第百一話 ヤパドーム
いま、わたしはキキちゃんが戦った試合場にいます。
日が暮れかかって、人が少なくなったのを確認して出て来ました。
こっそり一人で来ようと思いましたが、移動しようとしたらキキちゃんが服を掴んで来ました。
「皆と遊んでいてもいいよ」と言いましたがブンブン首を振るので、一緒に来ています。
試合用の舞台は石造りで、大岩から削り出した石を綺麗に組み上げて出来ています。
一辺が二十メートル程の正方形、高さは四十センチ程度です。
こんな物を用意するのは今のわたしなら、お茶の子さいさいです。
それではつまらないので、観戦用のスタジアムを作り上げたいと思います。
那古屋ドームをイメージした、ヤパドームです。
まずは、ミニチュアを作ってみます。
雰囲気の為、杖を手に持ち、軽く振ってミニチュアのヤパドームを出します。
全体を白い石で出してみました。
中をのぞくと真っ暗です。
この世界には電気がありません、天井はガラスにして外の光が入るようにしないと昼でも中は真っ暗です。
「クーちゃん、試作一号は消してください」
クーちゃんに試作一号を消してもらい、壁を石にして屋根は透明なガラスにしました。
外はこれで良さそうです。
なかは、客席が要りますね。
追加で客席をだしました。
あーー、杖を振るのを忘れましたが、客席はでました。
一応振っておきます。
「あのー、まな様その杖は、要るのでしょうか」
クーちゃんの突っ込みが入りました。
「いりますよ、何事も形は大事です」
これで完成です。
実物を出せば終わりかな。
でも、どうせなら、売店も欲しいわね。
入り口も幾つか欲しいし、階段や、……。
トイレが要りますね。
わたしの地獄が始まった。
トイレは水洗が良いけど、水や排水はどうすれば良いのか。
鉄の配管なんて用意出来ないし水洗のタンクも複雑だし。
水は学校や、マンションみたいに屋上にタンクを用意してそこから流せば良いわね。
各トイレまでの配管は、総石造りだから石にあらかじめ穴を開けましょう。
最終だけ配管で蛇口を付けましょう。
排水は、浄化槽にためて、わたしの浄化魔法で、浄化してしまいましょう。
ドーム自体は強化魔法で、どんな力がかかっても壊れないようにして、念のため治癒魔法、浄化魔法、回復魔法も付与しましょう。
でも、後付出来ないので、造った時に忘れないように同時に付与しないといけません。
こんな複雑なの出来るかな。
まずはミニチュアの作成
「クーちゃん試作第二号を消去してください」
「はい、消しました」
わたしは、杖を高く真上に構えると
「出でよ、試作三号!」
勢いよく杖を振りました。
あまりにも勢いよく力一杯振ったので、杖が何処かへすっ飛んでいきました。
それでも試作三号は、ぱっと現れました。
「だあーー、杖ー、つえー」
なんか、めがねを無くして、めがね、めがね、みたいな人のようです。
杖を探しましたが、暗くて分かりませんでした。
クーちゃんが、何か言いたそうです。
出て来た、ヤパドーム試作三号はほぼ完成形で、二号との差は床も総石造りで、その床の石の中に浄化槽が埋め込まれている所と、屋根に石造りのプールの様な、水の槽が付いているところです。
細かくはトイレ、売店用スペース、VIP席を用意してそこにも水の配管を用意したところです。
いろいろ、ミニチュアを見つめて考え事をしていたら、辺りに人の気配が無くなりました。
「クーちゃん、この試作品を百倍で造ります」
「ひゃ、百倍ですか」
「はい」
「まずは、ここの土地を整地して五メートル下まで掘り起こします」
「消去魔法でわたしが出した杭の所まで、地面を消しちゃってください」
「できるだけ平らにしてくださいね」
「あー、その時、峠の茶屋だけは残してください」
わたしが、四隅に杭を出すと、クーちゃんはいつの間にか杖を探し出してきていて、杖を構えると。
「えい!!」
かけ声と共に杖を振り消去した。
だーーわたしよりうまいじゃないかーー。
わたしもそれをやりたかったんだよう。
「どうでしょうか?」
クーちゃんが嬉しそうにわたしの方を見てきました。
「上出来です」
わたしは悔しいので、今度は少し可愛いピンクの杖を出して構えた。
クーちゃんが欲しそうに見つめています。
「出でよ、ヤパドーム!!」
実際に出してみると、滅茶苦茶でかいドームスタジアムになった。
床に試合場を6×8面出して、空いたスペースに人工芝を引いた。
峠の茶屋は、このヤパドームの中の北端に鎮座する形とした。
売店兼VIP席です。
試合場は、一枚岩でトータル四十八面、一つずつ独立させました。
後で、必要な分クロちゃんに消してもらえば、多目的に使えると思います。
サッカーの試合とかも出来ると思います。
完成したドームを一回りしたいと思います。
まずは、お手洗いです。
男性が右、女性が左です。
水洗式にこだわりました。
水は、レバーを回すと出るようになっています。
自動では止まらないので流したらレバーを戻して水を止めます。
水は、屋根の水槽に、貯めています。
ジャーー
「あーー、良い感じで流れます」
「ま、まな様これはなんですか」
「お手洗いですよ」
「水が、自由に出るのですか」
「そうです」
「やってもいいですか」
「どうぞ」
わたしが言い終わると同時に、キキちゃんとクーちゃんが水のレバーを開けたり閉めたりして、きゃっきゃ喜んでいます。
「飲んでもいいですか」
クーちゃんが便器の水を飲もうとしています。
「それはだめーー!!」
まあ、まだ新品のトイレだから良いのですけど、そこのはだめです。
次はVIP席です。
峠の茶屋を含めて、六席用意しました。
トイレと、流し台をつけて、試合場はガラス窓から一望出来るように用意しました。
売店用スペースもトイレ、流し台完備でこれも、六箇所造りました。
そして、選手控え室を客席の下に用意してあります。
ドームの色はヤパなので赤色を基本色に、全体を薄い赤で、所々濃い赤を配置してみました。
全体を回って、良い感じで使えそうなので、わたしは、いよいよあいちゃんの所へ、レッツゴーです。
「クーちゃん、キキちゃん、じゃあ、あいちゃんの所へ行きましょうか」
「はーーい」
二人とも良い返事です。
既にクロちゃん経由であいちゃんに迷惑にはならないか聞いてあります。
いつでもどうぞということなので、今すぐ向かいます。
「クーちゃん、クロちゃんに今から行くとあいちゃんに伝えてもらってください」
「では、行きましょう、あいちゃんのところへ」