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北の魔女  作者: 覧都
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第百十八話 ザン観光

わたし達はコウさんにまな商会とあだ名を付けられ、レイさんをお供に加えてヤパとザンの国境まで来ました。

まだ日は高く、このままならゆっくり歩いても最初の町に到着できるということです。


左手に川を見ながら川沿いの道を八人で歩いています。

メンバーは、レイさん、キキちゃん、パイさん、先生、サエちゃん、オデさん、ロボダーさん、そしてわたし。


道は、山に向かって続いています。

日本にも良くあるハイキングコースみたいです。


「あのー、まな様、国境を越えました」


パイさんが、話しかけてきました。

ヤパ国人のパイさんはヤパ国内では、北の魔女の加護を受けます。

でも、国境を越えればその加護を受けられなくなります。


「では、ここでお渡ししますね」


あまりじらすのも悪いので、ここは素直に渡してしまいましょう。


「はい、これです」


「ありがとう、クーちゃん」


そーでした、作った杖はクーちゃんに渡してありました。


「ああ、まな様もありがとうございます」


つ、ついで感、半端ねー。


「うふふふ」


パイさんがロイさんの武具と同じ赤いデザインの杖を手にして喜んでくれています。


「ガッ、グッ」


あら、パイさんの様子がおかしいです。


「何か変なもの拾って食べたのでしょうか?」


レイさんが心配……、これって心配しているのかなー?。

あ、レイさんと目が合いました。


「冗談です。魔女化していますね」

「まなちゃん、何かしましたか?」


なんで、わたし限定?


「がーーーーあ、ぐっ」


パイさんの様子が益々悪くなっていきます。


「あーー、これはあいちゃんのあの時と同じ奴だー」

「まさに、全身が痛くなって魔女になる奴」

「でも、なんで?」


「恐らく、まなちゃんの杖が原因だと思います」

「まなちゃんの木の杖は、二倍って言っていましたが、五倍になっていました」

「今回の杖は、三十二倍って言っていましたので、八十倍以上の効果があると思います」


サエちゃんがなんだか恐ろしいことを言っています。

わたしってそんなにポンコツなのかなー。


「……」


パイさんの痛みが引いてきたみたいです。


「うわーーん」


えっ、パイさんが大人の癖に子供の様に泣きながら川に飛び込みました。

なにやってんだー。


「くす、くす」


なんだかレイさんがすごく笑っています。


パイさんが暗い表情で戻ってきました。


「まなさん、かわいいピンクのフリフリのパンツはありますか」


「は、はい、ありますというより出せますよ」


「では、一枚お願いします」


何だか空気がやばい。

ふれないように、話を変えましょう。


「あのーレイさん、魔女になる条件って何なのでしょうか」


「えーーーっ、まなちゃん、ちゃんと授業でやりましたよ」


だーーっ、先生が出て来たーー。

そうでしたー。

ここに学校の先生がいるのでしたー。


「これから説明します、よく聞いて下さい」


「あのー、先生から説明されると授業みたいで眠くなります」


わたしが、小さな声で言ったのに皆に聞こえたみたいです。


「ぎゃあーーはっはっはーー」


全員が爆笑です。


「では、まなちゃんからのご指名ですので私が答えますね」


「はい、お願いします」


「まず、グエン商会で買い取り金額、金貨一枚の魔力を、魔力一とします」

「魔道士になるのは魔力百位です。これは個人差がありますけどね」

「そして魔女になるのは魔力千位です。これも個人差が大きくありますけど」


「すごーーい、なんで分るんですか」


「それはね、魔法を研究するのが好きな魔女がいて、いろいろ研究してくれた結果ですよ」


「あー、三大魔女の一人、探究の魔女かー」


「でもすげーなー」

「世界に三人しかいない魔女が、今日一日で二人も増えたんだよな」


ロボダーさんが感心しています。

そ、そうだ、わたしが来てから、あいちゃん、ミミちゃん、レイさん、ロイさん、パイさん、魔女がめっさ増えました。

やばい、この世界に介入しないようにと言いながら、介入しまくっています。


しかも山賊とかいって、浮かれてしまった。

もし出会ったらどうするつもりなんだー。

わたしなにか絶対しでかす。

やばい、どうか、出会いませんようにー。


「まな様、山賊です」


ぎゃーー、なんてタイミングのわるいやつらだー。


「お、オデさん、ザンの国って山賊が沢山いるのですか」


「このあだりなら、一杯いる。三歩、歩げば出会うと言われでる」


ぎゃーー、ザンの国―、山賊どんだけいるんだー。


「助けてくれーー」

「助けてくれーーーー」


山賊の様子が変です。

山賊が助けを求めながら三十人ほど、こっちへ逃げてきます。

そしてわたし達の後ろに逃げ込みました。


「貴様ら、山賊の仲間かー」


完全武装の人達が十人ほどで山賊を追いかけてきます。


「違います」


わたしはつい前に出てしまいました。

その瞬間、胸に強烈な痛みを感じました。

剣が突き刺されています。

その剣が、胸から抜かれるより早く、腕が切り飛ばされました。

ロボダーさんがロボ正で素早く切り飛ばしたのでした。


そのため、わたしの胸には剣が突き刺さったままになっています。

この状態では痛みが引いていきません。

それどころか意識を保つことすら出来ません。


「ぎゃーーー」

「ぐわあ」


遠のく意識の中で悲鳴が聞こえます。

貫かれたのが胸なので、声も出せません。

わたしは、ここで意識を失いました。






「まな様、まな様」


わたしを呼ぶ声がします。

目を開くと、わたしの回りにまな商会の皆が集まり、心配そうな顔をしています。


「ま、まな様」

「大丈夫ですか」


「はー、なにがー」


「おおおーっ」


回りから歓声が上がりました。


「いつも通りのまな様だー」


いつも通りってどういうことだー。

刺された胸を擦ってみます。

胸から、剣は抜かれているみたいです。

状況が分らないので上半身を起こして回りを見渡します。


三十人の山賊が膝をつき怯えています、ロボダーさんとオデさんがその前で仁王立ちです。

少しでも動けば殺す、みたいな感じに見えます。

完全武装の人達は、見るも無惨に倒れています。


「クーちゃん、倒れている人で助けられる人を助けて上げて下さい」


「嫌です、まな様に手をあげた人達です」


これは、いつもの軽い教育の為の拒否じゃ無くて、本気の拒否ですね。

ですが、ここは言うことを聞いてもらわないといけません。


「治癒をかけなさい!!」


わたしが珍しく強く言ったのでクーちゃんの体がビクンとなりました。


「はい!!」


「この状況は、まずいですね」

「まるでわたし達が、山賊みたいです」


「そうですね」

「でもしょうが無いですね、まなちゃんを殺そうとしたのですから」


レイさんはいつも冷静です。

さて考えましょう。

わたしの知っている小説やアニメはこういう時どうしたんだっけ。


「……」


思いつかねーー、どうしたらいいんだーー。


「貴様らー、俺たちにこんなことをして、ただで済むと思っているのかー」


元気のいい人が戻って来てくれましたねー。


「それは、てめーらの方だ」

「この方を誰だと思っているんだ」

「まな様だ!!」


ロボダーさんがクーちゃんの治癒で戻って来た人達に凄みます。


「……」

「ぎゃーーはっは」

「だれだそれーーー」


よみがえった、完全武装の男達が笑っています。


「あーそりゃあ、そうか」

「まな様、すげーくせに知名度ねーからな」

「げらげら」


わ、笑っている場合かー




わたしを刺した人も、腕が無いまま帰って来ました。


「あのー痛くありませんかー」


「うわあ、なんでおまえ生きているんだ」


「クーちゃん、なんで治して上げないの」


次の瞬間、腕が治りました。


「ありがとう、クーちゃん」


「眷属にお礼は入りません!」


「わたしはねー、クーちゃん、言いたいからいつでも言いますよ」


治った腕に感動している人に尋ねてみました。


「わたしは、山賊ではありません」

「最初からそう言っていましたよ」

「わたしは、まな商会のまなと言います」

「あなた達は何ですか?」


「おれは、シバ家のシンだ」

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