表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北の魔女  作者: 覧都
153/180

第百五十三話 セイ女様の強さ

ファンの国


おか様とセイ女様はシオンのクラスに机を貰って、授業を受けていた。

午前中は、神殿跡で治療をして、午後は学校で授業を受けている。

おか様は、セイ女様に抱っこされ、セイ女様は一生懸命授業を受けている。

子供達は最初こそ珍しがっていたが、慣れると二人がいることが普通の事になっていった。

知識の乏しいセイ女様にとって授業はありがたかった。

聞くこと全てを吸収して、セイ女様は知識を増やしていった。

そんなとき事件が起きた。


授業が終ったあと、六人の男達がシオンとシエンの命を狙って襲いかかってきたのだ。

シオンとシエン、セイ女様とおか様は、体の不自由なおか様の速度に合わせて、歩いていたためまだ校内にいた。


学園には衛兵が常駐しており、素早く賊に対応した。

だが、衛兵はまるで役に立たなかった。

賊は、暗殺集団ヨミの手練れだったのだ。


ヨミが窮地に立たされていた為の強攻だった。

オリ国の暗殺はことごとく失敗し、ファンの国王の暗殺は魔道士ビビに阻止され、全て失敗していた。

せめて王女だけでも殺さなければ、格好が付かなかった。

そのためのなりふり構わない襲撃だった。


暗殺者は、警備の手薄な学校を襲撃場所に選んだ。

シオンとシエンが体の不自由な女を連れている為、動きがのろいことを掴んでいた。


「探せーー!!」

「邪魔する物は、全員殺せー」


賊は、目に付く人間をことごとく武器の餌食にしていった。


「おねー様、どうしよう」


「隠れましょう」


シオンはシエンの手を取りおか様の手を取り、近くの教室に入り身をかがめた。

いつもおか様とセイ女様を監視しているメイドは、こういう時の護衛でもある。

賊を倒す為、部屋には入らず外を固めた。


「おい、あそこだ」


外に護衛のメイドがいた為、逆に賊に目を付けられてしまった。

六人の賊は顔に薄笑いを浮かべゆっくり近づいてきた。


「きゃっ」

「ぐっ」


メイド達もそれぞれ訓練を受けている猛者なのだが、そのメイド達がなすすべも無く倒されてしまった。

メイドの腹から出た血が床に水たまりの様に広がっていく。


シオンとシエンは目に涙を浮かべガタガタ震えていた。


「あいつらは、倒してもよろしいのですか」


シオンの耳元にセイ女様が小さな声で話しかけた。

シオンはもう声を出せる状態ではなかったため、小さくうなずいた。


白いフードをかぶった、女がゆらりと立ち上がった。

だが目で追えたのはここまでだった。

気が付けば六人が殴り倒されていた。


「おかあ様、皆を助けましょう」


セイ女様が何事も無かったようにおか様の手を取り抱き上げた。

そして一番近くにいたメイドを治癒し、廊下、校庭で倒れている生徒や、衛兵を助けていった。

学校にいる者は、皆、セイ女様とおか様の奇跡を目の当たりにして、言葉を無くしていた。


校庭に出て、治癒がすべて終ると何事も無かったように、シオンとシエンと手をつなぎ帰路についた。

当然シオンとシエンは、嬉しくて目をキラキラさせて、セイ女様に甘えながら歩いていた。


賊は治癒を受けた衛兵に捕らえられ、きつい拷問のすえ、ファン国内のアジトを白状し、オリ国やイナ国、ヤパ国に先んじて暗殺者集団のアジトをつぶす事に成功した。




セイ女様が強いという話しが国王とビビの耳に届くのは早かった。

国王執務室。


「ビビ」


「聞いていますよ、何ですか」


「ガンエイ将軍から、セイ女様と試合をしたいと、言ってきていますが、どうしたらよいと思いますか」


ガンエイ将軍は、ファン国の筆頭将軍で、武力において頭一つ抜きん出た存在である。

ファン国では魔法のビビ、武力のガンエイと言われ恐れられている存在なのである。


「セイ女様にお伺いしたら、よろしいのでは無いですか」


ビビは悪い笑顔で答える。


「そうですね」


国王シアンはビビの表情を見て続ける。


「ビビは結果がわかっているような顔ですが……」


「くっくっくっ」


ビビは可笑しくてしょうが無いようである。


「だって、ガンエイごときが勝てる相手じゃねえわさ」


「まあ、やってみなくてはわかりませんよ」


「そうですね、セイ女様に聞いてきます。くっくっく」


笑いながら、ビビは部屋を出て行った。




コンコン


「シオンいますか」


「どうぞビビ様」


「お前達はその場所が好きだなー」


王宮の子供部屋に入ると、入り口から一番遠い部屋の隅に四人が固まっている。


「セイ女様」


「はい」


「我国の将軍が、セイ女様と力試しをしたいなどと言っておりまして……」


ビビは自分で言いながら驚いた、いつも物静かなセイ女様の目がキラキラ輝いているのだ。

断られると思っていたのに、これはやる気満々なのかと嬉しくなった。


「断っていただいてもよろしいのですが」


ビビはわざと反対にふってみた。


「あのー、やってみたいです」


セイ女様の言葉に、ビビは可笑しくて笑い出したいのを、ぐっとこらえて平静を装った。


「そうですか、ではその様に国王様にお取り次ぎいたします」


「だめーー、危険です」


シオンが反対した。


「こら、シオン、セイ女様がいいとおっしゃるのだから」


「いやーー」


シエンまで反対した。


「ふむ」


ビビは少し困っていた。

こんな所に反対勢力がいるとは、頭を抱えていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ