ダンジョン攻略(上)
タクトたちはある村に滞在していた。
「今日はダンジョンに潜ろうと思う」
「はい。でもなぜダンジョンに潜るんですか?」
「最近魔王が目覚めたって話は聞いたことあると思う。それにより魔物が活性化しているだけでなく、ダンジョンが至る所にできていて、そこを拠点として魔物が地上に出てくるってことがよくあるらしい」
「そうだったんですね。そうなると地上に魔物が増えて大変ですね」
「ああ。それにダンジョンには高ランクモンスターがいるだろ?以前は安全と言われていた場所でもダンジョンが作られると必ずしも安全とは言えなくなるんだ。そうなると物流が滞る」
「確かに、それは困りますね」
「そこで依頼が来た。この辺りのFランク地帯に発生したダンジョンを駆逐して欲しいとね。入り口は元々森にあったらしいんだがFランク地帯にも後から新しく入り口が作られたらしい。中の作りは相当巨大だと聞いている」
「わかりました。でもどこから持ってきたんですか?そんな依頼。この村にはギルドもなさそうですし」
「ああ、それは」
俺がアイリを見る。
「私が紹介したんですよ。お金が全然足りないって言うから」
タクトは馬車を買ったことによりスッテンテンになっていた。
「出費多かったですしね」
「ああ。ちょっと金欠なんだ」
「どこでその案件を手に入れたんですか?」
メディがアイリに聞く。
「前回宿泊した街でね。依頼主はガナール商人会という団体で各地の色んなギルドに依頼しているらしいわ。でもわざわざ危険なSランクのクエストをやる人はなかなかいなくて困ってるみたい」
「ではクエストクリアしたらまた前の街に戻るんですか?」
「いいえ、今は依頼主のトップがこの村に滞在してるって聞いたのよ。もう昨日私が会ってきて話はつけてきたわ」
「そうだったんですね」
「時間はかかりそうだし難易度は高いけど報酬も弾むわ。加えてギルドに支払う手数料もないし、依頼金丸ごと入るわよ!」
メディの目がキラキラする。
いつも頑張ってくれてるし終わったら何かプレゼントしようかな。
「これが終わったら何か好きなもの買ってやるよ。なんか欲しいものあるか?」
「魔導書が欲しいです!」
「はは、そのくらいなら幾らでも買ってやるよ」
「やった!ありがとうございます!」
「ふふふ、それじゃあそろそろみんなで潜りに行きましょうか」
当然のようにアイリがそう言ったのでタクトは質問する。
「あの、アイリさんも潜るんですか?」
「ええ、そのつもりでしたけど……ダメだったかしら?」
「アイリさん戦えるんですか?」
「もちろん!これでも受付嬢やる前は冒険者だったんですからね。魔法学校卒業してますし」
「一応Sランク案件ですけど……メディはレベル上げのために連れていくとしてもアイリさんがくるのは危険が増えるだけだと思います」
「こう見えても私はAランクです。ソロならSランクは必須ですけどパーティ組むならAランクだけでSランククエストを攻略することも珍しくはないはずですよ」
「そうだったんですか」
こう見えてギルマスと同レベルの強さだったとは……。人は分からんものだな。
「じゃあ早速パーティ組みましょうか」
「ええ」
パーティになる儀式をした後にアイリのステータスを見る。
Lv 80
名前 アイリス・クラネ
年齢 23歳
性別 女
種族 人
職業 受付嬢
ランク A
スキル
目利き(固有)【 L v 18】
魔導書装備時MP節約【 L v 20】
回復魔法補助【 L v 24】
MPリジェネ【 L v 24】
バリバリの回復術師でした。
これなら心配なさそうだな。
「こ、こんなに強かったんですね」
「ふふん、もっと驚いてもいいですよ」
「でも年上って1歳だけだったんですね」
「そ、それでも年上は年上でしょう?何?あなたには私がババアに見えるわけ?」
「い、いや、そういうわけじゃ……」
そんなやりとりをしながらアイリはメディのステータスを見る。
「あら?メディちゃんこの前Fランクじゃなかったかしら……?」
Lv 35
名前 メディ
年齢 13歳
性別 女
種族 人
職業 奴隷
ランク D
スキル
魔法速習(固有)【 L v 7】
特徴
虚弱体質
「はい、初めて会った時は」
「そんな、あり得ない!この数週間でランクが2段階も上がるなんて!」
「高ランクモンスターを相手にするとたくさん経験値が入るので」
彼女は彼女で高ランクモンスターを倒しまくったため、レベルが相当上がっていた。
1年でレベルが3~4くらい上がるのが平均だからアイリが驚くのも無理はない。
「ってかタクト君のこれ何!?」
Lv 999
名前 レヴィン・タクト
年齢 22歳
性別 男
種族 人
職業 魔術師
ランク SS
スキル
256倍増(固有) 【Lv8】
変身(固有)【Lv999】
倍増は凄まじいです。
「ハハハ、カンストしちゃいました」
「ハハハじゃないですよ!こんなステータス見たことない!えっと〜、あれは確か伝説の英雄で最強だった人、その人でもレベル530が限界だったんですよ!」
「まあでもレベルはだいたい300あたりで得意なパラメータが、450に到達すれば全てのパラメータがカンストするって言いますし」
そう、レベルは一定の値に達すると相当ステータスの初期値が低くなければあげてもあまり効果がなくなるのだ。
「はあ……なんか何もしてないのに疲れました」
「お疲れのところ悪いですがそろそろいきますよ」
「でもこれだけ強ければ戦闘で心強いですね。ではそろそろ攻略しに行きましょうか」
*ーーーー*
「爆裂脚!」
ーーギャギャギャギャース!
「波動拳!」
ーーピゲッ!
素手でどんどんモンスターたちを蹴散らしていく。
受付嬢は回復術師かと思いきや、どうやら武闘家だったようです。
アイリはメディにドヤ顔で感想を聞く。
「どう?」
「すごいですね!素手で戦う人初めて見ました」
「祖父に鍛えられてね」
「おじいさん武闘家だったんですか?」
「ええ、だから私も幼い頃は武闘家の訓練を積んでたのよ。まあでも本格的にはやったことないからパーティでチームとして戦うときにはよく回復役をやるけど」
「へ〜」
俺たちは何事もなく進んでいく。
おっ、あそこに下に続く階段があるな。
「あそこに階段がありますね。降りましょうか」
俺たちは下の階段へ降りていく。
ーーウオオオォォォ……
下の階に降りて早々、俺たちはモンスターに出会した。
屍の騎士なら見たことはあるがこの色、この紋章は見たことがなかった。
「では早速倒しましょうか」
そう言ってアイリは素早く騎士の懐に飛び込んで拳を突き出す。
「ふっ!」
ーーガン!
盾でガードされてしまう。
騎士は剣を横に大振りする。
ーーブオオォォン!
アイリはすかさず上に飛び、技を繰り出す。
「くらえ、天空カカト落とし!」
ーーバキン!
いつもならここで頭が潰れて終わりだ。だが今回は騎士のカブトに命中したものの弾き返されてしまう。
「くっ……!堅い!」
好機と思ったのか、騎士は盾でそのまま体当たりした。
「きゃっーー」
アイリの体勢が崩れる。騎士は剣を振りかぶってアイリに襲いかかる。
ーーガッ
しかし次の瞬間、騎士は横に吹き飛んでいた。
ーーズザァァァ
騎士は地面を滑っていく。
代わりにアイリの目の前に背中を見せて立っていたのはタクトだった。
「タクト君……ありがとう」
「相手を確認しないまま突っ込むのは危ないですよ」
「でもあれは屍の騎士じゃ……」
「あれは屍の騎士ではありません。Sランクの別の何かです。あの紋章を見てください」
「あ……本当ですね。よく気がつきましたね」
「戦闘で相手を見るのは基本ですから」
確かに普通は見間違えやすいかもしれない。しかしタクトはFランク時代に散々苦労した経験からまず相手を見る癖がついていた。
「アイリさんは下がっていてください。俺が倒しますから」
「わかりました。気をつけてくださいね」
そんなことを話している間にどうやら向こうも次の攻撃の準備ができたようだ。
ーーダッダッダッ
こちらに剣を構えて突進してくる。
俺も騎士に向かって突っ込む。
ーーオオオォォォ!
「はああぁぁぁ!」
お互い雄叫びを上げて真正面から斬り合った。
ーーズバッ
胴体から真っ二つに切れる。
ーーオ……オオオォォォ………ドサッ
「悪いな、この世界ではステータスがモノを言うんだ」
騎士は力なく倒れた。