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SEASONS-15

         *


 千春の手に日記が抱かれたまま、先生と深沢の母を見送った。ご飯はどうする、という母親の声にも生返事のまま階段を上がり、冷え冷えとした自室に入った。ベッドに腰掛け、ゆっくりとページを繰った。まだ3分の1ほどしか書かれていない日記帳は、数カ月前から始まっており、亡くなる3日前まで綴られていた。ゆっくりと読むわけでもなくページを繰っていくと、自分の名前が目に入った。

 それは、まだ千春が深沢を意識していないころ、9月の終わりごろの数学の時間のことだった。黒板の前に出て問題の解答をもたもたと時間を掛けて書いていた千春が、正解をもらってガッツポーズを取ったことが書かれていた。

 あぁ、自分はこんな事をしていたんだという驚きと、自分を見つめていた人がいたことの喜びを感じ、涙が零れてきた。

 なおもページを繰ると、ひろ子の名前も出てきた。体調が悪い深沢に代わって教室の掃除を頑張ってくれたという感謝の気持ちが記されていた。

 溝口先生の名前も見つけた。いつも優しく気づかっていてくれて、感謝していると。他の何人もの同級生の名前も出ていた。

 誰にも好意的な言葉が綴られている。それを読むと、いっそう涙が出てくる。


 涙を拭っていると、ページが繰れてしまい日にちが経ってしまった。はっと手で押さえて、その日から目を通すと、深沢と言葉を交わした日のことが綴られている。席替えしてから初めて近くになって、身近になったのはあの頃からだと思いながら、ゆっくりと読み進むと、千春が気づかなかった、体調不良の様子が書かれていた。


 ―――時々、授業中に苦しくなって息が詰まる―――


 あの時もそうだったんだろうか。ふと、声を掛けるのも気が引けるような深沢の横顔を思い出した。


 次のページをめくると、進路について話をした時のことが書かれていた。そうだそうだ、あの時初めてゆっくり話したんだと思いながら、文字を辿っていった。と、目が止まった。


 ―――高校になんか、行きたくないな。広瀬さんと一緒がいいな―――

 千春は慌てて読み返した。何が書かれていたんだろうか、自分でそれが自覚できなかった。その一文の前には、ただ、お互いの成績と進路の会話が綴られていただけだった。でも…。…どうして?



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