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北の魔女  作者: 覧都
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第百三話 三人の同行者

「来て良かった」

「あいちゃんに会ってよかった」


空は真っ青、雲一つない快晴。

わたしの心も超快晴。

昨日までの台風は嘘のようです。


本当はもうしばらく一緒にいたいけど、あいちゃんは忙しい身。

ここら辺で切り上げないと迷惑がかかりそうです。

セイちゃんがわかりやすくソワソワしていますからね。


「クーちゃん、そろそろ帰りましょう、峠の茶屋の二階へ」


こうしてわたしは魔王の森の町、いちのみやを後にした。






「ただいまー」


わたしは、晴れやかな気分で峠の茶屋へ帰還した。


「ままま、まな様がもどられましたーー!!」


わたしが戻るとわたしをみつけた、メイドさんが大声を出しています。

なにか、一大事が起きている感じです。


「ななな、な、何ですかこれはーー!!」


ノルちゃんがすっ飛んできました。


「はーー、なにがー」


何のことか分からないわたしは、この世界ではやっている台詞を言ってみます。


「あいちゃんのまねをしている場合ではありません!!」


ノルちゃんが外を指さして、バタバタ、上下に慌ただしく振っています。

外に視線をやると、どうやらヤパドームの事を言っているようです。

まさか、すごく邪魔になっているとか。


「ご、ごめんなさい」

「邪魔ならすぐに消します」


「ち、ちがいます」

「こんな凄いものを造ってもらって、驚いているのです」


「じゃあ、かたづけなくていいのですね」


「もちろんです」

「こんな凄いものをたった一晩で……」


「そんなことより、こっちに来て」


わたしはノルちゃんの手を取った。


「そ、そんな事って、こんなすごい事をしておいて……」


ノルちゃんはまだなにか言いたそうでしたが、わたしはそれをさえぎって、自信作を見せたくって急ぎます。


「クーちゃん、裏の特別室へわたしとノルちゃんと、昨日いた人達を移動してください」


昨日いた人と条件付けしたのは、今日のこの部屋には昨日に増して人が増えていて、全員移動したら入りきらないからです。


「わかりました」


クーちゃんは指示通りに移動をしてくれました。

このヤパドームに用意した特別室、その中でも一番格式の高い部屋へ。


ヤパドームは、南北に長い楕円形で、南北の頂点に一部屋ずつ二室、東西に二部屋ずつ四室の計六室VIP席を用意してある。

中でも北の頂点の部屋を、王様用に特別大きく作った。

各部屋は天井に張り付くように用意してあり、階段も入り口の扉もなく、クロちゃんかクーちゃんの移動魔法だけが移動手段になっている。


これは防犯上の理由であえて付けてありません。

決して面倒くさくなって手を抜いたわけでも忘れちゃったわけでもありません。

嘘くさいけど本当です。


特別室は、正面が大きなガラスになっていて、ヤパドーム全体が、一望出来る作りになっています。

この部屋にはお手洗いも用意されていて、わたしが見せたかったものとは、このお手洗いのことなのです。


わたしはノルちゃんの手をグイグイ引っ張り、女子トイレに入ると、水を流す為の取ってを操作して、水を流した。


ジャーー!


「流し終わったら元に戻すと止まります」


「あ、あのーー、こ、この水飲んでもいいのですか」


だーー、なんでここの人達は流れる水を見ると飲みたがるんだーー。


「ここの水は飲むのは禁止です!!」


この後、男女の使用方法を説明した。


「まなちゃんは、すごいですね」

「このような手洗いを考えつくなんて」

「王宮にも付けて欲しいです」


「それが、出来ればいいのですが、わたしは後付けで設備を付けることができません」


「じゃあ、新設でなら出来るのですね」


「で、できると、思います」


「次作る王宮は、まなちゃんにお願いすることにします」


嬉しそうにするノルちゃんをみると、次は本当に作らされそうです。

この後、ヤパドーム内を簡単に説明して、峠の茶屋に戻ります。




「変な、じゃねえ、まな様」

「俺をあんたの護衛係の末席に加えて欲しい」


顔はいいけど、性格が最悪なロボダーさんがわたしに真面目な顔をして話しかけてきます。

なんか、わたし、口説かれているのでしょうか。

ならば返事はこうです。


「あーー、間に合っています」


ドスン


「ま、まってくれ」


わーー、土下座です。

初めてされました。


「さっきの失礼は、許して欲しい」

あー、こいつ、さっきわたしをブスって言いやがったんだ。

「キキさんの実力も戦って、良くわかっている」

一撃で負けていたもんねー。

「だが、まな様程のお方なら護衛が一人では、手が足りないときが出てくるはずだ」

「何でもする、俺を配下に加えてほしい」


頭を床に擦りつけています。

だが、断る、性格がクズですからね。

でも、これを断るのは中々根性が要りそうです。

助け船を求めて回りを見渡すとノルちゃんと、目が合いました。

ノルちゃんが大きくうなずきました。


さすが王様です。

人の心が言わなくとも理解出来るようです。


「いいでしょう、丁度私も手が足りないと感じていました」


なんか変だぞう。


「本当なら数人は必要と、思っていたところです」

「人手不足のヤパなので出せても一人、申し出にくかったのです」

「パイ、あなたもまな様の護衛に加えてもらいなさい」


この言葉を聞いて、パイさんが飛び上がって喜んでいます。

いけないところが、いけない感じでパユンパユンしています。


いやいや、違うよ、断って欲しいのですよ。

この流れでは、ロボダーさんとパイさんが護衛になっちゃいますよ。

違う違うとめちゃめちゃ首を振って、ノルちゃんに訴えかけます。

あっ、目が合いました。

さっと視線をそらされました。


おーーい!!


「おでも、護衛をしでー」

「まな様は、おでを見でも化け物とか、気持ぢ悪いどか、一言もいわながっだ」

「おでも、まな様の下ではだらぎでー」


オデさんまで割り込んできました。

私のいた日本では、そういう事を言うのはタブーですからね。

言わなかっただけですよ。


「うむ、本当は私が働きたいのだが、私は仕事が多すぎる、私の代わりに誠心誠意お仕えしなさい」


ハイさんがオデさんに命じます。

これでは、断れない空気感半端ない。

自分でさっさと、断ればよかった。

なにかいい口実ないかな。


「あっ、そうだ」

「あのー、わたしはお金がありません、そんなにお給料払えませんよ」

「三人だと月給金貨一枚に銀貨三枚です」

「経済的に、無理です」

「残念ですがそういう事で」


「パイは、ヤパで給料を支払いますからその心配ありません」


一瞬断られて悄気かけていたパイさんでしたが、これを聞いてパッと明るい表情になりました。


「オデは、給料は要らねー」

「おいしい食い物があでばいい」


うーん食べ物は提供できますね。


「おれは、一生遊んで暮らせる金は稼ぎ終わっている」

「なんの負担も掛けねえ」

「まな様といれば普通じゃ経験出来ねえことが、経験出来そうだ」

「だからやりてえ」


この人は、興味本位かー。

こまったなー、わたし他人とコミュニケーション取るの嫌なんだよなー。

わたしが困り顔をしていると、三人がわたしの前にひざまずき、頭を下げます。

もはやこれまででしょうか。


三人ともそれなりの人物。

ここまでされて断ることはできませんね。


「わかりました、こちらからお願いします」

「宜しくお願いします」


こうして、わたしには三人の人間の同行者が増えた。

パイさんの給料はヤパが、ロボダーさんとオデさんの給料はミッド商会で払ってもらえることになりました。




夕ご飯の料理長はわたしが受け持つ事となり、それまでの時間は自由時間となった。

ヤパドームでは、四十八面の試合場で予選が行われ、峠の茶屋ではハンバーガーが販売され、楽しそうな事が一杯だが、わたしは、ヤパドームを後にして、魔王の森の、伐採の様子が見たいと外に出た。

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