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北の魔女  作者: 覧都
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第百九話 オデ専用の武器

青龍団の支部から見える範囲で、移動魔法もまずいと思い少し歩いていた。


「ロボダーさんは嘘つきですね」


「はー、なにがー」


いつも聞いていると自分の口からもつい出てしまう。


「ぶっ、だって、ただ働きって」


クロさんのつぼだったみたいで、クロさんが吹き出していた。


「あーそれかい」

「ミッド商会のお金は、コウさんに寄付するつもりだからね」

「それに、金の臭いがすると青龍団が本気を出してくるからなー」


「どういうことですか?」


「どこの団も団員を食わせるのに苦労しているのさ」

「つまり金欠病なのさ」

「だから、お金を稼げそうな話には敏感でね」

「まな様からお金の臭いがすれば何をしてくるかわからねー」

「まあ、世の中にはついてもいい嘘ってーものもあるのさ」


「つまり、まな様に変なちょっかいが入らないように、気をつかったということですね」


「そーいうこと!」

「クロさん、そろそろ、まな様のところへ移動してくれ」


「それなのですが、まな様から魔王の森の伐採をオデさんとするように言付かってます」


「そうか、俺たちがいても邪魔なだけだしな」

「それにまな様の命令じゃあしょうがねえ」

「そっちへ移動を頼む」


「はい」


俺は昨日作業していた森にクロさんの移動魔法で移動した。


「やあ、ロボダーさん」

「昨日の夕ご飯はうまかったです」


俺は赤い鎧の隊長さん達と、ヤパドームの片隅で晩飯を食べた。

御陰でかなりうちとけることが出来ている。

隊長の横には既にオデさんが着いていた。

何か、ニコニコして上機嫌だ。


「オデさん、何やら上機嫌だが、なにかあったのかい?」


「まあ、これを見てくで」

「クーさん出してくで」


オデさんが手を伸ばすと、長い柄が出て来た。

その先には巨大な斧、斧と言ってもその刃は刀のように長く鋭い、斧の反対には四角い巨大な金属の塊、金槌が付いている。

金槌を下にして立てればデカイ体のオデさんでも隠れられる程の大きさの斧槌だ。


全体は刃先をのぞいて青色、まな様の得意な模様が刻まれ、赤い宝石のような丸い模様が点在している。

見た目も美しい。

あれで、オデさんは美しい物が好きだからこの武器はお気に入りなのだろう。


「オデさん、俺たちのそばにいてくれるのは、クーさんじゃなくてクロさんだぜ」

「まあ、見えねえから分からないけどよ」


俺はさっき知った知識を披露した。


「そっ、そうなのが、すまねえクロさん」


「いえ、構いませんよ、似たようなものですから」


しかし、オデさんは素直だなー。

ザン国じゃあ泣く子も黙るほどの極悪人とは思えねー。


「見でくれ、オデ専用の武器、斧鎚だ」

「まな様に作ってもらった」


「専用武器だって?」


「そうだ、まあ一度持っでみてくで」


持たされた斧鎚は、鳥の羽の様に軽かった。


「やっぱり、すごく軽いねー」

「!!」


軽いと思ったのは一瞬で、俺の掴んでいるところから斧鎚は黒くなり、あっという間に全体が黒くなった。

それと同時に重くなり仕舞いには持ち上げられなくなり、地面に置くしか無かった。


オデさんが、ニコニコしながら柄を持つと、そこから青い美しい元の状態にもどっていった。


「オデ以外使うことが出来ねえ様にできでいる」


「すげーー、いいなー」


「斧は森の木三本、反対の鎚は小さな建物なら一撃で壊せる程の威力と聞いでいる」


「それなんだが、まな様の武器の威力はそんなもんじゃねえからきをつけてくれ」

「それに、どういう訳か振れば振るほど、筋力が増して強くなるぜ」

「百聞は一見にしかず、やってみてくれ」

「おーーい、みんなー、いまから伐採をするー、俺たちの前に出ないでくれー!!」


俺は、作業をしている者達に声を掛け、オデさんにどうぞと手で合図を送った。

オデさんは武器を構えると力一杯振った。


……


静かだった。

何も無かったように静かだった。


ザザッ

小さく森の木の葉がざわめいた。


ザザザザザーーー


斧を振った前の木々が次々倒れだした。

十五本の木が一撃で倒れた。


「あんたらすげーなー」


隊長が驚いているが、一番驚いているのがオデさんだった。


「ロボダーさん、すげーなーこれ」


「まあ、まな様の作ったもんだからな」

「すごくねーわけがねー」


その後俺と、オデさんは、交互に森の木を切り倒しまくった。




「やってるねー」


「こりゃあすげー」


「あいちゃんもすごいけど」

「やっぱりまなちゃんも違う意味ですごいわね」


後ろを見ると肩に伍の字の四人がいた。

伍イ団の四人だ、ガイさんとロイさんとメイさんとレイさんだ。


「ここで、武器の試し切りをしているって聞いてね、俺たちもまぜてもらおうと思ってね」

「メイさん、俺たちの武器をだしてくれないか」


ロイさんの手には長い刀身の付いた槍が出された。


「これは、青龍刀せいりゅうなたって言うんだ」


槍を手にしたロイさんは槍を見ながらうっとりしている。


「俺の刀は長刀、物干し竿って言うんだ」


ガイさんは長い刀身の刀を手にしている。

やはりうれしそうである。

この武器も刃先以外はまな様の得意な模様で装飾された美しい武器だ。


「じゃあ、ガイさんは左、俺は右で」


「おう」


二人は、木を切り始めた。

二人は、一本ずつ切り倒す。

俺たちのようにバッサ、バッサ、品の無い切り方ではない。

最初あの武器は威力が弱いなー、俺たちの武器の方が、威力があると思って見ていた。

よく考えれば、俺たちの切り方では戦場では役に立たない。


敵と味方が入り乱れている所ではその全てを薙ぎ倒してしまう。

あの二人の様に一本一本切れなければ、武器としては役に立たない。

それこそ木を切る専用の刃物となってしまう。


「よーーしいい汗をかいた、仕上げだー」


二人は刀で森の木を薙ぎ払った。

俺たちの倍は森の木が倒れた。


「なーー、すげーー」


さすがは伍イ団だ。

俺たちの遙か上だ。

やはり世界は広い。

青龍団は出て正解だな。

それを実感した。


「ロイ君、魔法も使ってみなよ」


メイさんがロイさんに声を掛ける。


「じゃあ、行ってみようか」

「どうせ、魔力を残してもしょうが無いから全力で」


「風刃」


俺たちの斬撃の三倍は切り倒した。

なんだこの人、魔法も使って戦ったら、この人こそ世界最強なんじゃねえのか。


「ロイ君、魔法はもう少し使ったほうがいいわね」

「あんまり成長してないよ」

「レイちゃんはその十倍は行くよ、才能はロイ君の方が上なんだから」

「ちゃんと頑張りなさい」


これだけの魔法を使って、メイさんから叱られている。


「ちぇっ、これでも結構成長したんだぜ」


俺は、斬伐刀を手にして有頂天になり世界最強になったと思っていた。

青龍団の時は、青龍団が世界最強だと思っていた。

とんだ勘違い野郎だ。

初めてあった人は、自分より強いかもということを、いつも考えておかないといつか殺されるな。


「さあ、皆、帰ろうかそろそろ夕飯の時間だ」


メイさんの目がキラキラ輝いている。


「今日はわたし達と、一緒に食べましょう」

「クロちゃん、まなちゃんに許可をもらってくださいね」


「はい」


気が付けば、太陽が随分傾いていた。

この後俺たちは、伝説の伍イ団の、始祖の四人と晩ご飯を食べることになった。






ヤパドームの王様専用特別室に、オデさんと俺は移動した。

ヤパドームの一階に水で体を洗う設備があるので、そこで体を洗ってまな様に用意してもらった変な服を着ている。

ここには、まな様自慢のお手洗いがあり、快適に食事が出来る。


伍イ団と、後イ団の幹部、ミッド商会の幹部がそろっていた。

大きな机が六つ置いてあるのだが、まだスペースがあるのでそこにガイさんとロイさんと、ギホウイさんに来てもらった。


「クロさん、オデさんの武器をだしてくれ」


オデさんが手に持つと一際でかい。


「この武器を見てくれよ」


「うむ、良い武器だとは思うが、やっぱり自分の武器が一番いいな」


ロイさんが最初に言い切った。


「ギホウイさん、その武器持ってみてくれ」


もう既にオデさんは俺が何を見せたいのか理解したようで、ニヤニヤしながらギホウイさんに武器の柄を差し出した。


「うむ、かるいのー、鳥の羽かと思……」

「……」

「なっ……」


ギホウイさんの手で持っている部分が黒く変色し、そこからどんどん変色が広がって行く。

それと共に重くなりギホウイさんはオデさんの斧鎚を床に落としてしまった。


ガーーン


恐ろしい程の音が響きこの部屋にいた人の体が全員宙に浮いた。

そして美しいテカテカの床に傷がついた。

だが、その傷は見る見るうちに修復した。

斧鎚はオデさんが慌てて手に取ったらこちらも傷一つ無くその美しさを取り戻した。


「これが俺の見せたかったものです」

「この武器は、主人にしか扱えません」

「これこそ、自分専用の武器というものです」


俺の顔は、頬が赤くなり鼻の穴がこれでもかというほど広がっているのを感じていた。

だが、見回すと、回りの男たちの顔も同じに成り、目がキラキラしていた。

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