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北の魔女  作者: 覧都
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初めてがいっぱい

伍イ団の五人はグエン商会の片隅に集まるともめだした。


「だってそういう訳には行かないわ」


「いいえ、いいえ、わたしがそうして貰ったのだから全員同じじゃないと受け取れません」


あいの頑固が始まっていた。こうなると絶対引き下がらないのだが、まだ伍イ団の四人は知らなかった。

もめている内容はお金の配分である。

あいは五等分を主張し、他の団員はいらないと主張していた。


長い押し問答の結果、五等分に決まった。


あいちゃんは見た目と違って頑固。

団員四人は疲れた表情で顔を見合わせていた。


「これから食事でもどうかしら、あいちゃんには聞きたいこともあるし」


レイが提案する。


「賛成」


四人が声を合わせる。全員乗りがいい。


「ガイさんとロイ君はいつもの店で席取りお願い」

「私たちはあいちゃんの服を見に古着屋へ行ってくるわ」


「了解」


あいが街を歩くと目立つ、すれ違う人が眉をしかめ、睨んでくる。

でも、今は誰も見てこない、あいは今、薄いピンクの飾り気のない服を着ている。貧民服以外の服は初めての経験である。

頬を赤くし、唇はキュッと結ばれている。

そうやって頑張っていないとにやけてしまうからだ。


あいがにやけない代わりに、レイとメイがにやけている。こんなに喜んでいる女の子を見ていれば、自然と嬉しくなるものだ。



食堂ベイ

イネスの市街地は、あえて言うなら中世ヨーロッパの町並みに近い。その街の外れにグエン商会があり、グエン商会の四軒隣にある食堂である。

扉を開けると、ガイとロイを三人は探した。

店の奥の目立たない席でガイとロイが手を上げている。

三人が席に着くとレイと、メイは、ガイとロイの足を蹴っている。

が、この男達は、足がたまたまぶつかった程度に思っている。


注文を終えると乾杯をした。

あいのコップには牛乳が満たされている。一口飲むと目をまんまるにしている。

初めてのむ牛乳は少し甘くてめちゃめちゃ美味しかった。

すぐに全部飲んでしまい、追加注文してもらった。


最初の料理は野菜を炒めた物と、肉と野菜のスープだった。

西洋風と中華風を合わせた様な料理で味はイマイチなのだが、腐っていない食べ物を口に出来ない貧民には極上の食べ物だった。

手づかみで一心不乱に、食べているあいを見て、伍イ団の他のメンバーは、これまでのあいの苦しい暮らしが想像できて、心が熱くなっていた。


レイはこの子は大事にしてあげないと、いけないと強く思うのだった。

目線をあいから他の団員に向けると、全員キラキラした目をしていた。容易に自分と同じ事を考えているとわかり、伍イ団は良い団だと、心から思った。


「ふーー」


あいはやっと顔を上げた。あいの顔は、飛び散った料理が一杯ついていてとても汚れていた。

レイはあいの顔を拭いてから、口を開いた。


「あいちゃんお腹は膨れたかしら」


あいは顔を真っ赤にして


「はい」


「じゃあお話ししてもいいかしら」


「はい」


「俺から先でいいかな」


ガイが言う。


「まずはお礼を言いたい、助けてくれてありがとう」

「あと、その服凄くにあっている」


あいは出て来た肉の塊を口に放り込んだばかりで、頬をぷくーと膨らましたまま、真っ赤になっている。


ロイが続く


「俺からも、助けてくれてありがとう」

「服が似合っている」


あいは益々赤くなっている。

レイはあいちゃんはチョロいなと思いながら会話に入り込む。


「魔法があんなに使えるとは思わなかったけど内緒だったの」


「違います、まだまともに使えないので話せなかっただけです」


「十分使えていると思ったけど」


「違うんです、魔力が思っているより出過ぎてしまうんです」

「例えるのなら、おおきなタライに水を一杯こぼれる寸前まで入れて、そこから一滴だけ水を別の器に入れるような感じです」


「一杯こぼれるわね」


「こんな状態で魔法を使えば怪我をさせてしまうと思って人前で使わないようにしていたのです」

「でも、おかげさまで大分使えるようになりました。明日からは狩りで力になれると思います」


「使える魔法を、聞いてもいいかしら」


「はい、得意なのは治癒と回復です。操作はまだ練習中ですが岩と水を動かす魔法、それを消したり出したりする魔法と凍結魔法です」

「わたしも、皆さんの得意なことを教えてほしいのですがいいですか」


「じゃあわたしから」


レイがいう。


「わたしもあいちゃんと同じで、回復と治癒が使えます。でも魔力が弱いので効果も弱いです」


「次は私ね」


メイが続く


「私は火魔法、治癒、回復です。魔力はそこそこあるのだけど、少しずつしか出せません」


「つぎは俺」


ガイが続ける。


「魔法はさっぱりだが、槍には自信がある」


「次は俺ね」


最後はロイ


「俺の魔力はまあまあ、あるらしいが、使えるのが親指の爪位の火だけだ、治癒や回復は

使い方がさっぱりわからん、今は剣の腕を磨いている」


「あいちゃんもう少し何か食べる?」


レイが聞く


「はい、でも、お土産もほしいです」

「弟と妹に持って行ってあげたいから」


「そうねじゃあ注文しましょうか」


レイはあいという人間が好きになっていた。



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