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第7話

 そんな話を聞いていると「じゃあ冒険者学校だけでいいんじゃないか?」という疑問が出そうなものだが、魔術師学校と騎士学校にはそれぞれの学校が研究してきた資料や、長年経験を積み重ねてきた教授が在籍しており、冒険者学校では教わることのできない歴史を重ねた重要な教育もあるという話だ。

 つまるところ良し悪しはどちらにもあるということである。


 俺は冒険者になって世界を旅して回るという目的があるし、今のところは冒険者になりたいと思っている。それに、最悪後から気が変わっても潰しがきかないこともない。


「冒険者学校でお願いします。やはり冒険者にしかできない、入れないといった限定的な物や場所もありますし。世界を旅するなら冒険者でないと」


「確かにそうね。前々から冒険者学校に入るって言っていたし、入学手続きは済ませてあるわ。入学式は再来月だからそれまでに準備しておきなさい。そんなに遠くに行くわけじゃないけれど、ちゃんと忘れ物のないようにね」


 所詮は馬車で3,4時間程度だ。が、だからと言って家に宿題忘れたから取ってくる!なんて言える距離でもない。準備はしっかりしておこう。母上に了承した旨を伝えて食事を済ませて部屋に戻る。


 冒険者学校か・・・。いい加減同年代の友達が欲しいと思っていたところだ。流石のぼっちレントと言えども学校に通ってまで友達一人できないなんていう失態は起こすまい。・・・大丈夫だよな?

 若干の不安を胸に抱きつつもゆっくりと眠りに落ちていくのだった。




 ――――――翌月――――――




 冒険者学校の入学式まであと1ヶ月を切った頃。


「レントくーん!行くよー!」


「はーい!すぐ行きますよメルカさん!」


 部分強化の研究をしている教授を紹介してもらえるという話をすっかり忘れていた俺は、毎日相変わらず魔術の訓練をしていたところに、ペント兄さんとメルカさんがやってきて「明日なら教授が空いてるみたいだから行こっか!」というメルカさんの満開の笑みを見ながら、なんのこっちゃ?となっていた。そこにペント兄さんのゲンコツが飛んできてやっとのことで思い出し、翌日の朝の今に至るという感じである。


「土産は持ってきたか?学者にヘソを曲げられると厄介だ」


 自分も学者であり、そのあたりの機微に聡いペント兄さんがお土産の心配をしてくれる。


「大丈夫ですよ。ちゃんと今朝一番にララシス商会の前に並んで買ってきましたから」


 というのも、今回のお土産はアルート王国で有名な製菓商会の、ララシス商会で予約して買ってきたシュークリームである。研究者というのは総じて甘いものが好きであるはずだというペント兄さんの持論から決定したお土産だ。まあ、研究者が頭を使うというのは間違いないし、頭を使うと体が糖分を欲するというのも聞いたことがある。後は好みの問題なのでわからないが、余程のシュークリーム嫌いでない限りは貰ってくれるだろう。


「いいなー、私もララシスシュークリーム食べたい・・・」


「帰りに買って帰ればいいだろ」


「売ってるわけないじゃない!ララシスシュークリームといえば開店3時間前から並んでおかないと買えないって有名なのに!」


 その通りなのだ。ララシス商会のシュークリームはかなりの人気があって、貴族であっても予約しなければ開店前3時間待ちというシロモノである。平民の予約受付もしていなくはないものの、数が多すぎてどちらにせよ1時間は待たなければいけない始末、という流れになっている。


「あ、余分に一箱買ってメルカさんにも用意してますよ。紹介してもらったのに何も無しは流石に失礼だと思って」


「ホントに!?やった!さっすがレント君。わかってるねー!」


 子どものようにはしゃいで喜ぶメルカさんを見て苦笑いしながらシュークリームの箱を一箱渡す。


「教授の家まで結構時間かかるし、馬車の中で食べちゃおっか!」


 確かに王都の教授の家まで結構な距離があるし、帰るまで持っていたらせっかく出来立てのものを買ったのにもったいないだろう。教授というからには話し出したら長そうだし。帰るのが夕方になる、ということもなくはないかもしれない。


「ほら、ペント君あ~ん」


 無表情で本を読んでいるペント兄さんの口に少々強引にシュークリームの持っていくメルカさん。そして特に気にせずそれに食いつくペント兄さん。見ている俺は若干気恥ずかしさがあるが、二人は特に気にしていないらしい。ペント兄さんはなんでメルカさんと付き合っているんだろうか。性格も正反対だし、趣味が合うという感じでもなさそうだ。俺の知っている限りでは幼馴染だとかそういう話も聞いたことがない。そのうち馴れ初めでも聞いてみたいものだと思いながら外を眺めていた。


 そうしてシュークリームを食べながら談笑しているうちに、馬車が停車してから荷車に御者のおじさんが「着きましたよ」と顔を覗かせてきた。王都行きは馬車にとっても利益が出しやすい、ということで通常よりも若干安い運賃で済ませてもらい、教授の家と思われる家の前に3人で降り立った。

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