SEASONS-4
「だいたい、あんたは、バカ!」
箸を鼻先に突きつけながら、ひろ子は千春に向かって言い切った。
「そんなことないよ。こないだのテストもまぁまぁで、志望校もOKだって…」
「違うの!バカっていうのは、成績のことじゃないの。バカとは、すなわち、常識のないヤツ、状況判断のできないヤツ、分別のないヤツ、のことを言うの。だから、あんたは、バカ!」
「そんなことないよ…」
「まぁまぁ、ひろこちゃん、この子にそんな難しいこと言ったってわかるわけないわよ。ね、チャウ」
「……ん」
「だけど、ね、一時間目の、しかも、授業が始まってすぐに寝る?」
「あんまり、大声出すと、ご飯粒が飛ぶわよ」
「そうそう、楽しいお弁当の時間なんだから、もっと穏便に」
「でも、恥ずかしいったら、ないわよ。チャウの保護者としては」
「あんたいつから保護者になったの?」
「ずっとそうよ。知らなかったの?」
「知らないわよ。だって、チャウはみんなのものじゃない。ねえ」
「……んグ」
「ちょっと、この子、喉詰まらせてるんじゃない?」
「おとなしいと思ったら、早くお茶!」
目を白黒させて一気にお茶を飲み込んで、千春は大きな息をついた。
「ガキなんだか年寄りなんだかわかんないわね、ホントに」
「手がかかかるわ。保護者としては」
「まぁだ、言ってるの」
「大丈夫なの、チャウ」
「ン、だいじょうぶ」
「ちゃんと、よく噛まないから大きくなれないのよ」
「あぁ、びっくりした」
「なにを、呑気な」
「こっちがびっくりしたわよ」
「『中三女子が受験を苦に弁当窒息自殺』なんてね」
「お笑いよ、そんなの」
「恋に死にたいわ」
「無理無理、あんたじゃ」
「わかんないわよ。紅顔の美青年と恋に落ちて…」
「そりゃ、結婚サギだ」
「うるさい!」