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元魔王の将軍、村を救う

ーーゴーン、ゴーン、ゴーン


「なんだ?騒がしいな」

「行ってみよう!」


タクトとカミラは騒がしい方へ走る。


「敵襲!敵襲ー!」

「敵が門の前で待ち構えています!もしかしたら柵を破ってくるかもしれません!」

「また殺され作物は荒らされ……もう戦争はたくさんだ!」


俺たちが駆けつけた頃には周りは大騒ぎになっていた。

タクトは村人に話を聞いてみる。


「何があったんですか?」

「また隣のジャマデス王国がここを占領しにきたんですよ」

「ジャマデス王国……西ら辺にありますね」


俺は地図を見ながら話す。


「そうなんですよ。それでガナール帝国の領地がここだけ見事に窪んでるでしょう?そここそががこの村、アイライ村です」

「じゃあこの村は丁度ジャマデス王国とガナール帝国の領地の境目なのか」

「そうなんです!だから毎回ジャマデス王国とガナール帝国との間で争いが起こるんです」

「なるほど。それで今回ジャマデス王国がまた攻めに来たんですね?」

「はい。ここを占領するとガナール城下町に近いのでわざわざ山を越えて襲ってくるんですよ」

「状況はある程度把握しました。もしこいつらを村の中へ入れるとどうなるんですか?」

「私たちの食料は略奪します。それにここにいる兵士たちとは争いになります。逆らう奴は皆殺しです。家屋も荒らされますし、畑も踏み荒らされるし……」

「わかりました。これからどうするんでしょう?」

「村長を呼ぶしかないでしょうが、きっと何も抵抗できず荒らされてしまうでしょう……」


この世の終わりのような顔をしている村人。

それを聞いていたカミラが一言言った。


「許せんな」


しかし村人はそれをなだめる。


「巨人のお姉さん、あなたはモンスターなのかなんなのか知らないが変な気は起こさないほうがいい。何人も抵抗した村でも腕の立つ奴はたくさんいたが全員斬り殺されてしまった。もうこうなった以上は見ているしかないんですよ」


完全に村人は諦めモードだった。

しかしカミラはちっともそんなつもりはないらしく、逆に1人燃え出した。


「……クッソ嫌いなんだよ、見ているだけで自分の運命変える気のない奴ら!」


そう叫んだと同時に体の周りから黒いオーラが出てくる。


「あ、あんた、まさか本当に……ひ、ひえええぇぇぇ!」


村人は怯えた様子でカミラを見て逃げ出してしまった。


しばらくすると村長がきた。

村長は皆に伝わるように大きな声で言う。


「皆の者!よく聞いてほしい。これからジャマデス王国の軍隊を村へ入れる。入ってきたら手をあげてその場に動かないように!それから何があっても抵抗しないように!とにかくジャマデス王国の指示に従うように!いいな?では門を開けるぞ」


皆俯いている。

もう自分たちの運命を諦めたのだろうか?

誰も何も言わない。


そんな沈黙の中、カミラは1人声を上げた。


「おい、お前ら!そんなところで俯いてないで何か言いてえ奴がいたら言え!このまま本当に略奪されていいのかよ!」


またしばらく沈黙が流れるが村人たちはカミラに向かって悲痛な叫びを上げる。


「じゃあ、だからってここで何か言ったところで何になるのよ!このまま略奪されていいのかですって!?良いわけないでしょ!?でもどうしようもないことは私たちみんなわかってるのよ!あなたは叫んだところで何ができるって言うの!?抵抗したら殺されるっていうのに」


その言葉を皮切りに至る所で非難の声が上がる。


「そうだそうだ!無責任だぞ!」

「何もできないくせに偉そうな!」

「感情的にものを言う暇があるなら俺らが納得するような奴らを撃退する作戦の一つでも持ってこい!」


「うるせえ!!」


カミラは恫喝する。


「お前らが怯えてできないのなら私がやってやる。指を加えてよく見ておけ」


そう言ってカミラは柵を飛び越え村の外に飛び出して敵陣に向けてありったけの声で叫ぶ。


「おい、この軍の大将!一番この中で強い奴と一騎討ちしたい!誰か私と打ち合える奴はいるか!?」


敵の陣営にいるにいる奴らは顔を見合わせている。


「な、なんだ?村人が出てきた?」

「いや、にしては鎧がしっかりしているな。新しいガナール帝国の戦闘服か?」

「それにしても一騎討ちを挑むとは勇敢な奴だな」

「周りから黒いオーラが出ているが……本当に人間なのか?」


村人たちはもう完全に諦めていた。


「もう彼女は死んだも同然だな」

「もうダメよ。あんな風に挑んで行った人はたくさんいたけど全員やられちゃったわ」


真ん中から馬に乗り、ゴージャスな服を着た騎兵が出てきた。ようやく大将が出てきたらしい。


「そなたが大将か?」

「いかにも。ジャマデス王国軍総大将のジャーマックだ。それで、君が俺と何をしたいって?」

「一騎討ちがしたい」


そう言われたジャーマックは愉快そうに笑い出す。


「プワーッハッハ!みんな、聞いたか?こいつは村の人間が国の兵士に、しかも一番強いやつに勝てるらしいぞ!さらに馬も持ってないくせに一騎討ちだとよ!」


ーーはっはっはははははは!


敵陣営の中で笑いが起きる。


しかしカミラは陰湿な精神攻撃には全く動じなかった。


「馬ならあるぞ。モニョモニョ」


何やら唱え始めたと思えば地面が黒く発光する。


「出でよ、召喚獣!黒竜馬!」


唱え終わると地面から巨大な馬が出てきた。

カミラ用の馬なのだろう、体がとてもでかい。

カミラが乗っても馬と彼女の大きさの比率には全く違和感がなかった。


それを見たジャーマックの後ろにいた副将は少し驚いたようだ。


「お気をつけください、ジャーマック様。あれは召喚術です。高度な魔術のはずですが……どうして村人が発動できるんでしょうか?」

「分からんな。だが俺が奴を倒すことに変わりはない!」


ジャーマックは前に出て剣を抜く。


「俺に逆らった奴は皆殺しだ。死んでもらおう」

「無惨な残虐非道っぷり、許さん!」


ジャーマックは馬に地を蹴らせ、カミラに向かって突進する。

そのままジャーマックはカミラに斬りかかった。


「死ね!」

「生きる!」


ーーキン!


剣と薙刀が交わったと思った瞬間、剣が宙に舞っていた。


「あ?」


ジャーマックは間抜けな声を出したと同時に後ろで副将が叫ぶ。


「ジャーマック様、上です!」

「ん?」


ーーザクッ


ジャーマックが上を向いた瞬間、顔に剣がぐっさりと刺さった。


ーーぐああああああぁぁ!


大きな断末魔の叫び声が村中に響き渡った。


「ふん、自業自得だな」


それを見たカミラは鼻で笑う。


敵陣営は静まり返っていた。

副将が震え出す。

「あ、悪夢だ……まさかジャーマック様がやられるとは……!」

「私の名前はカミラだ!お前らの総大将は倒された!死にたい奴はかかってこい!」

「た、退却だー!」


敵は全員尻尾を巻いて逃げてしまった。


「す、スゲェーー!!やりやがった!!」

「まさか本当に追っ払うとは!」

「あ、ありがとう、カミラさん!」

「カミラさん……あなたの名前は決して忘れません」


敵が退却するや否やカミラは村人たちに囲まれていた。

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