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受付嬢の大抜擢

Sランククエスト、『キングオークを倒せ!』


「今回のは相当でかい話だ。オークの群れにここら一帯の農地が全部荒らされてしまったらしい。みんな、オークはAランク指定のモンスターだ。各パーティはそれぞれ一匹ずつオークを相手するように。危ないと思ったらすぐに引け、いいな?」


ギルマスのゴッチョが皆の前で話している。


「それからキングオークもいるとの情報もある。タクトと俺らはキングオークを相手にする。Sランクボスモンスターだ。こちらもしっかり連携をとっていくぞ。タクトも頼んだぞ」

「ああ」

「あと、メディちゃんはどうする?流石に討伐に加わるのは危険だと思うぞ」

「最近メディも強くなったから大丈夫だ。でも一応俺のそばからは離れないってことで。いいよな、メディ」

「はい、ご主人様」


オーク程度ならメディがレベル上げするとき一緒に行ってよく倒している。別に心配いらないはずだ。


最後にゴッチョは号令をかける。


「よし、ではこれよりオークの群れに突撃する。全部で20匹だということだ。合図をしたら一気に突撃しろ。一匹ずつ前から確実に倒していくぞ!では作戦開始!」


ゴッチョはこっちへ戻ってくる。


「じゃ、よろしくな。相棒」

「俺の相棒はメディなんでな」

「そう連れないこと言うなよ」


俺らは森の中を進んでいく。するとーー


ーーガー、ゴー、ガー、ゴー


オークたちが寝ていた。


「こりゃラッキーだ。みんな、オークたちを取り囲んでできるだけ静かに素早く倒すぞ」


みんなは頷き、円形に布陣してオークたちを取り囲む。しかし人数が多いな。パーティの塊の数を数えてみると俺らを除いて10いる。オークたちの半分か……よく集まったとは思うが勝てるかどうかは敵の数を素早く減らせるかどうかにかかってるな。


「タクトも一人じゃきついだろうし一緒に来るだろ?」

「いや、俺らが組むのはボス戦だけでいいと思うぞ。オークくらいいつも一人で猟ってるしな」

「そんな強がんなって」

「いやいや、マジマジ」


ゴッチョが心配そうな顔をして俺の肩に手を乗せる。


「まあお前さんが強いのはよく知っているが……無理すんなよ。じゃあ俺らは右のオークやるぞ。俺とカイトがまず突撃する。俺らが最初斬りつけるのと同時に攻撃魔法を着弾させろ。一気に倒すぞ」

「はい」


ゴッチョは自分のパーティメンバーたちに指示を出す。

俺もメディと目標を確認する。


「俺らは左だな。メディも俺から離れるなよ」

「承知いたしました」


ゴッチョは大きな仕草で突撃の合図を出す。

それを見たみんなは一気に突撃した。


俺も突撃してオークを一体、真っ二つに切る。


「な、タクトのやつオークを一撃で……!俺たちもやるぞ!」


全員でオークを攻撃していくがオークはHPが高く、すぐには倒せないため、攻撃されたオークたちが雄叫びを上げる。


ーーオオオオォォォォン!!


それにより次々とオークたちが気がついたように起き上がる。


「落ち着け!慌てるな!一匹ずつ確実に倒せ!」


ゴッチョが声を上げてみんなの正気を保とうとした。


しかし現実はそう簡単にいくものではない。

オークキングが起き上がったようだ。


「くっ……!起き上がるのが早い……!」


それに加えて各パーティたちは悲鳴を上げていた。


「オークが3体同時に襲ってくる!耐えられない!援護してくれ!」

「こっちも回復が追いつかない!」


数的にはよく集めたとは思うが、こちらの方が不利だ。

相当みんなピンチになっているようだった。

悩んでいる暇はなさそうだ。


「ゴッチョ!キングオークの相手を俺抜きでできるか!?」

「倒すのは無理だが少しの間持ち堪えるくらいはできるぞ!」

「俺はピンチになってるところからオークを倒してくる!それまでギルマスパーティだけで何とか持ち堪えてくれ!」

「わかった!任せろ!」


ゴッチョたちは最初の一匹を倒し、キングオークの前へ出ていき猛攻を仕掛けた。


「フリーズブリザード!」

「ハードアイシクル!」

「フロストスラッシャー!」

「お前の相手は俺だ!やれるもんならやってみろ!」


うまくキングオークの注目を集めたようだ。


「よし、俺らもオークたちを一掃するぞ!ちゃんとついてこいよ、メディ」

「はい、ご主人様!」

「メディが魔法で注意を分散させろ。その後俺が一体ずつ倒していく。危ないと思ったらすぐ下がるんだ、いいな?」

「了解しました、ご主人様」


俺がオークに囲まれているパーティーのもとへ駆ける。


「ファイアショット!ファイアショット!ファイアショット!」


後ろからメディの援護の炎魔法が飛んでくる。


ーーグオオオォォ!


魔法が当たったオークたちは苦しそうな呻き声を上げてこちらを睨む。


「よし、うまく引きつけたな」


ーードシッドシッドシッ


オークたちがこちらに向かってくる。

さて、倒しますか。


「はあっ!」


巨体のオークたちを一撃のもとに沈めていく。


ーースパッ


「一つ!」


ーースパッ


「二つ!」


ーースパッ


「三つ!よし、メディ!今度は向こうを駆逐するぞ!」

「はい!ご主人様!」


俺たちは救出した後にまたすぐに別のパーティの救出に向かう。

救出された人たちは呆然としていた。


「す、すげえ……。オークをあんなにあっさり一撃で……」

「斬られたところが真っ二つだ。タクトさんにとっちゃ野菜切るようなもんなのかな」

「やっぱただもんじゃないな」


ーースパッ!スパッ!スパッ!スパッ!


「四つ!五つ!六つ!七つ!」


囲まれていたパーティを全部救出した。

オークの残りは……5匹か。

ちょうどその時離れた場所でキングオークを引き付けていたゴッチョが悲鳴を上げる。


「タクト!もうこれ以上持ち堪えられん!こっちに参加してくれ!」

「ああ、わかった!」


俺はみんなに大声をあげて指示を出す。


「みんな!残りの5匹はなるべく注意を分散させろ!パーティ対オークの1対1に持ち込めるように上手く注意を各々引き付けてくれ!どこかのパーティが集中攻撃を受けないように。できるな!?」


ーーおお!


みんなの返事がこだまする。


「メディ、ゴッチョたちを助けにいくぞ!」

「はい!」


ゴッチョたちはかなり苦戦しているようだった。

俺たちはゴッチョと合流する。


「まずいな、左足が動かん」


ゴッチョは左足に攻撃をまともに喰らったのか動かない棒のようになっている。

俺とメディがゴッチョとキングオークとの間に入る。


「一旦引いて治療してもらってください!」

「俺たちがその間は何とかする」

「すまねぇ……。あとは頼んだぞ」


ゴッチョは一旦引く。


「大丈夫ですか?」

「問題ないとは言えんな。こんな攻撃をくらったのは久しぶりだ」


ゴッチョはパーティ仲間の治療を受けた。


ーーオオオオォォォォ!


しかしそんな間も敵は待ってくれない。

キングオークは大きな咆哮をあげてこちらに棍棒を振り下ろしてくる。


ーーガアアン!


「攻撃を受け止めた!?」

「さすがSランク冒険者」


ーーギリギリギリ


オークの体重がのしかかる。


「受け止めたは良いものの、Sランクボスモンスターだけあって攻撃が重いな」


このままでは振り払えそうにない。


「メディ!背後から敵にスタンを頼む!その後スイッチして退避しろ!」

「了解しました!」


俺が敵の棍棒と火花を散らしながら力比べをしている間にメディはキングオークの背後に回り込む。

キングオークも気づいたようで、力比べをやめてメディの方を向くが、彼女は構わずスタン技を繰り出す。


「スタニングショック!」


ーーギャ!?


キングオークが一瞬硬直する。

その隙を利用してタクトとメディが入れ替わる。


『スイッチ!』

「退避します!」

「任せろ。くらえ、18連撃……」


静かに剣に意識を集中させる。


剣技(ソードスキル)、スターダストアクセラレータ!」


ーーズババババババババババ!


「はあああああああああ!!」


もっと早く、敵が反応すらできないくらいに......




ーーボトボトボト


斬り終わった頃、キングオークは角切り肉と化していた。


ーーうおおおおおおお!!


「勝った!やったぁ!」

「死ぬかと思ったぜ、まったく」

「ああ、危ないところだった」

「でもこれであとはオークだけよね」

「そうね。じゃあ一応私たちも援護に行きますか」


メディが駆け寄ってくる。


「ご主人様ぁ〜、やりましたね!」

「ああ」

「すごいですね、あの剣技。どこで覚えたんですか?」

「ずっと前の学校でね。使えるようになったのは最近だけどな」

「Sランクのボスがバラバラでした」

「ハハハ、まあ俺もSランクだしな。それにメディの助けがあったからあの連撃を放つ余裕が出来たんだ」

「いえ、私はそんなに大きなことは……」

「いやいや、初めてのSランククエストとは思えない良い動きだったよ。スタンもよく怖気付かずSランクボスモンスターに向かって放てたと思う」

「ありがとうございます」


タクトが頭を撫でるとメディは抱きついてくる。

タクトもメディを抱き返した。


ーーワーワー


向こうでも騒いで喜んでいる。どうやら勝ったようだ。

ふう、何とか犠牲者を出さずに終わらせることができたか。



*ーーーー*



「皆さん、お疲れ様でした!今日も飲んで勝利の気分に酔いしれましょう!乾杯!」


『カンパーイ!』


今日オークたちの討伐へ行ったみんなで飲んでいる。

タクトもゴッチョたちのところで飲んでいた。


「タクト!今日はお手柄だったな!お前のおかげだ!」


ゴッチョに背中をバン!と叩かれる。


「あんな必殺技があるなんてチートだろ!どこに隠し持ってたんだよ!」

「今回のクエストはタクト様様って感じね」

「私たち必要なかったんじゃないかしら」

「ほら、飲め飲め。今日くらい飲んだくれても、さすがの受付の姉ちゃんも何も言いやせんよ」


俺のコップになみなみのビールが注がれる。


気がつくと後ろに受付のこの前一緒に踊ったお姉さんがいた。お姉さんはタクトたちが座ってるテーブルの席に座って会話に入ってくる。


「なになに、タクト君お手柄だったんですか?」

「おう、スターなんちゃらっつーソードスキルでSランクボスを一発で倒してしまった」

「さすがタクト君ですね!私もタクト君なら絶対大活躍すると思っていました」

「さっきからタクト”君”って何なの?タクトのことばっか気にしてるし。君たち付き合ってるわけ?」

「そう言えば前一緒に踊ってたしね〜」


ゴッチョのパーティの女メンバー2人がニヤニヤしながら突っ込む。


「べ、別に関係ないです。それに今はタクト君の話題だったじゃないですか」

「前はタクト”さん”だったのに。受付嬢はギルド内の冒険者にさん付けする義務があったんじゃなかったっけ?」

「そ、そこは……私が年上だから”君”呼びでもいいんじゃないですか?ねえ、タクト君」


こっちに訴えるような視線を向ける。

正直どっちでもいいです。はい。


「まあ別に君でも構わないっすよ」

「ほうら、別に構わないですって」

「いや、私たちが聴きたかったのはタクトと付き合ってるかどうかなんだけど」

「だから付き合ってません!」

「顔赤い〜」

「怪し〜」


お姉さんは顔を赤くしながらむきになって否定していた。

ゴッチョが間に入る。


「まあまあ、本人も否定していることだし。でも確実に好きだよな」

「好きでもありませんから。ゴッチョさんまで変なこと言わないでください」

「はっはっは!まあお姉さんも飲め。そうしたらきっと自分に素直になることができるぞ」

「だから……もう、今回はこんな話をしに来たんじゃないんです」


お姉さんが真剣な顔つきでそういうとみんなの顔つきも真剣になる。


「じゃあどんな話を?」

「私、今週限りでここを退職することになりました」


それを聞いた途端、みんなの目ん玉が丸くなる。


「え、何で?」

「その、実は帝国の方の受付嬢に抜擢されまして」


みんなの目ん玉が点になる。


「ええ!?すごいじゃん」

「びっくりだ。そんなことあるんだな」

「受付嬢の抜擢か。帝国に行ったことがあるの?」


カイトが聞く。


「それはあるんですけど……子供の頃ですから」

「じゃあ何でいきなり?」

「帝国のギルドは数字を重視しますからきっと私の担当している案件の売り上げとかクリア率とかの数字を見て決めたんでしょう」

「すごい、ヘッドハンティングじゃん!」


盛り上がりを見せている一方でちょっとカイトは悲しそうだった。


「そうか……もうお姉さんに求愛はできないんだな」

「そもそも興味ないので他をあたってくださ〜い」

「フゥ〜↑、辛辣ゥ〜↑」


カイトがいつもやっているようにおどけて見せる。

周りの笑いを誘うが、お姉さんはスルーして続ける。


「タクト君もそろそろここを出発する頃だと聞きました」


そういうとまたみんな目ん玉が丸くなる。


「タクト、お前もか!?まあお前はSランクだしこんなとこにいても退屈なのはなんとなくわかるが」

「何でいなくなっちまうんだ?」


みんなの視線がタクトに集まる。


「帝国を目指してな。自分の力を試したくなったんだ。それに向こうならSランクの案件もたくさんあるだろうし」

「なるほどな。メディちゃんも行くのか?」

「ああ」

「それは残念だな」


みんな沈んだ空気になり寂しがる。

しかしお姉さんだけは真剣な顔をして僕の方を向いた。


「そこでお願いがあって今日はきました」


お姉さんは少し間を置いてから切り出した。


「私と帝国まで一緒に行っていただけませんか?」

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公、魔術師なのですよね?剣とかで敵を倒してるシーンが殆どで魔術のイメージが全くないのですが、いわゆる魔法剣士みたいな状態なのでしょうか。
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