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北の魔女  作者: 覧都
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さようなら、メイさん

グエン商会


「おめでとうございます」


受付嬢が嬉しそうにいう。


「団の魔封石が満タンになったので、一階級上の魔封石に交換します。今度のは魔力十、金貨十枚分の容量の魔封石を貸与しまーす」

「はい、今日の売り上げは金貨八枚です」


金貨を受け取ると五人はベイに急いだ。


食堂ベイでは何故か個室に通された。


「カンパーイ」


あいは牛乳のおかわりをすぐに注文し、料理が来ると、手づかみで食べ出した。

あいちゃん一人じゃかわいそうだと、他の四人も手づかみで食べ出した。


「あっこれだ」


四人は個室に通された意味がわかった。


「まずは、おめでとう二人とも」


メイが上機嫌で話し出す。


何のことか分からずぽかんとする、四人。


「ロイ君とレイちゃんの目を見て」


二人の目が赤く光っている。

ロイの光はよく見ないと分からない程度だが、レイの光はよく分かる。


この世界では、魔力が増えて来ると、目が赤く光る。魔封石や魔獣の目が赤く光るのと同じだ。人間の場合、目が光る者を魔道士と呼ぶ。

さらに魔力が増えると、その光がなくなり人間なら魔女と呼ばれる。魔獣は姿も変り人と見た目が近くなるそのため魔人と呼ばれる。


「新しい魔道士が二人も誕生した記念すべき日よ」


「メイさんは目が光っていませんが」


「そうね、私とあいちゃんは魔女よ」

「これから私の話をしようと思うのだけれど、長くなるけどいいかな」


四人はふんふんと頷く。


「わたしはオリ国の北の、といってもあいちゃんには、分からないわね」


メイは北の方向を指さし、


「こっちの方向のずっと先の方」


メイがあいの顔を見る。

あいは急に見られ、口一杯に頬張った麺を二すじほど口から垂らしたまま。指の差す方向をみた。壁しか見えなかった。


あいちゃんは、食事中だけは幼児のようにかわいいなーと思う四人だった。


「その森の中に隠れ住む、お婆さんの魔女だったの」

「当時は弟子も百人位いる有名な魔女だったのよ。探究の魔女と呼ばれ調子に乗っていたのね」

「魔女の森からゲダという魔人が来て、私は弟子と共にゲダに戦いを挑んだの」

「魔人は強かったわ。弟子共々コテンパンにやられちゃった」

「ゲダは遊びで、私に呪いを掛けて、楽しかったと言い残して森に帰っていったわ」

「本当に遊びだったのね、死んだ弟子は一人もいなかったし、呪いも私だけだったの」

「魔人の呪いは、魔法封じの魔法、魔法を全部封じられた私は、魔法を使うことは疎か、魔力の放出も封じられたの。」

「魔力は自分の貯められる量以上は、放出しているのだけど、それを封じられた私は限界以上の魔力のせいで、その日以来、年を逆行していったの」

「なんとか魔力を放出しようとあがいて、少しだけ魔法が使えるようになったけど、焼け石に水」

「年々若返って、きっと最後は赤ちゃんになって死んでしまうと思って、直す方法を探していたの」

「もう、百年以上旅してきたわ」

「皆に会えてここで最後でもいいかな、なんて思っていたとこだったのよ」

「あいちゃんの回復魔法で、元に戻るどころか、魔力が強力になったわ」

「これで私の旅の目的は終わったわ」

「ありがとう、あいちゃん、皆」


メイはガブガブと、酒を飲んだ。

普段は余り飲まないメイがいっぱい飲むのを見て、四人は不安になった。


メイさんこのまま、オリ国に帰っちゃうのかな。

不安になったレイがメイに聞く。


「メイさん、オリ国には、いつ帰るのですか」


「そうね、なるべくはやく帰りたいわね」


そう言うと、メイは席をたった。

お手洗いのようだった。


四人は皆、涙目だった。


「メイさん帰ってしまうって」


レイがぽろぽろ涙をこぼす。


「レイ、泣かずに笑顔で送ってやろう」


ガイがいうと、レイが


「そんなことは、わかっているわ!」

「でも悲しいのだからしょうが無いでしょ」


伍イ団の仲間は、あいをのぞいてメイが集めた仲間だった。

あいの加入までは、ほとんど稼げないダメダメ登録者で、苦労ばかりしていた、思い出しかない。

でも、よく笑い合って、楽しかったと本当にそう思える日々だった。


「楽しかったね」


「そうだな」


レイの言葉にガイとロイが頷く。


三人を見てあいの手がずっと止まっている。

短い間の付き合いだったがあいも悲しかった。


めいが嬉しそうに戻って来て、


「全く今日はいい日だ」

「皆、乾杯しよう」


コップを皆のコップにぶつけ、一人上機嫌で酔っ払っている。


「あいちゃん、牛乳がもうないじゃないか」

「おねーさん牛乳、おかわりー」


あいの背中をパシパシ叩く。


五人はベイが閉店になったので、仕方なく店の前で分かれることにした。いつものように、ガイがレイとメイを送り、ロイがあいを送るため二手に分かれると、あいとロイはメイの姿が見えなくなるまで見送った。


「さようなら、メイさん」



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