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奴隷、大手柄

「おはようございます、ご主人様」

「ああ、おはよう」

「朝食はもうできているそうですよ」

「ああ。すぐに食べにいく」

「私はFランクのクエストを遂行してきます」

「そうか、気をつけてな」

「はい、では失礼いたします」



*ーーーー*



今日は初めての自由行動の日です。

なぜ1人で行くことになったかというとギルマスのゴッチョさんに、


『一人で冒険してみて自分の身は自分で守る癖をつけた方がいい』

『かわいい子には旅をさせよっていうだろ?』


と言われてご主人様は妙に納得されてしまったという経緯がありました。

ご主人様がそばにいないのは少し心細いです。


ですがクエスト遂行のためとはいえ自由行動はちょっと伸び伸びしますね〜。


さて、それはさておき受注したクエストをこなさなくてはなりません。

クエストの依頼は『追え!リンゴ泥棒』。

リンゴ農園からリンゴが盗まれているという依頼です。

メダマリスが盗んでるという情報があったそうです。


私はメダマリスについてはしらないので調べてもらい、特徴を挙げてもらいました。

メダマリスはとても可愛い外見を持っているそうで、通常のリスの1.5倍ほど大きいそうです。う〜ん、猫くらいの大きさってことかな?

極め付けはクリンクリンの大目玉。

これが見たくてこのクエスト受けたのですが……倒さなくちゃいけないんですよね。


まずは依頼主のいる場所へ移動しましょうか。

安全ルートは昨日ご主人様と確認済みです。



*ーーーー*



「こんにちは」

「あら、こんにちは。うちの農園に何か用かしら?」

「実は昨日ここのクエスト依頼を受けました」

「あら、じゃあリンゴ泥棒を見つけてくださる冒険者さん?」

「はい、そうです」

「はじめまして、リラよ。よろしくね」

「メディです。よろしくお願いします」

「それにしても受注者がこんなに若い子供だとはねぇ」


農家さんの方とお話をした。メダマリスは非常に賢いようで、出掛けていない時はリンゴは盗まないそうです。

よってリンゴ泥棒は農家さん一家が買い物に出かける夕方頃現れるようです。

私だけが農家さんの家の中から見張り、農家さん一家には買い物に行ってもらうようにしました。


作戦会議が終わった後は農家さんの手伝いをしたりご飯を昼食を一緒に食べたりして時間があっという間に過ぎました。



*ーーーー*



「いってらっしゃいませ!」

「いってきます!」


夕方になり、リンゴ農園一家と別れた。

5人家族で騒がしかった家の中が急にシンとなる。


「メダマリスさんくるかな……」


窓に張り付いてずっと見ていた。すると……


ーーガサガサッ


ん?何か音がしたような気がしました。

あそこに何か茶色い頭が動いています。間違いありません。


メディは気づかれないように外に出て草陰から覗く。するとーー


ーープチッ


あ、リンゴを取った!


メディはそれを見た瞬間、弾かれたように草むらから飛び出し、剣を抜く。

メダマリスはそれに気づいたのか山奥へ走り去ろうとする。


「人が丹精込めて作った果物を盗んで逃げるなんて悪い子ですね。悪い子は……」


メディは剣を振りかぶる。


「待って〜!頼む、殺さないでくれ!」

「しゃ、喋った!?」

「取ったのは今回だけでちょっと果物がなってたから食べてみようと……ほんとだよ!」


必死に弁明するがメディは怪しい目つきで睨んだ。


「今回だけって……クエスト依頼がここにきてるんですけど」

「あっ……そ、それは多分違うやつなんじゃないかと……」

「とりあえず一度リラさん一家に会ってもらいます」

「そ、そんな……」

「以前見たのと同じかどうか、はっきり見定めてもらいましょう」

「とほほ……」



*ーーーー*



「今まで何も言わずに勝手に食べてしまい、申し訳ありませんでした!」


メダマリスは元々丸まってる首をさらに曲げて深々とお辞儀した。


「まったく、捕まらないとでも思ったのかしら?」

「い、いいえ!今度こそ捕まるんじゃないかとビクビクしながらいつも取っていましたが……いつも誘惑に負けてしまいました」

「情状酌量の余地なしね。処刑します」

「そ、そんなぁ……。もし命を助けていただけるならなんでもいたします!」

「へえ……。って言ってるけど、みんなどうする?」


リラが家族に聞く。

すると家族の子供たちが質問する。


「あの、本当に改心する気はあるんですか?」

「は、はい。もちろんございます!」

「え〜、怪しい〜」

「本当です、もう二度としません!」


大きな目玉をうるうるさせている。

思わず感情移入して庇ってしまいそうです。


ずっとリスを責める立場でものを考えていた私がちょっとだけリスの考えに寄り添うとある考えが浮かんだ。


「あ、あの。提案があるのですが」

「何かしら」

「このメダマリスさんを奴隷にしてはどうですか?」


その場でみんな固まる。

予想していない提案だったようだ。


「私も奴隷ですが、奴隷になるとご主人様の強い思いに逆らうことができません」

「なるほど」

「それにきっとメダマリスさんが食べたいのはリンゴの果肉よりリンゴの種ですよね」

「はい、おっしゃる通りです」

「じゃあリンゴを食べる前に種を分けておいてメダマリスさんがそれを食べるようにしたらどうですか?」


家族はう〜ん、と悩んでいる。

まあそんな簡単に許せるものじゃないのかな。

そう思っていた時、農家の子供の一人が言う。


「別にいいんじゃない、一回くらい。でも次はやらないようにしっかり奴隷にしておかないと」


他の人も賛成し出す。


「そうだな。次やらなけりゃ、いいんじゃないか?」

「私もそう思う!」

「ということで、どうですか?リラさん」


私はリラさんに提案する。


「そんな奴隷契約なんてどこでするのよ?」

「奴隷売り場に行けば簡単にできます。1万くらいでやってもらえますよ」

「せ、拙者もそれでお願い申し上げます〜」


もう一度メダマリスは頭を丸める。

観念したのかリラさんも場を収める。


「仕方ないですね。その代わり、奴隷になったら私と一緒にビシバシ働いてもらいますからね。覚悟してなさい」

「ひえええぇぇぇ……お、お手柔らかにお願いいたします」


後日、そのメダマリスはそこのリンゴ農園の従業員になったそうです。


クエスト完了!

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[良い点] 会話と情景描写や思考の比率がいい塩梅で読みやすい。 安定感がある。 [気になる点] この話では特になし [一言] 全体評価として、倍増のベクトルの方向を変える点はなるほどと思いました。元グ…
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