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北の魔女  作者: 覧都
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第百三十一話 森からの襲撃者

魔王の森は騒然となっていた。


人間一人、ロイを殺せば魔王軍最高幹部になることが出来る。

魔王軍最高幹部を目指す者にとって、こんな魅力的な機会はなかった。

多くの上位魔人が、ヤパ国の近くの魔王の森に集結していた。


新人勇者ロイの噂は魔王軍だけで無く、人間世界にも広がっていた。

ヤパ国の外交の場では、マナに作って貰った赤い美しい鎧を纏い、専用武器青竜刀を構え、美人女王の横に控えていると絵になった。

顔も整っていてまるで男装の麗人である。

加えて、武力も前勇者ペグを軽く一蹴する程の腕前で、女性の人気がめちゃめちゃ高かった。


本日の勇者ロイのご予定は、魔王の森の伐採現場の視察だった。

白馬に乗り、移動するロイの姿を見ようと、若い女性が集まっていた。

美しい女性もいるのだがロイは見向きもせず、前だけを見据え颯爽と進んだ。

後ろには黒いローブの魔法使いが深いフードをかぶり、付き従った。


元々は、この魔法使いのリーダーがパイだったが、今はマナの護衛に昇進したので一人新人が加入している。

とはいえ、この三人がヤパ国最高の魔法使いであることに変わりはない。




「やあ、ガイさん」

「精が出るねー」


「ああ、ロイ君……」

「では無いな、勇者ロイ様かな」


「嫌だなー、ロイ君のままでお願いします!!」

「まなちゃんが様を付けられるの嫌がる意味が分るよ」

「ところでガイさん、なんでヤパの将軍にならなかったんだい」

「俺より強いし、ガイさんの方が勇者にふさわしいと思うのだけど」


「ああ、それかー、俺はイナ国人だ」

「やっぱりイナ国で仕官したい」


ガイの言葉を聞いてうるうるしている人物がいた。

もとイナ国、国王サイであった。

現在は伍イ団の団員である。


「わしが、国王なら今すぐ、イナ国の将軍になってもらうのだがなー」

「わしは、国外追放の身だからのー、誰も耳をかさんだろうしのー」


「サイさん、俺は、登録者も楽しいし」

「無理して仕官する気もありません」

「気にしないで下さい」


「うむ、だが、ガイさんが良くても」

「イナ国の損失だからなー」


サイがしょんぼりしているとまながいつも通り現れた。


「あーー、パイさんよろしく」


「はーー、なんで私――」

「ちゃんと自分で言って下さい」


「はー、だってーわたしは人見知り」

「こんな大勢の人前ではしゃべられない人間です」

「いい加減理解して下さい!!」


「そ、そんな情けないことを」

「威張らないで下さい」

「みなさーーん」

「まな様からお昼ご飯の差し入れです」

「食べて下さーい」


本当はまなに言って欲しかった。

自分が言ってしまっては、まなに感謝せず、感謝が自分に向いてしまうことがいやだったのだ。


まなは、学園の昼休みを利用して、昼ご飯を用意して来た。

ここでは、大勢の作業員が作業している為、大量のおむすびと、お水を差し入れた。


ここにはいつものメンバーのほとんどが集まっている。

本当の目的は朝の出来事を伝える為に来ていたのだ。


「あいちゃんの町が乗っ取られました」

「そして、あいちゃんとセイさんが行方不明です」

「それに、あいちゃんの家族が、亡くなりました」


「なんだってー」


「……」


集まっている人達が言葉を失った。


ここには、伍イ団から、メイ、レイ、ガイ、サイ、後イ団ギホウイ、ヤパ国からロイ、まな配下、ロボダー、オデ、パイ、先生、サエ、キキそして、魔人シロとシロ配下のハイ、ミドムラサキ、アカ、アオそして分体を飛ばしまくって縮んだ少女姿のクロ本体が集まっていた。


特にシロと配下の魔人軍団は、元気がなかった。

自分たちのせいだと思っているようだ。

最初に口を開いたのがシロだった。


「まな様、あい様が見つかるまで」

「わたし達は、まな様にお仕えしたいのですが」

「お許しいただけませんか」


この魔人達は、まながあいの魔女契約の相手であることを知っている。

主人の主人は主人と考えたのだ。

いや、見た目以外そっくりのまなにあいの面影を求めたのかもしれない。


「えーーーーーっ」


まなは即答で断りたかったが、昨日一杯泣いた筈なのに、まなからあいの行方不明の話しを聞いただけで、涙ぐんでいる魔人達を見て、同情してしまい断り切れなかった。

まなは、小さくうなずいた。

まなの許しを得ると魔人達はほっと安心して、シロの城へ帰って行った。


「さあ、まなさん、午後の授業ですよ」


先生がまなに話しかけた時。

伐採作業先の森から、一人の見慣れない男が歩いてきた。

一人が姿を見せるとゾロゾロ見慣れぬ人影が増えていった。


「おい、人間ども!!」

「ここにロイって奴はいるのか」


その言葉をきいてまなの目が輝いた。

そしてキラキラ輝く目で先生を見た。


「まなさんは本当にすごい人なのですけど」

「生徒としては最低です」


先生が大きなため息をついた。


「ロイは俺だ!!」


赤い鎧を着けたロイが前に進み出る。

だが、その前にパイが進みでた。


「勇者の前にお供の魔法使いが御用を承ります」


いやいや、あんた勇者のお供を卒業しているでしょ。

まなは心の中で突っ込んでいた。


「おもしれーや」

「勇者の前におっぱいねーちゃんが遊んでくれるってよー!」


先頭を歩いている男が答えると。


「ぎゃーーーははは」


後ろの人達が腹を抱えて笑っていた。

パイは、すこしムッとした顔になる。

そしてまなからもらった赤く輝く杖を構えると。


「火炎!!」


静かに声を出した。

まなからもらった杖は、声の大きさで威力が変わる為、小さな声にしたのだ。


ピッ


最早、火ではなかった。赤いレーザービームが杖の先からでた。

そのレーザーは先頭の男の上半身を吹き飛ばした。


「……」


パイは自分の攻撃の威力に驚いていた。

ヤパ国ではヤパ人であるパイは、北の魔女の加護で魔法の威力が上昇する。

パイはその事を忘れていた。


「うわーーーっ」

「何だー今のは、なんなんだー」


多くの者達が森の中へ、逃げていった。

だが、残った者が数人いた。

パイは残った者達と睨み合っていた。


「おいおい、パイさん」

「あいつら、パイさんに勝てるから残っているんだぜ」

「危険だから俺が変わるぜ」


ロボダーがパイの横に並ぶとニヤリとわらった。


「あら、私全然、本気じゃありませんよ」

「ここは、私にお任せ下さい」


「まな様、この人独り占めする気だー」

「どうにかしてくれー」


「そうですね」

「わたしも皆さんの戦うところを見てみたいです」

「パイさん、ここは下がってください」

「他の人が負けたら、またお願いします」


「えーーっ」


パイさんがほっぺをリスの様に膨らまして後ろに下がった。

後ろでヤパの魔法使いの新人さんが、先輩に質問している。


「あのーパイさんってあんなに強いお方だったんですか?」


先輩の魔法使いは首をブンブン振っている。







前に進み出たのは、ギホウイさん、ロボダーさん、オデさん、ガイさん……。

えーーっメイさんまでいる。

そしてレイさんも……。

わーー、ロイさんあなたが出ちゃあ駄目でしょう。

あなたが目的みたいなのにー。

サエちゃんと先生が、一歩進んで、一歩下がって。

チョロチョロしています。


「先生もサエちゃんもやってみたらどうですか」

「クーちゃん、治癒魔法の準備してください」

「先生、サエちゃん、治癒は直ぐに出来るように備えておきます」


私の言葉を聞いて、二人は前に進み出ました。


「ロイさんと戦いたければ、目の前の相手を倒してからです」






わたしは、はにかみながら、小さな声で言います。

するとパイさんがかぶせて大きな声で、言ってくれました。


「言っておくが、お前達が倒した魔人は」

「雑魚だぞ!!」

「怪我をしたくなければ、引っ込んでいた方がいいと思うがなー」


「ちょっと、まて、魔人が、なぜ俺を狙うんだー」


「魔王様がお前の首に賞金をかけたのさ」

「魔王軍最高幹部第十席の座をなー」

「せいぜい殺されねーように気をつけな」

「いくぞーー」


先に仕掛けたのは、魔王軍最高幹部第十席を狙うほどの上位魔人だった。

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