SEASONS-5
「ね、そう言えば、保健室の文先生のとこでさ、お昼にみんな集まってるって」
「なに?」
「受験の健康管理とか、夜食のメニューとか色々教えてくれるって」
「太らないメニューとか?」
「でも、あの先生、ちょっとトロいよ」
「行こうよ」
「チャウは?」
「ん、あたし、まだ…」
「まだそんなに残ってるの。あんたも、トロいわね。じゃ、先に行ってるからね」
「ん」
「返事は、はい、よ」
「…はい」
「よくできました」
「あんまりいじめちゃだめよ」
「だって、かわいいんだもん」
ひとり取り残されて黙々とお弁当をたいらげた千春は自分の席に戻って、弁当箱を鞄に入れた。ふと、隣の深沢を見ると、ひとりぽつんとたたずんで本を読んでいる。小さな本。栞のピンクのリボンが映えている。ちょっと気になって、覗いてみても、小さな花柄のカバーで、何の本だか見当もつかない。身を乗り出して覗いてみると、はっと、気づいた深沢は身を竦めて本を抱きしめた。千春は、深沢のその仕種に驚いて照れ笑いをするしかなかった。千春以上に驚いた様子だった深沢も、相手が千春だとわかると緊張を解いた。
「あ…、ごめんね、驚かせて」
「…んん」
弱々しい声で応える深沢に、遠慮しながらも、このまま何も訊かないでいるのも不自然だと思い直した千春は、
「なに読んでたの」と、笑顔で訊ねた。
「……ん」
深沢は千春の笑顔に誘われるように、そっと、胸に抱いていた本を差し出した。おそるおそる千春はそれを手にとってみた。散文が綴られていた。