俺には正義のミニスカヒロインに変身する超絶美少女の幼馴染がいる
「ええっ! 麻衣がジャスティガールだって! それマジ!?」
篠崎高史、通称タカシは飛び上がって大声を上げた。タカシは私立政倫高校に通う2年生である。
「そう、本当よ。ジャスティガールの正体はわたしなの」
応じたのは、同じ高校で同級生の超絶美少女・花園麻衣である。麻衣は美貌のみならず、モデルのような体型、成績も学年トップクラス、運動も優れ、2年生ながら女子体操部のエース格をつとめるなど、あらゆる面で秀でた、全校でも皆の憧れの的になっているアイドルなのだった。
それに対してタカシの方は、何の変哲もない平々凡々な、一高校生に過ぎなかった。この2人が、どうして仲がよいかというと、彼らが幼馴染だからであった。
幼いころは、犬に噛まれそうになった麻衣を、タカシが身を呈して助けてやったりもした。長じては、小中高と同じ学校に進んだが、二人の間の格差はどんどん広がっていった。麻衣は高校のスーパースターとなり、タカシは一凡人のままだった。
2人はいつも一緒にいるにも関わらず、恋愛関係に進展することはなく、いわゆる、友達以上恋人未満の関係に終始してきたのである。
ジャスティガールというのは、最近、この界隈で話題になっている、正義の変身ヒロインであった。
この時代、奇っ怪な能力を持つ悪の怪人や戦闘員たちが出現して、人々の生活と安全を脅かしていた。そして、それらの悪人どもを退治する正義のヒーローやヒロインも現れ、人知れず暗闘が行われていたのだ。
ジャスティガールは、このところ評判になっていた新手の変身ヒロインだった。女でありながら、大変な運動能力を誇り、格闘術に長け、悪人どもをバッタバッタとなぎ倒していった。
顔に仮面をつけたセクシーなミニスカートのコスチュームとともに、人々に非常に強い印象を残していたのだ。
ジャスティガールの正体については、いろいろな噂が流れていたが、誰も確かなことは知らなかった。ある日、タカシと麻衣が並んで帰宅の途についていた時に、麻衣がこの大秘密をコッソリ打ち明けたのだ。自分がジャスティガールに変身しているのだと。何かの間違いかとタカシは驚いて聞き直したが、麻衣の答えは同じだった。
「どう、すごいでしょ?」
学校でナンバーワンの人気者の上に、正義の変身ヒロインとして人々を守っているのだ。麻衣は、タカシから賞賛の言葉を期待しているような口ぶりだったが、タカシは
「いやあ、麻衣は相変わらずスゴいけど、これは止めといたほうがいいなあ」
「ええっ、どうして?」
幼馴染からの、意外なネガティブな反応に、負けん気の強い美少女は少しばかりムキになった。
「いや、いや、いや、正義の味方って大変だろ。敵のワナに嵌められて捕まって磔にされたり、拷問されたり、ヒロインだったら、あの、そのう、なんつーか、いろいろとエロいことされちゃたりとかさ。最後は堕ちちゃったりね。麻衣にそんな危ない目に遭って欲しくないよ」
「まあタカシ、それってエロ漫画の読み過ぎだわ。どうせ、わたしがエッチなことをされるのを想像してるんでしょ。でもおあいにくさま、正義のヒロインは、どんなに苦しんでも最後には勝つと決まってるの」
「でも心配してくれてありがと、優しいのね」
「もし、麻衣に何かあったら……」
「えっ?」
だが、その時だった。2人の前に子供達を追い立てる数人の戦闘員と怪人の姿が映ったのだ。
「わっ! 怪人だ。こんなところに現れるなんて!」
タカシは慌てたが、麻衣はもう戦闘モードに入っていた。
「さっそく、わたしの出番だわ。タカシは危ないから、どこかに隠れてて」
麻衣は、そう言うと。両腕を胸の前でクロスさせた。変身ポーズだ。
「変身! ジャスティガール!」
美少女が叫ぶと、彼女の全身が渦のような光に包まれた。そしてその中から現れたのが、正義のヒロイン・ジャスティガールの勇姿だった。仮面をつけたヒロインは悪人どもの前に飛び出していった。
「正義の女神ジャスティガール参上! 悪人どもはまとめてぶっ飛ばしてやる!」
決め台詞をキメて、やったとばかりにジャスティガールは早くもドヤ顔だった。
「何者だ! 邪魔する気か!」
悪人の中でもボス格の怪人が前に出てきて、突然姿を現して自分たちを邪魔する仮面のミニスカヒロインに向かって叫んだ。
「悪人ども! 素直に引き下がればよし、さもなくば、痛い目にあうわよ!」
強気の変身ヒロインは、まったく退かず言い返した。だが、奸智に長けた怪人は、ジャスティガールを動揺させようと挑発してきた。
「グフフ、そんな短かいスカートで戦おうなんて随分大胆じゃないか。パンツが見えそうだな」
「まあ、いやらしい怪人ね。見られてもいいパンツだからいいのよ」
お決まりの舌戦が終わると、怪人は手下の戦闘員たちに、やれっ! と号令をかけ戦闘開始となった。
もともとスポーツ万能の花園麻衣が変身したジャスティガールは、変身すると運動能力が常人の何倍かになるのか、超人的な動きを見せる。華麗な動きでハイキックを連発、更にパンチ、チョップも強力で、下級戦闘員たちはたちまちKOされていった。
「うわあ、麻衣がこんなに強いなんて!」
物陰に潜んでいるタカシが思わず唸った。 ジャスティガールはあっという間に、5人いた戦闘員どもをすべてなぎ倒してしまった。後はラスボスの怪人だけである。ヒロインと怪人は対峙した。
「なかなかやるじゃないかミニスカヒロイン。だが、オレはそうはいかんぞ。オレの名はダークマッドドッグだ」
一人残った怪人は、犬のような容貌をしていた。
「犬の怪人か。チッ、犬は少し苦手なのよね」
ジャスティガールは小さな声でつぶやいた。
「ここは早期決着に限るわ! ジャスティキック!」
華麗に空中を飛んだジャスティガールは、ダークマッドドックの顔面に向けてジャンピングキックを放った。これで決まりのはずだ、だが――
「きゃあっ!」
吹っ飛ばされたのは、正義のヒロインの方だった。怪人の強靭な肉体の壁に、得意のキックは通用せず、逆に弾き返されてしまったのだ。倒れこんだジャスティガールのスカートがまくれ上がる。
「グフフ、正義のヒロインの純白パンティ確認!」
「いやあん! 見ないで!」
ヒロインは、慌ててパンチラを隠したが、得意技が通じなかったことはショックだった。
「ああ、わたしのキックが通用しないなんて!」
叩き付けられてよろよろと立ち上がったヒロインに、向かってきた怪人が彼女のボディに強烈なパンチを入れた。
「ううっ!」
呻いたジャスティガールは崩れるように倒れ、そこに怪人がキックの雨を浴びせる。ヒロインはグロッキーとなった。大ピンチに陥ったのだ。ミニスカがまくれ上がりパンツ丸見えになったジャスティガールの股間にスケベな視線が浴びせられた。
「グハハ、パンティが丸見えだぜ、ヒロイン」
「ああっ、く、悔しい!」
ジャスティガールはマスクの下の美貌を歪めて、恥じらい悔しがったが、追い込まれて窮地のヒロインに、怪人は追い打ちをかける。
「ガハハ、どうしたミニスカヒロイン。パンチラだけじゃつまらん、これからオールヌードになってもらうぜ」
「いやああん、やめてっ!」
好色な笑いを浮かべた怪人はジャスティガールのコスチュームを破り捨てるために、手をかけようとした。
「グフフ、いただきます」
「ああ……」
正義のヒロインの絶体絶命の瞬間だった。
「やめろ、怪人!」
怪人の背後から、男の声がした。それはタカシだった。タカシは消火器を手にしている。怪人が後ろを振り返ると、プシュッと消火剤が噴出された。
「グアアッ!」
噴射された噴霧に包まれた怪人が苦しみだす。消火剤に、ダークマッドドックの弱点であるハロンが含まれていたのは、ただの偶然だった。
「お、おれの弱点をなぜ?」
危ういところで、解放されたジャスティガールも態勢を立て直した。ここは大きなチャンスである。必殺技を使うところだ。
「ジャスティショット!」
ギャアッ! ヒロインの右手から放たれた光の矢が怪人に命中して怪人は悲鳴を上げて消滅した。ジャスティガールの逆転勝利だった。
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ジャスティガールが変身を解除して元の姿に戻った花園麻衣とタカシは、今の激闘を振り勝っていた。
「危なかったな、ジャスティガール」
「もう、あそこからがわたしの見せ場だったのに。あんな大ピンチから逆転するのが正義のヒロインよ」
大苦戦して素人のタカシに救われながら、いつもの負けん気の強さを崩さない麻衣に、タカシは苦笑した。だが、すぐに
「でもね、ありがとうタカシ。あなたのおかげで助かったわ」
いきなり、麻衣が甘えたような口調で素直にタカシに感謝を述べたのだ。美少女のこの突然のツンデレ発揮で、2人の間が急にいい雰囲気になった。更に麻衣は、口調を変えて真剣モードになる。
「今から大切なこと言うから、心して聞いてね」
麻衣は一呼吸置いて、ゆっくりと語りだした。
「わたし花園麻衣は、篠崎高史を愛してます。わたしと正式につきあってください」
学校の美少女アイドルからタカシに、ビックリ仰天のサプライズ告白だった。しかし、それを聞いたタカシは
「うーん、それは困るなあ」
だれもがうらやむであろう超絶美少女からの告白に対して、まさかの拒否だった。麻衣は動揺した。
「ええっ、どうしてなの? 学園アイドル扱いされてるわたしが告白してるのに」
「だって、オレと麻衣じゃ全然つり合いが取れないよ。麻衣は学校のスーパースターだけど、オレは何の取り柄もない」
麻衣は少し涙目になっていた。
「そんなあ。わたしが外見を磨いてきたり、勉強やスポーツを頑張ってきたのは、みんなみんな、タカシに気に入ってもらう為だったんだよ。正義のヒロインになったのもね。吊り合いなんて関係ないのに。
昔、犬に襲われて怖かった時わたしのこと守ってくれたよね。今日だって、わたしが大ピンチの時に助けてくれたじゃない。とっても嬉しかった。
好きなのタカシの事が。好きで、好きでたまらないの。気付いてくれるのずーっと待ってたのに。気付いてくれないから、今日、勇気をふるって告白したのに……」
麻衣の独白をじっと聞いていたタカシだったが、彼女の手を取って言った。
「よし、オレ頑張るから。成長していつか麻衣に似合う男になってやる。そしたら、オレの方から麻衣を迎えに行くから」
タカシの言葉を聞いた麻衣は、しばらく立ち尽くしていたが、絞り出すように応えた。
「わかった、待ってるわ。タカシがわたしの愛を受け入れてくれるまで、1年でも10年でも、100年でも待ってるから」
ようやく美少女に笑顔が戻り、2人は大いに笑った。
「そうだわ、これをタカシにあげる」
麻衣は、タカシに銀色のブレスレットを渡した。
「へえ、なんだい?」
「このブレスレットには不思議な力がこめられてるの。これをね、こうやって腕にはめるとね……」
この日以降、この界隈に新しい男性の正義のヒーローが登場した。名前をジャスティボーイと名乗っている。ジャスティボーイとジャスティガールの若い2人は協力して悪と戦っている。
どちらかといえば女のジャスティガールの方がリードしているが、見事な連携プレイで、どんな強敵にも負けないのだ。あまりの息のピッタリぶりに、ちまたの人々の間では、この2人は恋人同士ではないかと噂されている。
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