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北の魔女  作者: 覧都
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第百四十四話 優しくなったやんちゃ姫

ファンの国の王宮、子供部屋の片隅。

今日もセイ女様に甘えて眠る二人。

シオンは急に疑問が起きた。

いつも一晩中なで続けてくれるけど、セイ女様はいつ眠っているんだ。


「セイ女様」


「はい」


「セイ女様はいつ眠るのですか」


「はい、最近は、二人がおかあ様を」

「散歩に連れて行ってくれますから」

「そんなときに少し眠っていますよ」


「そうですか」


シオンはそれを聞いて、セイ女様を休ませる為、より一層おか様の面倒を見ようと思うのだった。




国王の執務室


「ビビ」


国王が王国魔道士ビビを呼んだ。


「はい、ちゃんと聞いていますよ」


「最近、娘の成績が良くなっていると」

「学校から連絡がありました」


「そうですか」


「あれほど優秀な家庭教師を」

「付けても一向に上がらなかった成績が」

「上がっているのです」

「これもあの二人の御陰なのかしら」


「でしょうね」

「いまは、学校でも優しく」

「人に接していて」

「他の生徒からも人気があるようです」


「メイドからの報告では」

「特にあの二人と」

「会話をしている様子は」

「ないと聞いているのですけど」

「不思議です」



シオンとシエンは持ち前の美貌から、優しく他人に接するだけで人気ものになっていった。

以前は、何もかもイライラする原因だったのだが、いまは腹が立たない。

少し嫌なことがあっても、夜、セイ女様に甘えて眠ればすっかり楽になっていた。


おか様は何も出来ない人で、世話をするのが大変だが、一生懸命お世話をしていると、時々ふっと、笑顔を見せてくれる。

シオンはその笑顔がたまらなく好きだった。

自分をこんなに頼ってくれることが嬉しかった。

そんな気持ちで、人と接していると、他の人もおか様のように笑顔になってくれることがわかった。

そして、おか様の笑顔より少し劣るけど、それでもその笑顔が好きになった。


周りの人々は、二人のやんちゃ姫の変化に驚いていた。

いったい何があったのかと。


「ただいま、セイ女様」


「お帰りなさい」


「おか様の様子が変ですね」


「はい、少し熱が出ています」


「なんですって、大変」

「ベッドで寝かせてください」


「駄目です汚れてしまいます」


シオンはその言葉を聞くと悲しそうな顔になった。

(そうだったわ、以前の私なら汚れるって言って、絶対に使わせなかったわ)


「いいえ、汚れても良いのです」

「それよりおか様の体が大事です」


ベッドに寝かせてフードを外すと、おか様の頭は酷い状態だった。

よほど大きな丸い物で、力一杯殴られたのか耳たぶの上側をつぶし、右目まで吹き飛ばされていた。

そのとき頭蓋骨に挟まれた皮膚が裂け全然くつっけないでいた。

頭蓋骨もぐちゃぐちゃにつぶれ、ぺこんと潰れていた。

目玉のなくなった、目からは、赤いどろりとした体液が垂れていた。


(この人は自分がこんな状態なのに、病気の人を心配してセイ女様と毎日神殿で治癒をしていたのだわ)


「すぐに冷やすものを持ってきます」


シオンは冷たい水の入った桶と布を持ってきた。

布を良く絞って額に置いてセイ女様に話しかけた。


「セイ女様、なにかしてほしいことはありませんか」


「子供と遊びたいです」


「えっ」


「おいしいものがあります」

「食べさして上げたいです」


「あーーーーっ」


その言葉を聞くとおか様が反応した。

ベッドから不自由な手を外に出すと、ポロン、ポロンとサイダーのペットボトルをだした。


セイ女様が蓋を取りシオンに渡すと。


「飲んでみてください」


シオンは一口飲んだ。


「おいしーー」


その言葉を聞くと、おか様が微笑んだ。


「私は、おか様の微笑みがいっぱい見たいです」

「おか様は子供が喜ぶとき一番沢山微笑みます」


「わかりました」

「セイ女様、おか様が一杯微笑むように」

「子供と遊べるようにしましょう」

「私に、任せて下さい」


「ただいまーーー」


シエンが元気にそして嬉しそうに帰ってきた。

最近のシエンは学校が楽しかった、でも部屋にセイ女様とおか様がいるので部屋がもっと楽しかった。


「どーしたんですか」


ベッドを囲んでいる、姉とセイ女様を見て異変に気が付いた。


「し、死んでしまったんですね」

「うわーーーーん」

「おかさまーーー」


ベッドに駆け寄った。


「大丈夫です」

「元気ですよ」


セイ女様が優しく声をかける。


「……」

「もーーー、おねー様紛らわしいことを」

「しないで下さい」

「お姉様がベッドを貸すなんて、死んだときぐらいでしょ」


「はーー、そんなこと」

「ありません」


「だって、だって」

「こないだ、鼻水付けただけで」

「めちゃくちゃ、怒ったじゃ」

「ないですかーー」


後ろでメイド達が、くっくっ、と肩を震わせて笑っている。


「シエンこれをあげます」


おか様の出したサイダーの蓋を開けてシエンに渡した。


「のんでみて」


「うわーーー、おいしーーー」


手をバタバタさして、全身で喜んでいた。

シエンの喜ぶ姿を見て、おか様はフッと小さく声を出して笑っていた。


その姿を見て、セイ女様の言うとおり子供の輪の中におか様を入れて上げたいと思っていた。

自分も十分子供だと言うことも忘れて強く思うのだった。

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