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奴隷にいっぱい食べて欲しいご主人様

今日はお留守番の日です。ご主人様はお出かけになりました。

昨日はずっと私を付きっきりで見てくださっていましたが流石に奴隷の私がずっとお世話してもらうわけにもいかないので仕方ないですね。

治ったら今度は私がご主人様のお世話をする番です。

今日はどうしましょう。いつも良くしてくださっているお方にお礼をしたいのですが…


奴隷がご主人様にできるお礼と言ったら体…


でも今はお礼をできるほど私の体は良い体ではありませんし、むしろガリガリすぎてご主人様の方が萎えてしまうかもしれません。

見たところではご主人様は冒険者でSランククエストをこなす高所得者ですしそれくらいなら娼館に行くか、あるいはナンパして……やだ、ご主人様ったらいやらしい。


ここは借家でそろそろ出る予定みたいですし、お掃除でピカピカにしたらどうでしょう。

まだ治ってないのに無理するなって言われそうですね。


ではお料理してみてはどうでしょう。ご主人様はみたところお料理はあまり得意ではなさそうですし、いつも簡単な料理か外食かテイクアウトかです。きっと手の込んだ料理は最近食べてないことでしょう。


ーーパカッ


冷凍庫を見ると昨日使った食材が少し残っています。


ーーピロリーン


メディのアホ毛が真上にピンと立つ。


そうです、この残り物の食材で夕飯を作ってみましょう。良い女は残り物でも殿方の疲れを癒せるおいしい料理を作ると聞きます。きっとここにある食材でおいしい料理が作れれば……えへ、えへへへへ。


そうと決まったら早速献立を考えましょう。えっと……これは残りがこれくらいだから……



*ーーーー*



これであらかたできました。後はこれを鍋に入れて少し蒸すだけです。割と食事スキルは汎用的でどこに行っても役に立つんですね。以前お仕えしていた富豪の奥様のところで味と出来上がり時間のタイミングに散々文句言われながらも作った経験がこんなところで生きるとは思いませんでした。あの頃は糞食らえだと思っていましたが役に立ったようです。後はご主人様が気に入ってくれるかどうかなのですが……



*ーーーー*



煮終わってから1時間が経ちました。今日は5時までに帰ってくるって言っておられましたのに……


お料理が冷めてしまいます。一度温め直しましょうか……



*ーーーー*



さらに1時間が経ちました。ご主人様ったら、いったい何をしてるんでしょう?流石に何度も火を入れ直しては味が変わってしまいます……

少し味見をしてみましょうか。


ーーパクッ


うん、まだあと一回なら火を通し直しても多分食べてもらえるレベルを保てる……と思いますがまた温め直してご主人様が帰ってこなければこの計画はおじゃんです。

それどころか食材を勝手に使ったいけない奴隷です。

何のお仕置きをされるのでしょうか……あわわわ、ご主人様が戻ってきてからもう一度温め直しましょうか。


ーーカチャカチャ、ガチャ、キイイィィ……


「ただいま」

「お帰りなさいませ、ご主人様!」

「なんか今日は元気がいいな。それに玄関まで迎えにきて……どうしたんだ?」

「どうしたんだじゃないです。遅いですよう……」

「ごめんごめん。ちょっと武器を見に行ってたんだけど新しいのがたくさん出てたから色々試しながら見てたんだ」

「そうだったのですね。奴隷のことは気にせずのんびり遊んで来てください」

「ごめんって。……うん?なんかイイ匂いがする」


流石ご主人様。気づかれてしまいました。


「実はご主人様に食べて欲しいものがあって……」

「え、なになに?」

「これです」


メディはタクトの顔をチラッと見る。

ご主人様はどんな反応を見せるのでしょうか。


「えっ、こんなにたくさん!これメディが作ったのか?」

「はい」

「これらに使う食材はどこからとってきたんだ?」

「全て残り物で」

「すごいな」

「あの、少し煮物が冷えてしまったので少し温めてもよろしいですか?」

「ああ、でもそんなに温めなくてもいいよ。俺猫舌だから」

「かしこまりました。ぬるめにいたします」


そうなんですね。ご主人様は猫舌、脳内にメモメモっと。

タクトはその他の食事を口に運ぶ。


「ど、どうですか…?」

「うん、おいしいよ!」


メディはタクトにに頭をくしゃくしゃ撫でられる。

作戦は成功です。やってみてよかった。


「煮物も丁度良い温度になりました。どうぞ召し上がってください」

「いただきまーす。味がちゃんと染み込んでておいしい!」

「3回も煮込みましたから」

「へー」


ご主人様がものすごい勢いで食べています。

お腹が空いていたんでしょうか。

確かにいつもより遅いですからそういうことかもしれません。


タクトはペロリと完食した。


「ふ〜、満腹満腹。ごちそうさま。作ってくれてありがとう。美味しかったよ」

「お粗末様です。それならよかったです。あ、デザート作るの忘れました」

「良いよ、そんなの。もうお腹いっぱいだし」

「あ、あの、もし良ければ……」

「何?」

「私を食べませんか!?」

「こらこら、まだ子供だろ」


ーーぺしっ


「あいた〜……」

「何言ってんだか」


おでこを叩かれてしまいました。ほんとですよね。私、何言ってんだか。


「そういえばもうご飯食べたの?」

「はい」

「ちゃんと食べた?」

「はい、冷凍してあった小魚をつまみ食いしました」

「後は?」

「何も。あ、料理の味見もしました」

「それは食べたうちに入らないだろ。じゃあ飯食いに行くか」

「ご主人様は?」

「俺はもう食べたし良いよ」

「じゃあ私も良いです。奴隷にあまり気を使わないでください」

「ああ、確かに気は使ってるかもしれないが安心しろ。弱ってる今だけだ。ちゃんと動けるようになったらビシバシ行くからな。でも食うもん食わんと治るものも治らなくなる。早く治すためにもちゃんと食べないとな」


ご主人様はなんだかんだ優しい。ちょっと素直じゃないところはあるけど。


「わかりました。お言葉に甘えさせていただきます」

「何が食べたい?」

「う〜ん、ステーキ」

「もう良いって言ってた割にはしっかり食べるんだな」


私たちはステーキ屋に行った。

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