魔女の呪い ※挿絵有
広大な森林の中にポツンと城がある。
こんな森林に城があるのが不自然だが、この城にはそこに至る道がなく、不自然さを増していた。
「アド、アド」
その城から眷属を呼ぶ声がする。
ダダダーードタドタ
続いて、慌てて走る足音が聞こえる。その音が扉の前で止まると意外にも
ギーー
ゆっくり扉が開く。開いた扉から銀髪、猫耳少しつり目の少女が、頬をぷくっと膨らませ顔を真っ赤にして、扉を押している姿がのぞいた。
「北の魔女様お呼びですか」
「アドか、少し相談したいことがあってな」
ソファーに座った目つきの悪い、30歳前後の女が答えた。その髪は静電気を帯びた下敷きを頭の上に置いた様に浮き上がっていた。
「あの魔法を使おうと思う」
「絶対、だめですにゃ、若返りの魔法は禁止魔法として、北の魔女様が呪いをかけたではないですか」
「あっ、悪いさっき髪がぞわってなったとき、プスッとでてしまった。」
「そう言うのは、相談と言わないにゃ」
少し涙目でアドが呟く。
「まあしょうがないな、女は10代以外、ガキとばあさんだからな」
そう言い終わると、北の魔女の姿が一瞬で消えてしまった。
「わー、大変にゃ、問題あること言うだけいって消えてしまったにゃ。」
◇◇◇
日本の片田舎の高校の片隅。この学校は元神社の敷地に建てられたため,学校の一角に神社がある。その神社の境内で二人のセーラー服姿の女子高生が朝の掃除を終え茶話会を始めた。
「マナちゃん、今日は最強の量のバターと砂糖でクッキーを焼いてきたの」
「すごくおいしそう。」
「アイちゃん、私は最強のお抹茶、西尾のお抹茶を持ってきたわ」
アイと呼ばれた少女はおかっぱ、少しつり目の美少女、マナと呼ばれた少女はツインテのかわいい感じの少女だった。
「いただきまーす」
そう言うとマナは行儀悪く、クッキーを宙に浮かせ食べようとした。クッキーが口に入る瞬間マナの姿が消えてしまった。クッキーはそのまま地面に転がっていった。
「えっ、大変マナちゃんが消えちゃった」
「と、思ったらすぐに出て来た」
アイの前に、北の魔女と呼ばれていた女と同じ服を着た、マナの姿があった。
「ぎゃーー、痛い、痛いー」
叫びながらのたうち回るマナの服が、はだけていく、少し着ている服が大きい様だ。
「ハア、ハア、うー痛かった。死ぬ程痛かった。」
痛みの引いてきたマナは、クッキーの美味しそうな香りに気付く。
「んっ、食べ物か」
そう言うと、マナは落ちているクッキーを躊躇なく拾い口に入れてしまった。
「うっまあ」
「まなちゃん、落ちている物を拾って食べるとお腹壊すわよ。」
たまらず、アイがマナに声を掛ける。
「はー、魔女が腹を壊すかー、魔女は毒でも消化して栄養に出来るわー、それよりお前は何者じゃ、気安く声をかけおって。」
マナがアイを睨付ける。
「そっか、私がわからないなんてあなたは、マナちゃんと同じ姿だけど、マナちゃんじゃないのね。私はアイ、マナちゃんの友達よ」
「ふむ、わしの名前もマナじゃ。姿だけでなく名前も一緒か、だがお前の友達のマナではないのー」
マナは両手を広げ続ける
「よく聞けアイ、わしこそが世界の北半分を支配する北の魔女じゃ、どうじゃ驚いたか」
「あーはい、はい」
死んだ目でアイが答える。
「そんなことより、マナちゃん服が下がっていけないものが、ポロリしそうよ」
「ふむ、若返って色々縮んでしまった様じゃの」
「ホイ」
マナが指を動かすと、服が一瞬でアイと同じセーラー服に変わった。
「どうじゃ、アイと同じ服にしたぞ」
「エーー」
アイが驚く。
それを見てマナも驚く
「うお、なんじゃ、服がそんなに似合っておらんのか」
「服が一瞬で変ったー」
アイの驚きは、当然一瞬で服が変ったことに対してである。
「どうやって服を一瞬で変えたの」
「なんじゃそんなことに驚いておったのか、魔法に決まっておるではないか」
「しかし、この服はいいのー、軽いし動きやすい」
マナはクルクルと回転して見せた。
「ぎゃー、マナちゃんパンツ忘れてる」
「パンツとはなんじゃわからんのー」
知らない物は再現できないようである
アイは仕方がないので自分の物を見せ赤くなっていた。
「ねえ、マナちゃんこっちのマナちゃんはどうなっちゃったの」
新しいクッキーをもらい、口いっぱいに頬張っている北の魔女にアイは質問する
「そんなことより、この食べ物はなんて言うのじゃ」
「クッキーって言うのよ、でもねそんなことじゃないのよ、大切な友達のことだからね」
「ふうー」
お茶を飲みクッキーを流し込むと、北の魔女は口を開く。
「美味いのー、この飲み物はなんて言うのじゃ」
「美味しいでしょ、西尾のお抹茶って言うのよ、じゃなくて、マナちゃんのことを教えてほしいの」
「わしと入れ替わったのかもしれんのー」