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信じていた幼馴染に無能と罵られSランクパーティを追放される

「ほんっとに使えねえな」

「もう抜けたら?足手纏いでしかないんだけど。てかなんでSランクパーティにFランクがいるわけ?」

「もう荷物運びとしても使えないんだけど。どうしようもないクズとはこのことね」

「おい、お前まだここに残りてえか?なあ。残りてえんならいつも通り土下座しながら懇願しろよ。さっさとしろ!」


ダンジョンを潜り終えた後の反省会。タクトは膝を蹴られ、姿勢が崩れた所に靴底が頭に乗る。土下座の姿勢だ。


「サリー、土下座コールお願いしまーす」

「はーい、じゃあいきますねー。はい、土下座、土下座」

「土下座、土下座」

「土下座しなかったら今週の取り分なしな」


土下座してもどうせ取り分は支払われない。もう3週間ももらってない。みんなこの状況を楽しんでるだけだ。コールは土下座するまでやまない。しなかったらしなかった分だけ殴られたり蹴られたり後でイチャモンつけられたりするだけだ。タクトは観念して土下座した。


「お、お願いします…見捨てないでください…まだ残りたいです」

「おい、最後の一言が抜けてるぞ」


これは言いたくなかった。最後の一言も最近エスカレートしてきて追加されたものだがこれを言うと罰ゲームガチャを引く羽目になる。


「なんでもしますから許してください…」

「ひゃーっひゃっひゃ!みんな聞いたか!?なんでも良いだってよ!じゃあ今日もガチャやりますか。好きなのを選んで良いぞ」


そう言って靴底で頭を踏んづけながら仕切っているのはグラントホルダーのリーダー、ザイツだ。彼は紙の入った巾着袋を渡すのでその中からタクトが選ぶ。


「今日は…サンドバックでーす!さあ皆さん、コイツをボコボコにしましょうー。これはなんでもすると言って彼が勝手に袋の中から選んだのだから遠慮は入りませんよー!」

「いえーい、じゃあ私から行きまーす!まずは一発顔面に、」


ーーガツッ

サリーに殴られる。サリーはザイツの恋人で女戦士レベル90だ。力はザイツの次に強く、本気じゃなくてもFランクのタクトは殴られると相当痛い。ちなみにタクトはレベル6だ。SSSランクスキルに経験値を吸収されてちっとも強くならない。


「ハハハ、女戦士の力を思い知ったか〜?これくらいは強くならないとSランクパーティには入れないんだ、ぞっ!」


ーーバキッ

ザイツにも殴られる。ザイツはバトルマスターのレベル150だ。このパーティの中でも頭ひとつ抜けているため、誰も逆らえない。固有スキル『獲得経験値3倍増』持ちで文句なしのSランクだ。下手にかっこいいスキルを持ってるやつなんかよりは圧倒的に強かった。


「じゃああたしも。いつも庇ってダメージ受けるのあたしなんだけど。この足でまとい、さん!」

ーードスッ


「いちいちダメージ受けるから回復魔法かけんのクソ面倒なんだよ、お荷物野郎!」

ーードボッ


「うおえええぇぇぇぇ〜」


みぞおちに蹴りが入ったため思わず吐いてしまった。


「うわっ、きったね」

「お前ちゃんと掃除しとけよ」

「おい、お前舐めて掃除しろ。全部食えよ、ホラ!」


俺の顔が靴に誘導されてゲロの履いた場所まで持っていかれる。


「さあ舐めろ!」


そう言われ、顔をゲロの中に埋められる。タクトは息ができないので必死に抵抗して顔を上げる。


「うわ〜、顔一面に汚物がついてんだけど」

「もう化物じゃん」


言われ慣れたセリフと茶番だ。最近は毎日こんな調子。辛くないのかって?もう慣れたよ。


「ねえ、さっきから黙ってるけどリーシャはどう思ってるわけ?」


リーシャ、タクトの幼馴染でタクトをパーティに誘った張本人。ヒーラーでレベルは75。この中ではAランクで最弱で立場も弱かった。タクトのことをどう思っているかは分からないが、いつもならリーシャはいじめには加担せずに見ているかその場からそっと消えるだけだった。今回も見ているだけで何もしない。


「いつまでそこで立ってるのでくの坊さん。そうよね、あなたには何もできない。だってタクトが入る前には彼と同じことをあなたがされていたんだものね!」

「やられていたことはやりにくいわよね。クスクス」


タクトはそれを聞いた時、はっとなった。自分がいくらSSSランクの固有スキルを2つ持っているからといってもいきなりSランクパーティを勧めるだろうか?自分がいじめのターゲットから抜けるために僕をパーティに招き入れたのかも知れないという疑念を抱かざるを得なかった。


「リーシャ、まさか君は…」


ーーバキッ

唐突に殴られる。


「うるさい、クズ野郎!使えねえ奴の味方する身にもなってよ、この化物がぁっ!キメーんだよ!もうこのパーティ抜けろ!二度と戻ってくんな!」


リーシャのこんな剣幕は見たことがなかった。いつも優しくて心配してくれる存在だったのに。もしかしてそれもこのパーティから抜けさせないためにしていたことだったのか?愉快そうにザイツは話す。


「だってよ!サリー、抜けろコールお願いしまーす」

「はーい、じゃあ皆さん『抜けろ』でお願いしまーす。せーの、はい抜けろ、抜けろ」

「抜けろ、抜けろ」

「抜けろ、抜けろ」


今度はリーシャもコールを一緒にしている。ああ、君もそういう人だったんだね。みんなが僕を嫌っても君だけはずっと味方でいてくれると思ってたのに。


「じゃあ抜けます」


そう言った途端、みんなが固まった。こんなことされてまでここにいる理由なんてないし、今までここにずっとい続けたことの方が異常だと思った。くそっ、このいじめられていた期間はなんだったんだ。こんなことならさっさと抜けていればよかった。

少し間が空いてみんな我に返ったのか口が動き出した。


「出てけ出てけ〜、SランクパーティにFランクは要りません〜」

「足手纏いがいなくなってスッキリしたわ〜。二度と戻ってくんなよ」

「ホント、メリット一つもないやつがこないでほしいわ〜」

「お前なんかどこ行っても活躍できねーよ」

「もうあなたの顔も見たくありません。さようなら」


そんな心ない言葉を後ろにタクトは自分のための一歩を踏み出した。タクトも給料の支払われないお荷物役は二度と御免だと思った。こうしてパーティとの縁を切った。

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