SEASONS-1
SEASONS
某月某日――晴、時々小雪。
例年より早く初雪を迎えた後、しばらくは寒風のみが漂う日々が続いていた。それでも日増しに寒さが増してきた頃、夜が明けてからちらちらと小雪が舞い始め、通学路の生徒たちも背を屈め言葉少なに歩いている。
寒い寒いと駆け込んでくる女の子たちの期待とは裏腹に、教室の中もまだ暖房はきいていなかった。
「何よ、これぇ」とかん高い声が響くとともに、一気に暖房の側に駆け寄っていったのは、中西ひろ子だった。
「ぜんっぜん、あったかくないじゃない。何、ケチってるのよ」
「もう、うるさいなぁ、ひろこは。毎日毎日、よく同じこと言えるわね」
かたまってお喋りをしていた一人の、森川愛子があきれたようにそう言った。
「ダメッ。あたしは寒いのは、ダメっなの。あたしが来るまでにあったかくしておいて欲しいものだわ、まったく」
「今度の席替えで廊下側になったらどうする?」
恵美が意地悪そうにそう訊いた。
「いやぁ、それはいや!冬は窓際がいいわ、あったかくて、日差しが柔らかくて、まるで天国か桃源郷のような気分で一日を過ごすの」
「寝てるんじゃないの?」
「ち、違うわよ。たぶん…」
「いいかげん、コート脱いだら?」
「いやっ。先生が来るまではこのままでいたいの…。だって、こんなにあたしを温かく包んでくれているんだもの…」
「なに雰囲気出してるのよ」
「カレシのいない女は悲しいね」
「あんたたちだっていないじゃない」
「当然よ。だってあたしたちは、♪悲しい受験生~、だもの」
「いやいや、もうこんな生活は」
笑い声が響く中、ひろ子がしなを作って、よよと泣き崩れる真似をしていると、後ろの扉からもこもことした固まりが入ってきた。