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北の魔女  作者: 覧都
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第百十六話 決着

「クーちゃん、治癒をお願い!!」


それが聞こえたのか、ハイさんが手のひらを少しこちらに向けます。

必要ないと言うことですね。

でも動けるのなら、パンツを隠して欲しいのですが。

ハイさんの着ている服は、チャイナドレスの様な服で、横のスリットが動きやすい様に大きく入っています。

キキちゃんの攻撃で少しスリットが破けて、ピンクのフリフリのあれが半分ほど顔を出しています。


ハイさんは今、場外で横向きに倒れています。

すごく美しいハイさんは、この体勢がまるで雑誌のグラビアの、ポーズの様で男性も一部の女性も、呼吸を忘れて見つめています。

当然わたしもほーーっとため息をついて、見とれています。


パイさんが、ハイさんの無事を確認して、キキちゃんに駆け寄ります。


「勝者、キキ殿!!!」


これで、キキちゃんの優勝が決定です。


「続いて、優勝者と勇者様の試合を行います」


「おおおおー」


会場から地鳴りのような響めきがおこります。

犬のパグに似た顔の勇者ペグ様が観客に手を振りながら入場してきます。

舞台の上のキキちゃんを見てギョッとしています。

きっと試合の様子など見ていなかったのでしょうね。


今までの試合は、東西に分かれて試合をしていましたが、この試合は南北に分かれての試合になります。

当然北側に勇者パグ様が立ちます。

大会優勝者のキキちゃんが南側です。


「では、これより勇者ペグ様とキキ殿の試合を行います」


二人が向かい合って並びます。


「ペグ様、キキ殿準備はよろしいですか」


二人とも無言です。

勇者パグ様はパイさんを下に見ている為か返事をしません。

相変わらずの最低野郎です。

キキちゃんはうつむいてその表情が見えません。


「はじめー!!」


面倒くさくなったのかパイさんがサッサと始めてしまいました。


そのかけ声と共にキキちゃんが、勇者パグ様の後ろにすごい勢いで回り込みました。

勇者パグ様は、それを目で追えなかったのか、キキちゃんを見失いキョロキョロしています。

もうこの段階でわたしは「やっぱりキキちゃんの方が上よねー」などとのんきにキキちゃんの勝ちを確信していました。


「だめだーー、クーちゃん治癒の準備をしてーー!!」




キキちゃんの顔が鬼の笑顔になっています。

うつむいている為注意をしないと分かりませんが、この状態でわたしから口が見えるので間違いありません。


実はキキちゃんは鬼です。

鬼の笑顔は、口が耳まで裂けてすごく恐ろしい顔になります。

イナ国に着いたとき、キキちゃんには可愛い笑顔を教えて、鬼の笑顔は封印してもらいました。

今のキキちゃんは我を忘れているのか、封印を忘れ、その恐ろしい笑顔をしています。


勇者パグ様が振り向き、キキちゃんに気が付きました。

キキちゃんの姿が消えました。

そして勇者パグ様の立っていた所にキキちゃんが立っています。


ドオオーーーーン


雷のような音がヤパドームに響きます。


ヤパドームの南の壁に勇者パグ様が、まるで特急列車にはねられた様に、無残な姿で張り付いています。

あまりに速く吹き飛ばされたため、何がどうなっているのか、理解できた人はいないようです。

クーちゃんが素早く無残な勇者パグ様に治癒を掛けました。




今のヤパドームは、試合の舞台が一つあるだけです。

その舞台も北側に一つあるだけです。

勇者パグ様はその舞台から南の壁まで、一度も地面に着くこと無く、大砲の弾のようにダイレクトに吹っ飛びました。

キキちゃんの怒りの度合いが分かります。


勇者パグ様は初対面の時、わたしを思いきり殴り、蹴り倒しました。

キキちゃんは歯をむき出し猛烈に怒っていました。

その後も勇者パグ様の暴力は止まりませんでした。

その怒りをわたしはキキちゃんに、指示して毎回我慢してもらいました。

今それが、爆発したようです。


「勝者―、キキ殿―!!」


パイさんがとても嬉しそうです。

そうですよねー、パイさんも嫌っていましたもんねー。


試合が終ると、クロちゃんが試合の舞台を消してしまいました。

そして消していた衝立の様な壁を出し、玉を中央に置きました。

ノルちゃんの指示でしょうか、クロちゃんが消したり、出したりを始めました。


「では、会場のみなさーん、この玉を破壊してくださーい」

「方法は何でも構いませーん」

「出来た方には賞金、金貨百枚でーす」


ええーーっ、昨日の魔法学園の対校戦用の木の玉と、壁を使って何か始めました。

まあ、自由に使って楽しんでもらって構いませんけどね。




キキちゃんが駆けよってきて、わたしに抱きついて来ました。

泣きそうな顔をしています。

とても偉業を達成した人の顔ではありません。

そうですね。

殺すの禁止でしたよね。


しかーし、小さな子のすることです。

少し叱って許してあげないといけませんね。

でも、反省しているみたいなので、叱る必要もありませんね。


わたしはキキちゃんをしっかり抱きしめて頭を撫でてあげました。

その姿を見てパイさんがニコニコしています。

そして、頭を撫で終ったタイミングで言いました。


「まな様、ヤパドームの国王専用室に来て下さい」

「ノル様がお呼びです」






わたしがヤパドームの国王専用特別室に着くと、伍イ団とミッド商会の幹部が既に集まっていました。


「まなちゃんお疲れ様」

「では、ここからヤパ国王として皆さんに相談があります」

「今回の大会の目的は、ヤパの戦力増強の為です」

「一般兵士や隊長までは補充が出来ましたが、将軍の補充が出来ていません」

「無理は承知の上ですが、どなたか立候補していただけませんでしょうか」


ノルちゃんが悲しそうな顔になります。


「そうですよね、ヤパに将軍がいないのは」

「魔王軍との戦闘で全員戦死したからです」

「ヤパの将軍になるというのは、自殺志願の様なものですものね」


ノルちゃんは悲しそうな顔のまま、わたしを見つめます。


「本当は勇者に勝った人が、次の勇者になるのですけど」

「キキちゃんには、それも頼めませんよね」


しばらく沈黙が続きました。

そして、ノルちゃんは残念そうに肩をみます。


「では、クロさんお城へ……」


「待ってくれ!!」

「俺でよければ」


パッとノルちゃんの顔が明るくなります。


「俺でよければなりたいのだが……」


「あの、何か問題でも」


ノルちゃんが心配そうに尋ねます。


「俺は、貧民だ!!」


ノルちゃんが満面の笑顔になります。


「それなら問題はありません」

「心から歓迎します、ロイさん!!」

「でも本当に大丈夫ですか」


「俺の目標は、剣の腕で偉くなることだ」

「ヤパの将軍なら、いうことはねえ」


「おめでとうロイ君!!」


メイさんが本当に嬉しそうにロイさんに笑顔を向けます。


「すまないメイさん、伍イ団に欠員が出来てしまう」


「大丈夫よ、サイさんになってもらうから」

「がんばってね」


なんと、ロイさんがヤパの将軍に仕官してしまいました。

貧民からの大出世では無いのでしょうか。


「他にはいらっしゃいませんか」

「……」

「さすがに無理ですよね」


そう言うノルちゃんの顔は先程までと違って明るいままでした。


「では、まずロイさんにはヤパ国民になってもらいます」


「あーーちょっとまって下さーーい」


レイさんが大声で止めた。


「はい、何ですか?」


「あのー、ノル様、ロイ君の目を見て下さい」


レイさんが珍しく慌てています。

わたしのイメージではレイさんは冷静沈着なイメージなのだけど何があると言うのでしょう。

ノルちゃんが、美しいロイさんの顔に近づきます。

そして、目をのぞき込みます。


ロイさんの目に何があると言うのでしょうか。


「あーーすごい」

「すごすぎです!!」

「ヤパの国は、ロイさん一人で幾つの宝を、手にすることになるのでしょう」


感激のあまり手で口を押さえ今にも泣きそうになっています。

いったい何があるというのでしょうか。

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