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北の魔女  作者: 覧都
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第百三十五話 ゴルドの野望

「ゴルド様、大魔王様が国を一つお任せすると仰せです」

「国土はオリ国と同じだけご用意すると」


「な、なんだと……」


ゴルドは裏社会の王と言われていた。

ミッド商会との戦いに敗れて、オリ国での覇権は失ったが、全世界で見ればゴルドの力は圧倒的である。

だが、さすがに王とは名乗れなかった。

魔王の下ではあるが王を名乗ることができる。

これは最高に魅力的であった。


「ゴルド大王か……」

「わるくない」


ゴルドの表情は緩み、既に王としてあれこれ思いを馳せているようだった。


「……」

「いかがですか」


ケーシーはゴルドに十分妄想させる時間をおいて返事の催促をした。


「魔王は何が望みなのだ」


「さて、聞いていませんが」

「恐らく人間の死ではないでしょうか」


「わしに沢山殺せということか」

「……」

「はーーはっはっ」

「良かろう受けてやる」

「大勢殺してやる」

「まずはザンの王からだ」


「い、いまなんと」


ケーシーは驚いていた。

ゴルドの予想をしない一言に。


「ザンの国を乗っ取ると言ったのだ」

「ケーシー、お前は今からわしの配下になれ」

「そう言ったらなるのであろう」


「それを望まれるのなら」

「大魔王様から、ゴルド大王の力になるよう」

「言われておりますので」


「うむ」

「わしは、どうせならこの世界の王になる」

「手始めにザン、次はファンだ」

「魔王の森のゴルドの国は息子ゴグマに任せる」

「だれか、強い魔人を付けてやってくれ」


「はっ、ゴルド大王様」


ケーシーは驚いていた。

そして面白そうでわくわくしていた。

さすが大魔王様だ。

ここまで考えておられたとは。

ケーシー達魔王軍三大将軍と最高幹部一席二席三席の六人は、魔王の森に国を作り、そこからヤパを攻めるものと考えていたのだ。

いきなりザン国を攻めることは想定の斜め上だった


ゴルドは寝室の扉を開けると叫んだ。


「皆を集めよ会議を開く!!」


「大王様、今は深夜です明日になされては」


ケーシーは一応言っておいた。

本当は、自分こそ早く何をするのか聞きたかった。

わくわくが止まらず、子供のようにはしゃいでいた。


「ふーふっふっ」

「血が沸騰しておる、寝てなどおれぬわ!!」




ゴルド一家本部会議室

ゴルドの配下の幹部が集まっていた。

深夜の緊急会議で眠そうな者もいたが、ゴルドの目はギラギラと燃えていた。


「わしは、明日よりザン国、国王となる」


「現国王を殺し王城を乗っ取る」

「逆らう者は皆殺しじゃ」

「よく聞け!」

「逆らう者は皆殺しじゃ!!」


これは、ゴルド一家の中でも反対する者があれば殺すという意味でいっている。

この場にいる者に緊張が走る。

眠そうにしていた者も目がぱっちりした。


「だが、王城にはわしと、このケーシー、そして護衛の五人の七人だけで行く」

「ゴグマ、お前は手勢を連れ魔王の森に赴き人間が住めるよう国作りをすすめよ」

「魔王の森には魔王から、優秀な魔人が派遣される筈じゃ」

「残った者は、わしが王城を乗っ取ったら全員王城に来るのじゃ」

「全員今から直ぐに行動を開始せよ」

「わしは、あす朝一で王城に行く」

「以上じゃ」


「ふふふ、明日からはザンの王城が、ゴルド一家の本部となる」

「いや、ゴルド国の王城じゃな」


ゴルドは、生涯最高の興奮状態になっていた。

ケーシーもまた面白くてわくわくしていた。






あいとセイはゆっくり北へ歩いていた。

北へ歩けば歩くほど、人間の気配は無くなり森は深くなった。

それでも何日か歩くと、石で出来た小屋を発見した。

うち捨てられた小屋は、かつて魔獣狩りの拠点として使われていた小屋だった。


「おかあ様、ここで休みましょう」


セイが中を調べると、うち捨てられてから随分経っているようで、中の方が外観より崩れていた。

セイは人間というより野生動物に近い。

こんな場所でも特に気にならないようで、あいと二人平気で住み着いた。

あいは日がな一日ぼーっとしている。

だが、ほんの少し、ほんの少し、セイだけが気づける位ほんの少し、あいに変化があった。

あいがちょっぴり微笑むのだ。

口が微かに動いて笑顔になっているのだ。


セイはなにがきっかけか考えていた。


「やっぱり子供達のおかげかなー」

「おかあ様には子供と接する時間が必要なのかしら」


これが現実の物とセイは感じ始めていた。

あいが笑わなくなったのだ。


「おかあ様、村に行きたいですか」


セイは思い切ってあいに聞いてみた。


「ふぃあー」


あいが何かよく分らない返事をした。

でもセイは、自分の言葉に返事をしてくれたことに感動していた。


「どこかまた子供達と」

「接する事が出来るところへ」

「行きましょうね」


セイは集落に近いうち捨てられた場所をさがす為、移動を開始する。

二人は西へ向かって歩き出した。

行き着いたのは、海だった。

海沿いを南に歩き集落を見つけた。

小さな漁村だった。

ここから離れた所に住むところをさがした。

森の中にやはりうち捨てられた集落を見つけ一軒の廃墟を住まいとした。


「おかあ様、ここでまたのんびり暮らしましょう」


「……」


セイが話しかけても、あいからの返事はなかった。






ザン国では王城が開くとゴルドが一番に国王への面会を申し出ていた。

ゴルドとザンの国王は友人と呼べるほど親しい間柄だった。

だが、それは形だけのこと、ゴルドは友人などと全然思っていない。

納税額が一番多いから王が親しくしているだけのことと思っている。

それも昨日まで、今日からはもらう側だ。そう思っていた。


「ケーシーよ、王の周りには、四人の魔道士がいて」

「結界を張っている」

「結界は誰にも破れんだろう」

「先に魔道士を倒さん事には王は殺せん」

「魔道士には四人ずつ護衛がいる」

「腕が立つ者ばかりじゃ」

「この護衛と魔道士を一気に殺せるだけ殺してくれ」


「大王、魔道士程度の結界は私には無いのも同然ですが」

「そのまま王を殺してはいけないのでしょうか」


「な、なにーー」

「ケ-シー本当に出来るのか」


「大王、私は魔王から直々に派遣された魔人です」

「魔道士四人程度の結界をやぶれないようなら、別の者が来ております」


「うむ」

「ならば、直接で良いじゃろう」

「頼むぞケーシー」


「ははーー仰せのままに」




「どうぞお通りください」


城に着くとすんなり七人は王の前に通された。


「ゴルド、いつもそなたには感謝しておる」

「して、今日は何用じゃ」


七人で平伏している。


「行けケーシー」


ゴルドがケーシーに命令する。

ケーシーが飛び出した。


「ゴルドめ乱心しおったかー」

「私の前には結界があり武器も無しでどうする気だ」

「忘れたのか」


この時点で王はまだ余裕であった。


ケーシーは速かった。

結界に手を当てると魔道士達が悲鳴と供に弾き飛ばされた。

そのまま、ザン国王の頭を殴り飛ばし、すぐさま護衛も殴り飛ばし、倒れた護衛の持つ武器を奪いゴルドの護衛に渡した。


あっという間に王の間は制圧された。

王も護衛も全て殺され、四人の魔道士だけが生かされて、ゴルドの前にひざまずいている。


「お前達には価値がある」

「どうだわしに忠誠を誓わぬか」


ゴルドが話しかけたが、唾を吐きかけた。


「ふふふ、わしはしつこい性格でなー」

「おまえ達のような奴を、配下にしたいのだ」


ニヤニヤ、嫌な笑いを浮かべ、護衛の方を見た。


「いつものように、こいつらが働きたくなるようにしてやれ」

「よいな」


四人の魔道士は、過酷な拷問、または、家族が人質にされ、結局はゴルドの下で奴隷として働くことになる。


「さて、配下の者を城に引き入れ、逆らう者と王族は皆殺しにするかのー」

「ケーシー、おぬしはわしの近くにいて、護衛をせよ」


ゴルドが独り言のように言っただけだが、部下の護衛五人は機敏に動いた。


このあと、ザンの優秀な兵達が、何度もゴルドに襲いかかったが、ケーシーにことごとく命を奪われた。


「わーーはっはっはっ」


ゴルドの高笑いと供にザン国は滅亡しゴルド国が誕生した。

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