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北の魔女  作者: 覧都
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第百四十六話 オリ国の一夜城

六人が帰ると、シンがシバに話しかけた。


「親父、学校なんて嘘だぜ」


いまシバ家の応接室には当主シバと、後イ団オリ国支団長ヅイと、シンがいる。


「なぜ、そう思う」


「条件が良すぎる」


「ふふふ」

「何かはあるだろうが」

「知る必要はない」

「これを見ろ」


「すごい酒と砂糖の量だな」

「いつ持ってきたんだ」


「ここで生産されたんだ」


「な、なんだって」


「シンよ」

「何故お前は、あの方達を」

「そこまで嫌うのだ」


「当たり前だ、友を殺されたのだ」

「親友だったんだ」


「あの方達に殺されたと……」


ヅイがシンの言葉に反応した。

そして、その表情に真剣のような鋭さが現れた。


「なにをなされましたか」


柔らかい口調だったが、そこに重い殺意のようなものがあった。

シバもシンもそれを感じ、背中に冷たいものが流れた。


「お、おれが、まなとか言う餓鬼の胸を刺したのさ」

「そしたら、そこにいた奴らが発狂して、皆殺しさ」


「こっちは餓鬼一人だぜ」

「あいつらは、やり過ぎだ」


「はーーはっはっ」

「まな様を刺し殺そうとしたのかーー」


ヅイは心から楽しそうに笑っている。


「いいか小僧、まな様を餓鬼とかいうな」

「殺すぞ!!」


先程の楽しそうな表情から一転、殺気がこもった言葉にシンは怯えた。

ヅイは、後イ団の支団長を務めている程の猛者である。

恐らく、何度かシンも手合わせをしてその強さを理解しているのであろう。

本気で怯えていた。


「しかし、まな様はお優しい」

「自分を刺した相手まで助けるとは」

「それどころか」

「殺されていた他のものまで助けるとは」


「だが、五人は死んだ」

「五人殺されたんだぞ」


「どうせ、焼き殺されたのであろう」

「体が焼けた人間はまな様でも助けられねえ」

「助けられるなら助けていたさ」

「そういうお方だ」


「そもそも、まな様とは」

「どんなお方ですか」


シバがシンを心配して助け船を出した。


「そうか」

「あんた達は」

「あの方の凄さを知らねえのかー」

「まあ、しょうがねえかー」

「よしっ、まあ、あんたらになら話しても良いだろう」


話しが長くなりそうなので、ヅイは椅子に座った。


「シン、おまえは武人だな」

「戦争には興味があるか」


「あー、ある」


「ならば、イナと南トランの戦いは知っているな」


「知っているに決まっている」

「イナ国ササ領の、兵士の活躍で大勝利したんだ」


「ふふふ、何処にもまな様の名前が出てこないだろ」


「あいつがなにかやっていたのか」


「あの方の御陰で、イナ国が勝てたのさ」

「それなのに、一言も名前が出ねえ」

「隠されているのさ」

「まあ、本人が一番隠したがっているしな」


「あいつがなにをしたんだ」


「まず、まな様は壁をつくった」

「高さ十メートル、オオリの街の端から端までの長さの壁だ」

「これを何日で作ったと思う」

「二週間だ」


「な、なんだって」


「この壁のせいで、南トランはイナの様子が見えなくなり、森に深く侵入してしまう。そして、ササ領まじない組の攻撃で敗走する。このまじない組の使っていた武器がまな様の作ったアド正という武器だ」


「壁だけじゃなく、武器まで作っていたのか」


「そして、敗走するトラン兵は、壁に退路をふさがれ壊滅的な打撃を受ける」


「また壁か」


「それだけじゃねえ、イナ軍には、魔力回復の杖が有り、そのおかげで兵士のケガがその場で治されていた」


「まさかその杖もまな様が」


「そうだ」

「これだけの功績があったのに」

「なにも名前が出てこない」

「おかしいとおもわねえか」


「ふむ」


「まだあるぞ」

「ヤパにあるヤパドーム」

「あれもまな様が作った物だ」


「な、あれも」


「近々、オリの宮殿が新築される」

「これもまな様が引き受けている」

「立派な宮殿が建つだろう」

「でもまな様の名前は全く世には」

「出てこないはずだ」


「うむ」


「ついでに言っておくが」

「伍イ団自体が今は、まな様の下にいる」

「つまり俺自身も、まな様の配下の一人ということだ」


「……」


「五人死んだと言っていたが」

「それは、お前がまな様を刺したのが原因」

「五人を殺したのは、お前がやったのと」

「同じ事ではないのか」


「ぐう」


シンはやっと自分がおかした過ちに気が付き下をむいた。

そういえば、あの時山賊じゃないと言っていたんだ。

それを俺は山賊として刺した。


「ヅイ殿、私はどうお詫びすれば良いのでしょうか」


「はーーはっは」

「あの方は許している」

「だから仕事を依頼したんだ」


「親父、学校へ行く二人は俺に面倒を見させてくれ」


「うーーむ」

「まあ良いだろう」

「しばらく護衛の仕事もなくなるしな」






まなは宮殿の新築をする為、建設予定地に来ていた。

建設に関しては、詳細なミニチュアを作って打ち合わせをした。

広さは、ちょっとしたショッピングモール位。

一階には、商業スペースと多目的ホール、大浴場を用意。

二階は、来客用の宿泊施設。

三階からは王様使用スペース、外部からの侵入手段は、クロの移動魔法のみ、ここは畳の大宴会場が準備され、布団を引けば大勢が寝られる多目的スペース。

四階には王様の居住スペースを用意した。


「じゃあクーちゃん、まずは整地しまーす」

「杭を四つ出しますので」

「そこの地面の凹凸を消去して」

「平らにして下さい」


「はい」

「わかりました」


「くすくす」

「もう整地終了ですね」

「次は、杭の内側を」

「五メートル下まで地面を消去して下さい」


「はい」


「じゃあ、いよいよ」

「宮殿の出現です」

「えーと忘れてはいけないのが」

「防御魔法と四階の強烈な結界魔法」

「全体もゆるめの結界魔法」


「相変わらず、すごいですね」


クーちゃんが感心しています。

そうです、もう、わたし達の前には巨大な、建物が出現しています。

外観は全体に薄いクリーム色又は極薄い黄色という感じです。

オリ国の国色が黄色なので黄色っぽく見えるようにしました。

そしてうっすら、私の得意な若草模様を凹凸のみ、着色しないで入れました。


一階の四隅には大きめのガラスを入れて、ショッピングモールのレストランの様なスペースを作りました。

各階にも良い感じにガラス窓が入りバランスもバッチリです。


各階の調査をしてまわり、トイレのチェックも重要ですね。

余りにも出来が悪ければ、消去して作り直しです。

さすがに数カ所使用禁止の所が出来ました。

水が出て来ません。

私の魔法は、細かい調整が出来ないのが難点ですが三カ所なので、まあ許容範囲でしょう。

照明は例の杖を蛍光灯代わりに使用します。

消灯機能はないので使わないときは専用のスペースに入れると光が弱まるように

すりガラスで作りました。

火を使わないので安全ですが、電気よりもふべんです。


「まあ、これなら作り直す必要もないでしょう」


作り直すともっと大変なミスをするかもしれませんから。


「さて、王様に完成の報告に行きましょうか」


「……」


今日のお供は先生とパイさんとキキちゃんです。

返事が返ってきません。


「どうしました」


「……感動しています」

「す、すごすぎます」

「目の前で見ても信じられません」

「これは、恐らく世界一大きな建造物だと思います」


パイさんが小さな声でつぶやくように言うと、隣で先生が凄い勢いでうなずいています。


「じゃ、じゃあ行きますよ」


「は、はい」




オリ国国王の執務室


コンコン


「まなです」


「どうぞ、お入り下さい」


部屋に入ると、国王様と相国様の二人だけで書類をめくっていました。


「なにか、問題でもありましたか」


国王のマリアちゃんが心配そうな顔をしています。


「いいえ、完成の報告です」


「そうですか」

「いつ頃の予定でしょうか」


「いえ、完成しました」


「……はっ」

「……えっ」


そう言うと宮殿の見えるところへ走って行きました。

ついでに相国のイコマさんも負けじと走って行きました。


「えーーーーーっ」

「ままま、ま、まなちゃーん」


「お仕事が終ったら」

「ゆっくり案内します」


「仕事はイコマがやります」

「今すぐ案内をして下さい」


「えーーーっ」


イコマさんが驚いています。


「では、ご案内します」




こうして、この宮殿は、オリ国の一夜城と呼ばれるようになった。

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