夢見心地
「今日はここまでだな」
「はい、ではここで馬車を止めましょう」
タクトたちは馬車に揺られながら帝国に行く道を辿っていた。すっかり日が落ちてしまったので馬車を止めて夕食の支度の準備を始める。
そこには受付のお姉さんのアイリスもいた。本人がアイリでいいと言うので親しみも込めてそう呼んでいる。
メディとアイリが支度をしながら話している。
「今日も野宿かー……そろそろお風呂に入りたいなー……」
「頑張ってください、明日は旅路の途中に村があるので泊まれそうですよ」
「ホント?」
「本当です。今が大体ここら辺でもう少し北に進むとあります。一日にこのくらい進みますからきっと昼頃には着くでしょう」
メディが地図をだして説明している。
「良かった〜、もう4日も入ってないんだもの、蒸れてきちゃって」
「私も早くお湯に浸かりたいです」
「ね〜。さてと、それじゃ食材を用意しましょうか」
2人は馬車の中を調理室にしていく。
「はい。では私は肉を捌きますね」
「じゃあ私は野菜を切るわ」
その言葉を最後にしばらく無言が続く。
「よし、一角兎の肉を捌けました」
「綺麗に捌いたわね。どこかで以前捌いたことがあると見た」
「ありがとうございます。前のご主人様のところで散々調理はやりましたから」
「前のご主人様はどんな人だったの?」
「……とても厳しいお方でした」
メディの声が沈む。
アイリも何か察したらしく、そっかと言って軽く流す。
「これであとは肉を細かく切りわけるだけです」
「私は野菜切り終わったから手伝うね」
「ありがとうございます」
「タクト君うまく暖炉組み立てれたかな?」
「いつもやってるので多分大丈夫ですよ」
また2人とも無言になる。
「よし、できたわ!あとは鍋に入れるだけね」
「はい。ご主人様のところに持っていきましょうか」
*ーーーー*
ーークークー
左でメディがこっちを向いて寝ている。最初の頃は戸惑って眠れない時もあったがもう慣れた。そういえば膝枕してくれたこともあったっけ?あの時はまだかなり傷心してて夜眠れなかったんだよな。
ーーーー
『ご主人様、起きてますか?』
『ああ』
『眠れないんですか?』
『ああ』
『どうしたら眠れそうですか?』
彼女は奴隷だから何を言ってもいいんだよな。
『じゃあ、膝枕して欲しい』
『かしこまりました』
彼女の膝に頭を乗せると違う意味で眠れそうになかった。しかし柔らかくなった太ももはとても気持ち良くて、彼女に優しく髪を撫でられるのがとても心地良くて……結局寝た。
ーーーー
それからメディが一緒にいると安心して眠れるようになったんだよな。
「クークー」
気持ち良さそうに眠りやがって。
優しくちょん、と鼻の先をつついてみる。
「んん、んにゃんにゃ。クークー」
少し顔をしかめたがすぐに気持ち良さそうな顔になった。
ーースースー
しかし今は右にもいる。
まあ馬車が狭いから仕方ないんだけど。
そして今眠れないのはこれについている2つの大きな山のようなものに過剰反応してしまっているからだ。
ーーボイ〜ン
デカい。デカすぎる。
受付の時のフリルのついた服では注意が分散されてそれほど胸が強調されることはなかった。
しかし今は夏。薄着で谷間がもろに見えてしまう。
一度見ると目がそこからなかなか離れてくれない。
不覚にも勃ってしまった。
くそ、鎮まれ、俺の息子!
2つのお山が邪魔をして眠れない。
こんな状況にもかかわらず、更に状況は悪化してしまう。
「ご主人様ぁ〜、んにゃんにゃ」
メディがタクトの左腕に抱きつく。発育の良い育ち盛りの胸が当たる。
「タクト君〜……」
アイリもタクトの右腕に抱きつく。発育しきったはち切れんばかりの爆乳が当たる。
両方から首筋に息が吹きかかる。
寝息の音も更に大きくなった。
息子も更に大きくなった。眠れない。
どうすれば眠れるかずっと考えた。
ずっと考え続けて何分か何時間か、時間の流れが分からなくなった頃につい好奇心から大人の遊びを思いついてしまう。
左腕を左右にほんの少し動かすと、微妙に胸が揺れる。
「ん?んん……クークー」
左耳にメディの声が寝息とともに届く。
お、おお!これはいいぞ!どれ、アイリさんにも……
右腕を少し揺すると爆乳が揺れて弾力が伝わってくる。
「ふんっ…んっ……スースー」
アイリのお姉さん声が寝息とともに届く。
こちらも弾力といい声といい、やはり思った通りイイ!では同時に……
左、右腕を同時に揺すってみる。
「ん、んん……んん……クークー」
「はんっ……んん……スースー」
す、素晴らしい!このデュエット!
タクトは2人が起きないように揺らしては時間を置きまた揺らしては時間を置き……を繰り返した。
ーーチュンチュン
はっ!もう朝か!
「ん、んん?ふあああぁぁぁ………お目覚めですか?ご主人様。今日はお早いですね」
「あ、ああ。まあたまにはな」
「う〜ん、はっ。あ、おはようございます、タクト君。メディちゃん」
「おはようございます、アイリさん」
結局一睡もできなかった。
朝になって起き上がろうとすると途端に体が重く感じる。
「ご主人様、目の下のクマがすごいですよ。ちゃんと眠れましたか?」
「あ、ああ。でもちょっと寝足りないかな……」
「そうですか。ならゆっくり休んでいてください。私は朝食作ってきますので」
「そうか、ありがとう」
正直ありがたい。流石にオールしたままでの戦闘はキツい。
「私も手伝うよ、メディちゃん」
「ありがとうございます」
2人は朝食を作りにいく。
「アイリさんはちゃんと眠れましたか?」
「ええ。でもちょっと変な夢を見たわ」
「どんな?」
「なんかずっと初期微動が続いて2つのお山が揺れる夢」
「あ、それ私も見ました。2つの成層火山がずっと揺れてました」
「私はドーム型の山がずっと揺れてたわ」
「でも不思議とその山はこれから大きくなりそうでした」
「それは奇妙ね。私の山はこれからも変わりなさそうだったわ」
2人は奇妙な夢での謎の共通点に驚きながら朝食を作った。