葉を聞いて、いつもかわいらしい顔をしているクーカイが恐ろしい魔人の顔になった。
クーカイはまながやる気なのが嬉しかった。
そしてやる気、全開のまなに命令されて、完全にスイッチが切り替わっていた。
そのクーカイの姿を見て、クロの顔も狂気に満ちていた。
城の固く閉ざされている大きな門をクーカイは殴りつけた。
ガラガラガラガラン、ゴオオーン
重い金属の門が壁を破壊しながら倒れていく。
「おおおおおおー」
それを見ていた人達が声をあげた。
「あんなことをすれば殺されるぞ」
「いや、見ろあれは、ヤパの武術大会を優勝した子供だ」
「なんだ、何が起こるんだ」
城門の前が騒然となっていた。
「であえーーー、であえーーー、くせ者だーー!!」
衛兵達が大声で援軍を呼ぶ為叫んでいる。
まなはゆっくり中に入っていく。
キキだけは危険なので、まなは手をつなぎ暴れないように押さえている。
城内から大量の兵士が現れた。
そして現れたのは、城内で訓練をしていたメイとサエとウカク、ゴランと配下の兵達であった。
「お前達、邪魔をするなら手加減をしないぞ。道をあけろー!!」
まなは怒りのまま叫んでいた。
「うがーーーーっ!!」
まなの怒りにとうとうキキが狂乱モードになり叫んだ。
その声だけで人々の心は恐怖に支配された。
それはまるで、ライオンの咆哮を聞いた草食動物のようだった。
この時はまだ、まなはメイとサエに気が付いていなかった。
メイは、恐れおののいていた、ケーシーと初めて対戦した時など比べものにならなかった。
横にいる、ゴラン、ウカクの腰が抜けしゃがみ込んでいた。
サエも恐怖に恐れおののいた。