第百五十一話 寂しい空席
「まなちゃーーん」
ヤパの国王ノルがまなの後ろから大声で声をかけた。
まなは涙をサッと拭き取り笑顔になった。
「凄いものを作ったねー」
「四階のお風呂も入ってきたよ」
「やっぱり正式にうちも頼むよ」
「これを見ちゃうとね」
「やらずにはいられない」
「はい」
「まなちゃん、私もお願いします」
イナ国王サキも依頼をした。
「はい」
まなは嬉しそうな顔をして引き受けた。
今日の料理はバイキング形式で、好きな物を取ってきて食べる形式にした。
まだ、オリ国では良家の信頼置ける女性で、メイドを引き受けてくれる人が少なかったのだ。
手が足りないので、コウの小っさいメイド六人、そして、パイと先生もメイド服でお手伝いをしている。
三階の真ん中には大きな会議用の机が用意されている。
今日は、この会議に初めて、南トランからの客がいた、イホウゼンである。
イホウゼンは、マイの兄である。
マイが自慢そうにゼンの案内をしている。
慣れない食事会に最初はオロオロしていたが、おいしい料理に感動していた。
「親父殿」
「おう、ゼンか」
イホウギ、今はギホウイと名乗っているのだが、イホウゼンはイホウギの養子である。
そして、今日、久しぶりの再会である。
まなとノルは会議の席で食事をしていた。
食べたい物は、直接まなから出して貰っていた。
「すごいわねーー」
「はーなにがーー」
「まなちゃんが、声をかけると」
「世界中からこんなにすごい人達が」
「集まってくるんだから」
「えーー」
「な、なにをいっているんですか」
「私が声をかけたわけではありません」
「わたしは、本当に何もしていません」
「はい、はい」
「ねーまなちゃん」
「さっき泣いていたの」
「はい」
「泣いていました」
「そこは素直なんだ」
「わ、わたしはいつも素直です」
「最後にチューチューを」
「ください」
「どうぞ」
ヤパ国王ノルのチューチューを食べる姿を見ると会議の席に人が集まりだした。
いつものメイの席は空席になっていた。
まなはメイの座るはずだった空席をずっと見つめている。
さすがのノルも茶化す気にはなれず、まなの心の痛みを心配するのだった。
会議は最初、暗殺者集団の壊滅作戦について話し合われた。
各国にある支部は早急につぶすことを決定する。
まな会を敵に回した者を許すことは出来ないとの結論である。
だが、この暗殺集団の本拠地はザン国に有り、今は手が出せない事もわかった。
そして、本題のメイとサエの救出作戦である。
これは、今の最高戦力を投入して、探ることとなった。
メンバーは、ハイとパレイ商会があたることになった。