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北の魔女  作者: 覧都
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第百四十七話 メイ対ケーシー

ゴルド国王城玉座の間。


ゴルドは玉座にふんぞり返り、家臣と面会をしている。


「ケーシー」


一通り重臣と会話をすますと、最も信頼する配下の名を呼んだ。


「はっ、大王様」


「オリ国、国王暗殺の、魔人が帰らぬようだのう」


「は、返り討ちにあったものと思われます」


「ふふふ、さすがにオリ国と言うべきか」


「ファンの、国王と二人の娘は」

「殺害したと報告があった」

「だがその後、新国王についての話しがない」

「ケーシー、なにかしらぬか」


「恐らく、魔力で生き返ったのではないかと」


ケーシーは目の前で見ていたのにもかかわらずこう答えた。


「なにー」

「しかし、死者のよみがえりは」

「北の魔女の呪いで」

「出来ないはずではないか」


「それを出来るほどのものが」

「ファン国にいると想像出来ます」


「ふむ」

「そなたの意見を聞こう」


「はっ」

「ファン国に今の国力で」

「手を出すべきではないと」

「具申いたします」


「ふふふ」

「既に信頼できる暗殺集団に暗殺依頼をした」


「そうですか」

「それはオリ国に対してもですか」


「そうだ」

「まあ奴らは使い捨てじゃ」

「失敗しても損害もないしのう」


「ケーシー」

「そなたには太尉の位を与え」

「軍の全権を任せる」

「恐怖を持って、練兵し」

「最強の軍団を作れ」

「まあ、あまり殺し過ぎるなよ」


「ふふふ、わかりました」


この日よりゴルド国の兵士には、死んだ方がましというような、厳しい訓練が課せられた。

いよいよ、軍をもって戦争を仕掛ける準備に入るようだ。




「やはり来てみないと」

「わからないものだな」


「な、何がですか」


「兵士の目の色が違う」


メイとサエはゴルド国のシバ商会に来ている。

シバ商会の一階について、窓から物珍しそうに外をみているのだ。

今日からここの住人となるのだが、メイはまるで自分の家のようにくつろいでいる。

いつもの伍イ団の白い服ではなく、ピンクのかわいらしい子供服を着ている。

こうしていれば誰もが、メイをかわいらしい美少女としか認識しない。


「メイさん」


サエがいつものようにメイに敬意をもって接すると。


「サエお姉ちゃん」

「わたしのことはメイちゃんと」

「妹を呼ぶみたいに呼んで下さい」


かわいらしい声でかわいらしく言った。

いつも飲んだくれて、酔パラっている姿のメイばかり見ているサエは、今のメイが新鮮でとても可愛く感じた。


「メイちゃーん」


キラキラした目になり、メイを見つめる。

メイは、「あーーこれは」あかんやつだと思ったがもう諦めた。


「か、かわいいーー」


サエはメイに抱きつくとほっぺと、ほっぺをあわせてスリスリした。

二人がスリスリしているところに、まなが納品に現れた。




はわ、メイちゃんがめちゃくちゃ可愛い。

つい、つられてわたしまでスリスリしてしまいました。

そしたらうれしそうにキキちゃんもスリスリしています。

後ろでパイさんの目もキラキラしています。

先生は今日、学校で授業です。


「お、おまえらーー、イナに帰ったら憶えていろよー」


わたし達が、メイちゃんと戯れていると、シンさんが二階から降りてきました。


「はやいなー、もうみなさんおつきですか」


「……」

「えーーーっ」


「どうかしましたか」


どうかしましたかじゃねーー。

シンさんの対応がなんか違う。


「おい、まな様を倉庫に御案内しろ」

「お二人は私についてきて下さい」


わたしは、使用人に案内されて、シバ家の倉庫に案内されました。

たいして大きくない倉庫なので直ぐに一杯に出来そうです。


「では、少し目をつぶっていて下さい」


使用人さんにわたしがお願いすると、使用人さんは素直に目を閉じて下さいました。


「もう、良いですよ」


「うおおおおーー」

「なな、な、なんですかー、これは」


倉庫一杯のお酒と砂糖を見て驚いています。

わたしは最近この反応に慣れてきました。

なので無視をするという塩対応です。


「では、用事は終りました」

「二人の所へ案内お願いします」


「は、はい」

「すげー、この人すげーー」


小声ですけど聞こえていますよ。




メイちゃんの部屋に入ると、サエちゃんもいました。


「まなちゃん」

「宮殿はどの位進みましたか」


「あーー、終りました」


「えーーーっ」


メイさんとサエちゃんがすごく驚いています。


「でも、そっちが終ったのなら」

「こっちを手伝って貰えるのかな」


「あーー、無理です」

「まだ、宮殿の中の小物の調整があります」

「クロちゃん、ヤパの宮殿へお願いします」


「はい」


まなは、よほど学校が嫌なのか、さっさとオリ国へ移動した。




辺りが暗くなるとメイは、まなに相談して用意して貰った、夜に行動し易い服を着ていた。

全身の黒装束、そう、忍者の姿になっていた。

可愛い美少女忍者のできあがりである。


ガチャリ

ドアを開けて外に出るとシンがドアの横にいた。


「あっ」


サエが思わず声を出してしまった。


「驚いたなー」

「なにか企んでいるとは」

「思ったが初日から」

「しかもちびちゃんの方が」

「出て行こうとするとは」


「で、君は何をする気だ」


メイがいつものメイにもどって、少し殺気を込めて話しかけた。


「ふふふ、手助けが必要なら」

「手を貸そうと思ってね」


「ふん」

「腕に自信があるようだが」

「これから行く先は」

「化け物の巣窟だ」

「足手まといだ、放っておいて貰おう」


「そうか」

「足手まといか」


そう言うとシンは、さみしそうな顔になり、それ以上は何も言わなかった。


「じゃあサエ行ってくる」


「はい、気を付けて行ってきてください」


「うむ」


メイは目にも止まらない速さでシバ商会を後にした。

そして、最初からゴルド国の王城を一目散に目指した。

王城の直近の結界の手前で足を止めた。


「クロちゃん分体は離れてくれ、結界がある」


「はい」

「ここで待機しています」

「声は聞こえますので」

「何かあれば声を出してください」

「本体で助けに入ります」


「ありがとう」

「では行ってくる」


「気を付けてください」


右手を結界に伸ばす。

特に抵抗もなく右手は結界をすり抜けた。


(これなら、すんなり入れそうだ)

スッとメイが結界をすり抜け王城の外壁にたどり着くと、一人の男が立っていた。


(もう発見されたのか、ゴルドも優秀な配下がいるということか)


「私は、ゴルド国太尉ケーシーです」

「もし、名乗る名があれば伺います」


「……」


「では、狩りの始まりです」

「捕まらないように逃げてください」


空に月はなかったが、星が輝き、その星明かりで男の顔が浮かびあがった。

整った優しげな顔だったが、そこに浮かぶ笑顔は、優しさの中にすごみが有り、メイの体に震えが走った。


(こんな、恐ろしいと思ったのは、ゲダ以来だ)

(やばい、やばい)

(くそーー)


メイは、そのまま後ろを向いて逃げたかったが、それではあっという間に捕まる。

意表をついて、男に一撃を加えようと全力で懐に飛び込んだ。


「……!!」


メイはスンナリ男の懐に入り込めた。

ついでだから拳を前に出した。


パーーン


メイの拳は男の腹に大きな音と共に命中した。


「ぐおおお」

「くそがーー」


メイの拳は意表は突けたが、大してダメージを与えることはなかった。

男が拳を出した。

ブオオーーーン

ものすごい音とともに空振りの風が起こった。


既にメイの姿は見えなくなっていた。


「くそう」

「何てことだ」

「この俺が遅れを取るとは」

「どこの国の回し者かは知らんが」

「人間の世界も案外侮れんな」




やばい、やばい

くそう、ゴルド国はどれだけ化け物がいるんだ。

だが重要な情報が手に入った。

太尉ケーシー、こいつは私より強い。

初日の手土産としては十分だな。


「クロちゃん」


「はい」

「無事ですか」


「ふふふ、まなちゃんの」

「この服と、杖の付与のおかげで」

「何とか逃げることが出来ました」


「そんな、恐ろしい敵がいたのですか」


「いた、うかつに城には入れない」

「ふふふ、クロちゃん、かえろうか」


メイは強敵を前にして、困った様な口ぶりだが顔は少し楽しそうだった。

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